(社福)東京都社会福祉協議会
新たな中期計画で東京の多様性を活かした〝地域共生社会づくり〟
掲載日:2019年4月9日
2019年4月号 NOW

 

あらまし

  • 東社協では、このたび、平成31年度(2019年度)から令和3年度(2021年度)までの3か年における『東社協中期計画』を策定しました。新たな計画は、「協働を進め、地域の課題解決力を高める」を共通目標とした『平成28~30年度東社協中期計画』の成果をふまえ、その協働をさらに発展させるとともに、東京の多様性を活かしながら、〝地域共生社会づくり〟を推進します。

 

「東京の多様性」を活かす―めざすべき地域社会と共通目標

平成31年度(2019年度)からの3か年の中期計画(以下、「計画」)では、全事業の取組みを通じて「めざすべき地域社会」の実現をめざします。その地域社会の姿とは、「それぞれの地域生活課題を主体的に解決できる地域社会」です。それに合わせて計画の「共通目標」には、「東京の多様性を活かした『地域共生社会づくり』の推進」を掲げました。計画の策定をすすめた東社協総合企画委員会では、「『東京の多様性』とは何だろうか?」という問いかけがありました。そこで、委員からの意見をふまえて整理したのは、次の3つの多様性です。

 

一つは、「多様な地域」があるということ。東京には62の区市町村があり、各地域にそれぞれ特性があります。「その地域ならではの力」である社会資源も育っています。そうした地域なりの力を活かしていくことが必要です。

 

二つめは、「多様な価値観」です。さまざまな人が暮らす東京。その多様な暮らしや価値観を認め合えることが大切です。そして、そのことは、人と人が「気づき、育ち合える」ことにもつながっていきます。

 

三つめは、「多様な主体」です。地域には社会福祉法人や企業、NPOや民生児童委員、そして、地域住民といったさまざまな主体がいます。受け手や支え手といった枠組みも越えて、専門機関から地域住民までが主体的に協働して福祉基盤をつくりあげることが望まれます。

 

福祉人材対策と福祉の魅力の可視化―重点目標(2)と重点目標(6)

こうした「共通目標」のもとに、計画では6つの「重点目標」を設定しました(図1参照)。その中の一つは「福祉人材の確保、育成、定着の推進」です。これは、現行の中期計画から引き続く重点目標です。

 

新たな計画の策定にあたって、施設部会連絡会では、「福祉人材の確保は依然として極めて厳しい」という指摘がありました。一方、福祉人材対策の施策は、多面的なアプローチが整理されてきています。それらは「多様な人材の参入の促進」「福祉の仕事に対するイメージの改善」「職場環境の改善や生産性の向上」「職員確保等に資する介護報酬等の設定」「キャリアパス構築への支援」「区市町村の特性をふまえた人材対策」といったアプローチです。そうした方向性もふまえつつ、計画では、福祉業界として今後も「質」と「量」の双方を重視しながら、多様な人材が福祉職場で活躍し、その成長を実感できることをめざします。その多様な人材となる「新たな層」には、次世代、未経験者、外国人介護労働者などが想定されます。

 

また、前述の総合企画委員会では「やはり福祉の魅力を地道に伝えていく取組みが大切だ」という意見もいただきました。さらに、施設部会連絡会では、「計画期間中には、東京パラリンピックがある。それを障害に対する理解を広げる契機とすべきだ」という指摘がありました。障害のある人一人ひとりが輝く姿が福祉への関心につながることが望まれます。重点目標の一つには「福祉の魅力の可視化」を位置づけました。その際に重視したのは、それを身近な地域で具体的なイメージを持つことができるよう発信すること。地域で福祉施設自身が、その実践を魅力として可視化し、発信していくことを広域から支えていくことが必要です。

 

地域公益活動の推進と地域づくり―重点目標(3)と重点目標(4)

現行の中期計画では、「区市町村圏域における社会福祉法人のネットワーク化」をすすめてきました。平成31年2月現在で51の地域でネットワーク化がすすみ、かつ、それぞれの地域でニーズに応える取組みもはじまりました。

 

さらに、合わせて「地域づくりをすすめるコーディネーター(地域福祉コーディネーター、CSW、生活支援コーディネーター等)の育成」を推進してきました。配置する区市町村社協は44社協となっています。

 

このように育ってきた力を地域づくりに活かすべく、計画では「社会福祉法人の地域公益活動の推進」と「地域づくりと幅広い参加・協働の推進」の2つを重点目標に位置づけました。

 

権利擁護と自立支援、災害に強い福祉―重点目標(1)と重点目標(5)

めざすべき地域社会の具体的な姿の一つに「誰もがライフステージに見通しを持って暮らせる地域社会」があります。福祉業界にとって、「安全・安心」はやはり大切なテーマです。

 

計画では「権利擁護と自立生活支援の推進」を重点目標の一つに位置づけました。近年の動向には「意思決定支援」が重視されてきていることがあります。厚生労働省は、29年3月に「障害福祉サービスの利用にあたっての意思決定支援ガイドライン」、30年6月には「認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン」をそれぞれ公表しました。

 

また、東京都では「東京都障害者差別解消条例」が30年10月に施行されるとともに、「東京都子供への虐待防止条例」が制定されました。国でも「児童虐待防止法」の改正がすすめられています。そして、「都道府県社会的養育推進計画」が31年度(2019年度)末までに策定することが求められています。これらの流れでは、個別支援と地域づくりが視点を一にして取組むことが必要となっています。

 

そして、「安全・安心」のもう一つの視点は「災害対応」です。30年度に東社協が会員施設・事業所を対象に実施したアンケート調査では、東京における災害時の福祉サービスの供給体制の課題や高齢者、障害者、子どもたちに特有なリスクも明らかになりました。東京の特性をふまえた「災害に強い福祉」の推進が求められます。

 

さらに、総合企画委員会では、災害ボランティアを含め、東京はこれまでに他県の災害に対する支援の経験は重ねてきたものの、東京で災害が起こったときの具体的な取組みや他県からの支援を受けること(=受援)により一層備えていく必要性も指摘されました。

 

事業間で相互に取組みを可視化―全事業の中期目標と協働推進事業

これらの「重点目標」をふまえ、「全部室・全事業」に中期目標と3年間の展開方策を設定しました。総合企画委員会では、「中期計画を通じて事業全体を『見える化』していくことは、ガバナンスの強化につながる」という示唆がありました。合わせて、計画の推進にあたって「事業間や東社協を構成するネットワーク間がお互いの取組みを見えるようにし、一層の協働をすすめる必要がある」と指摘されました。

 

また、計画では、6つの重点目標と全事業をつなぐため、計画初年度のものとして9つの「協働推進事業」を位置づけました(図2参照)。これらはいずれも重点目標の実現に向けて複数の事業間の協働を必要とするものです。

 

こうした事業の目標とともに、東社協法人基盤の強化についても、内部管理体制の構築、職員育成やマネジメント力の向上、ネットワークの充実などをすすめていく予定です。

 

そして、これからの社会に対して「東社協らしい役割」を果たしていくために、中期計画を通じて東社協の持つ幅広いネットワークを活かした取組みがすすみ、地域の力を高めることにつながることが期待されます。

 

 

図1 共通目標と6つの重点目標

 

 

図2 重点目標と全事業をつなぐ「協働推進事業」

取材先
名称
(社福)東京都社会福祉協議会
概要
(社福)東京都社会福祉協議会
https://www.tcsw.tvac.or.jp/
タグ
関連特設ページ