一般社団法人 日本意思決定支援推進機構・京都府立医科大学・COLTEM
第1回 意思決定支援研究大会
掲載日:2019年8月27日
2019年8月号  TOPICS

 

第1回 意思決定支援研究大会の様子

 

あらまし

  • 京都市左京区にある稲盛記念会館にて、第1回 意思決定支援研究大会が行われました。
  • 障害者権利条約の批准などで近年関心が高まっている「意思決定支援」に関して、シンポジウム1では、「高齢者への医療における意思決定支援の現状と課題」、シンポジウム2では「高齢者の経済活動における能力評価と意思決定支援の課題」をテーマに専門家や企業から発表、パネルディスカッションが行われました。

 

高齢者への医療における意思決定支援の現状と課題

シンポジウムに先立ち、大阪大学大学院准教授の平井啓さんによる「認知症医療における行動経済学的意思決定支援の可能性」をテーマに基調講演が行われました。現在の医療の現場では、治療するか、しないか、どのような治療をするか等を決める際に医療側と患者側で意思のすれ違いが起きることがあります。これは日本の医療制度が「患者が合理的な意思決定ができる存在である」という前提のもとに構築されているためです。しかし、実際には患者はさまざまな感情や経験が影響し、自身が理解できた限定的な情報で物事を判断します。そのため、平井准教授は意思決定の場面では、患者、家族、医療者はお互いがすべてを合理的に理解することは難しいことを認識すること、コミュニケーションのゴールを「患者にとって望ましい意思決定・行動変容」とすることを提案されていました。

 

シンポジウム1では、「意思決定能力評価の技法と実際~医療同意能力、遺言能力を中心に~」、「Shared Decision makingの高齢者への適用」、「多職種による意思決定の技法 臨床倫理の4分割」というテーマで、研究者から発表が行われました。発表後行われたパネルディスカッションでは、参加者から「成年後見人をつとめているが、医療現場には意思決定支援の考え方がまだ広まっていないと感じる。後見人としては医療従事者と一緒に考え、判断していきたい」、「認知症の方の増加に伴い、認知症の方向けのサービスが増えることが予想される。現在研究されている医療における意思決定支援の考え方を、一般企業が提供するサービスにどうフィードバックできるか」といった意見や質問が出ました。一般企業のサービスへの反映について、平井さんは「個人情報に関する問題を整理したうえで、情報をクラウド化し、蓄積することで、その意思決定が妥当かどうか判断できるようなしくみがあると、企業も安心して認知症の方と契約できるようになるのではないか」と指摘しました。

 

高齢者の経済活動における能力評価と意思決定支援の課題

シンポジウム2では、「認知症による経済活動への影響」、「高齢者の消費者被害とその対応の実際」、「適合性の原則と金融機関の取り組み」、「ICTを活用した能力評価と意思決定支援の可能性」というテーマで、見守り活動を行う団体やAIを活用したサービスの開発を行う企業の発表が行われました。発表では、発表者の一人である大阪大学大学院助教の大庭輝さんが関わるプロジェクト(Project PPMELT)が、認知症高齢者とその介護者を対象に行った調査結果が紹介されました。調査では、認知症高齢者の預金は介護者がインフォーマルに管理している場合が多く、潜在的な経済的虐待のリスクがあること等が明らかとなったということです。

 

パネルディスカッションでは、成年後見人をつとめる専門職から「本人の意思決定を考える際、本人と家族の意思や関係をどう考えたらよいか」、「開発を目指す成年後見制度のプラットフォームとはどういうものか」といった質問が出ました。発表者であり、成年後見制度のプラットフォーム開発を目指す株式会社エクサウィザーズの尾川宏豪さんは「成年後見人はどのような支援計画をもっているか、それを実行していけるかどうかが大事。成年後見人就任後も本人に関する情報を把握し、情報を更新していくことも大切だと考えるので、それが効率的にできるようなAIを活用したサービスを考えている」と取組みについて発言がありました。

 

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医療と経済活動の分野での意思決定支援に関するさらなる研究が今後も期待されます。

取材先
名称
一般社団法人 日本意思決定支援推進機構・京都府立医科大学・COLTEM
概要
一般社団法人 日本意思決定支援推進機構
https://www.dmsoj.com/kenkyu

京都府立医科大学
https://www.kpu-m.ac.jp/doc/index.html

COLTEM
http://coltem.com/
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