左から 清瀬市社協地域福祉係長 富田千秋さん
きよせの社福代表・清瀬わかば会理事長 緒志嘉彦さん
清瀬市社協事務局長 増田健さん
清瀬市社協事務局次長 星野孝彦さん
平成28年9月に設立した東京都地域公益活動推進協議会は、(1)各法人、(2)地域(区市町村域)の連携、(3)広域(東京都全域)の連携の三層の取組みにより、社会福祉法人の「地域における公益的な取組み(以下、地域公益活動)」を推進しています。東京都地域公益活動推進協議会では、地域ネットワークの立ち上げのための事務費や、複数法人の連携事業開始時期の事業費の助成を行うとともに、地域ネットワーク関係者連絡会等を開催し、他の地域と情報交換できる機会をつくっています。
あらまし
- 清瀬市では平成29年10月に「清瀬市社会福祉法人社会貢献事業協議会」を設立しました。全事業所の連携による相談事業「ひとまず相談」を中心的な取組みとしながら、シンボルマークの作成や「きよせの社福 4つの役割」の明文化など広報・情報発信に力を入れてきました。法人が連携して地域のニーズに即した取組みを生み出していけるよう、職員間の交流をすすめています。
<清瀬市の概況> (平成31年3月1日現在)
人口
(住民登録) |
74,695人 |
(男性) | 36,069人 |
(女性) | 38,626人 |
世帯 | 35,466世帯 |
高齢化率 | 28.0% |
社会福祉法人数 | 22法人(34事業所) |
地域づくりをすすめるコーディネーター | 生活支援コーディネーター
第1層1人(社協)、第2層3人(各地域包括) |
単位民協の数 | 2地区
民生委員定数:51人(内、主任児童委員5人) |
2年の準備期間を経て法人ネットワークを発足
清瀬市の社会福祉法人ネットワーク発足に向けた検討は、平成27年9月に始まりました。
同市では東日本大震災の後、清瀬市社協の呼びかけで福祉施設・事業所による災害をテーマにした情報交換会を開催したことはありましたが、それ以外では法人や事業所が分野を超えて集まる場はありませんでした。常設の協議会を立上げるにあたっては、清瀬市社協が事務局となり市内の事業所に参加の呼びかけを行い、幹事会と部会を設置して準備をすすめることとしました。検討段階では、社会福祉法人が連携して取組むことの意義や協議会としてめざすものを共有することを心がけました。
28年12月からは、「社会福祉法人ならではの取組みを考える」「全事業所が関わることができるテーマを盛り込む」「部会同士が連携しながら取組む」といった複数の視点から設置した4つの部会で、具体的な取組み内容の検討を開始。全事業所が連携して実施する相談事業「ひとまず相談」の準備や、事業所が提供できる場所や備品、福祉教育の講座等をまとめた資源帳の作成、取組みをPRするシンボルマークやリーフレットの作成等をすすめました。同時に組織体制の整備や役員選出を行い、29年10月16日に清瀬市社会福祉法人社会貢献事業協議会(きよせの社福)を設立しました。
シンボルマークの作成等で広報・情報発信力を強化
きよせの社福では広報・情報発信に力を入れています。事務局である清瀬市社協のウェブサイト内に専用ページを作り、ネットワークによる取組み紹介をはじめ、各法人・事業所が実施する地域交流や社会貢献活動等を「きよせの社福ニュース」として掲載しています。また、小地域で行われている会議や民生委員児童委員協議会などに出向き、リーフレットの配布や事業説明を行ったほか、市内すべての小中学校へ近隣の社会福祉法人の担当者と一緒に訪問し、関係づくりをすすめてきました。
清瀬市社協地域福祉係長の富田千秋さんは「各法人ではこれまでも福祉教育をはじめいろいろな取組みを行ってきたが、地域のみなさんは社会福祉法人の存在すら知らないことも多い。広報と情報発信をより積極的に行っていく必要がある」と話します。
広報・情報発信の強化に一役買っているのが、市民からの公募によって選定されたオリジナルのシンボルマークです。シンボルマークは準備段階の広報・情報発信部会メンバーの発案により作成されました。清瀬市社協事務局次長の星野孝彦さんは「『社会福祉法人を地域の人に知ってもらいたい、もっと身近に感じてほしい』という施設職員の思いがあった。ゆくゆくは市内の施設職員が名刺に刷り込んでくれたらいいねと話していた」と経緯をふり返ります。
シンボルマークの応募資格は市内在住・在学の小学生から大学生までとし、社協だよりや市報への掲載のほか、学校等を通じて募集チラシを配布しました。応募期間約1か月の間に55点の応募があり、部会で候補作を絞り込んだ後に全体会の投票で優秀作品3点を決定しました。最優秀賞は、清瀬の名物であるひまわりをモチーフにした小学生の作品が選ばれました。このシンボルマークはウェブサイトやリーフレット、資源帳などすべての媒体に掲載し、ひと目できよせの社福であることがわかるよう定着を図っています。
また、きよせの社福では地域に対してできることを、「1 相談支援~思いを受けとめる」「2 様々な場づくり~地域の力を応援」「3 福祉教育・人材育成~わかりあえる人づくり」「4 広報・情報発信~あんしんの力に」の4つの役割としてまとめています。取組みをわかりやすく伝える工夫として、この「きよせの社福 4つの役割」もシンボルマークと同じように主要な媒体に掲載しています。
事例検討でお互いの強みを知る
研修会の様子
31年3月、きよせの社福として初めての研修会が会員施設のベトレヘム学園で開催され、13施設から20人が参加しました。研修は、きよせの社福による取組みへの理解を深めるとともに、法人間の連携が促進されるよう会員事業所職員間の交流を図ることをねらいとして、部会により企画されました。
日本社会事業大学准教授の菱沼幹男さんの講義の後、施設種別を混ぜたグループで複合的な課題を抱える世帯の事例検討を行いました。現場職員の視点から、自分の施設でできること、あるいはネットワークとしてできることについて、活発な意見交換が行われました。検討のポイントなどを講評した菱沼さんは「事例の世帯を支えるうえで、もしサロンが必要であれば新たに作ったり、施設のスペースを提供したりすることも考えられる。具体的なニーズから資源を生み出す過程で、地域との関係性を作っていくことができる」と施設と地域の関わり方について助言しました。
保育園から参加した職員は「地域包括支援センターの動き方などまったく知らなかった。事例検討を通して普段関わることが少ない他分野の職員の意見を聞くことができて新鮮だった」と話し、刺激を受けた様子でした。
職員レベルでの交流をすすめて連携した取組みの活性化を
顔の見える関係のなかで、他分野の法人の強みや具体的な支援、アプローチ方法などの理解を深めていくことは、事業所間の連携促進にプラスに働きそうです。
きよせの社福の中心的な取組みである「ひとまず相談」は、市民からの困りごとを身近な施設で受け止め、事業所が連携して支援をする相談事業です。利用実績はまだ多くはありませんが、清瀬市社協事務局長の増田健さんは「各事業所では利用者からの相談をたくさん受けている。専門相談以外の相談も安心して受けられるように広がっていってほしい」と話します。
社協の星野さんは「法人が連携して相談支援したケースも出てきている。交流を通して法人間の理解をさらにすすめ、つながりのある2~3の法人が連携してニーズに応じた取組みを生み出すような動きが広がっていってほしい」と展望を語ります。
きよせの社福の代表で障害福祉サービス事業所を運営する(福)清瀬わかば会理事長の緒志嘉彦さんは「協議会を立ち上げたことで、違う分野の法人が同じテーブルに着くことができるようになった」とプラットフォームができたことを評価しています。会議等で他の事業所を訪れる機会も増え、「施設を見学させてもらいながら現状や課題を伺うことができ、視野が広がった」と話します。そして、「各事業所とも人員に余裕があるわけではないが、法人の理解を得ながら、現場職員にもぜひ積極的にネットワークに参加してもらいたい。それが法人の活性化にもつながる」と期待しています。
http://www.kiyose-f.net/