区民成年後見人(市民後見人)齋藤俊夫さん
“市民目線”を大切に支援する
掲載日:2019年7月4日
2019年6月号 くらし今ひと

齋藤俊夫さん

世田谷区社協キャラクター「ココロン」と

 

あらまし

  • 認知症や障害等により、自分一人では契約や財産の管理等をすることの難しい方が、自分らしく安心して暮らせるよう支援する「区民成年後見人(市民後見人)」の齋藤俊夫さんにお話を伺いました。

 

社会のために活動したかった

九年前、図書館で一枚のポスターが目に留まりました。それは、世田谷区の「区民成年後見人養成研修受講生募集」の案内でした。仕事をリタイアした後は社会のために活動したいと考えていたため「これだ」と感じました。早速応募したところ選考に通り、半年間の研修を修了しました。

 

研修修了から二年後に、90代の女性の成年後見人として家庭裁判所から初めて選任され、その方を含め今までに五人の方の成年後見人となりました。そのうち三人の方がお亡くなりになったので、現在は二人の方を支援しています。

 

支援の内容は、ご本人の生活や意思を尊重し、医療や福祉サービスの利用契約を結ぶことや、預貯金の出し入れ、不動産等の財産を適正に管理していくことなど多岐に渡り、どれもが非常に責任ある仕事です。また、世田谷区社会福祉協議会が区民成年後見人の監督人として選任され、支援の報告や相談をすることができるため安心して活動することができています。

 

成年後見人は、親族の他、弁護士や司法書士等の専門職、区民成年後見人等の中から、ご本人の支援に適した方を家庭裁判所が選任します。区民成年後見人が選任されるケースは、親族がいない、またはいても疎遠である場合がほとんどです。区民成年後見人の特徴は、親族と専門職の中間の存在であると考えます。『市民目線』で支援できるのは区民成年後見人ならではではないかと感じています。

 

ご本人の意思を尊重した支援

現在支援している方は、二人とも施設に入所中です。月に一回は必ずそれぞれの施設へ赴きます。一人は80代の男性で、お会いすると相撲等のスポーツの話題で話に花が咲きます。もう一人は60代の重度の障害のある方で、会話はできませんが、ふれあうことでご本人に寄り添います。

 

私が支援の際に大事にしているのはご本人の意思を尊重することで、キーワードは「喜びと楽しみ」です。どのように支援したらご本人が喜び、楽しみを感じるかを考えます。その方が喜び、楽しむことは、支援する私にとっても喜びと楽しみとなります。認知症や障害により意思を明確に示すことができない方もいらっしゃいますので、ご本人と日ごろから関わっている施設職員や関係者ともコミュニケーションをとり、連携してご本人の意思を尊重した支援をしていくことも大切だと思います。

 

また、今までの支援の中で印象的だったのは、疎遠だった親族との面会が実現した場面です。最初に成年後見人となった90代の女性は独身で、親族との交流があまりありませんでした。親族へ面会について働きかけを続けた結果、その方が亡くなる一カ月前に面会が実現しました。五年間、その方の成年後見人を務めましたが、そのような努力が実を結んだことにとてもやりがいを感じました。

 

もっと知ってもらうために

区民成年後見人同士の交流や、知識の底上げをするため自主的な勉強会を行っています。皆で集まると、さまざまなケースや情報を共有することができ、ノウハウも蓄積されます。仲間の存在がとてもありがたく感じます。他にも、経験者として区民成年後見人養成研修での講師を務め、現場実習を受け入れるなど後進の育成にも力を入れています。

 

区民成年後見人がきちんと役割を果たしていることを社会に知ってもらい、今後さらに活躍できるようになっていけたらと思います。
そのためにも、私たち区民成年後見人が一つひとつの事柄にしっかり対応し信頼につなげていかなくては、と気を引き締めています。

 

私自身、これからも体力の続く限り、現役で区民成年後見人を続けていきたいと考えています。

 

なるほどWord

  • 市民後見人
    区市町村等が実施する養成研修を受講するなどして成年後見人(保佐人、補助人を含む)として必要な知識を得た一般市民の中から、家庭裁判所が成年後見人として選任した方。
    世田谷区では「区民成年後見人」と呼んでいる。
取材先
名称
区民成年後見人(市民後見人)齋藤俊夫さん
概要
(社福)世田谷区社会福祉協議会
https://www.setagayashakyo.or.jp/
タグ
関連特設ページ