小柴典子さん
あらまし
- 各区市町村には、地域交流の場として地域の住民が主体的につくるサロン活動や居場所があります。
府中市で、誰でも自由に参加でき、工作や手芸、ゲームなどの活動を行う「井戸端サロン木曜会」の代表者の小柴典子さんにお話を伺いました。
サロン活動との出会い
数年前に、脊柱管狭窄症を患い、手術をしました。同時期に身近な家族が亡くなったこともあり、気持ちが落ち込み、無気力になってしまいました。そんな様子を見た娘に「市でいろんな講座をやっているよ」と勧められたことがきっかけで、ネイル教室や口腔機能向上の講座等、介護予防にまつわる教室に参加するようになりました。そこで人に会ったり、体を動かしたりするうちに、少しずつ元気になったのを覚えています。
徐々に会場の準備や手伝い等にも関わるようになったある時、「ここに来られるのは元気な人がほとんど。一人暮らしの方たちの中にはどこにも行く所がなく一日中家にいる人もいるんじゃないか」と、ふと思いました。友人ともそんな話をして、何かできないかと考えていた時に「サロン立ち上げませんか」という社協のチラシを見つけたのです。社協に連絡をとり、友人17人を誘って2015年に「井戸端サロン」を立ち上げました。
「井戸端サロン」という名前には、昔、井戸の周りに自然と皆が集まり、何気ない会話やつながりが生まれていたように、サロンを通じて自然とお互いを気遣うつながりができたら、という思いを込めています。
お互い様の心で支え合う
井戸端サロン木曜会は、自治会の協力もあり、都営住宅の集会所で活動しています。コロナ禍前には、毎月2回木曜日、自由参加で集まり、手芸や工作、ゲームのほか、映写機を使って映画観賞会など企画も盛りだくさんで活動していました。自由参加ではありますが、一人暮らしの高齢者が主な参加者層なので、いつも来ていた人がしばらく来なかったり、様子が違ったりするとやっぱり気になります。そうすると、家に少し顔を見に行ったり、電話をしたりして、何か困っていないかなと様子を見ます。
高齢になるとどうしても体の具合が悪くなることが多いですが、一人暮らしだと一層大変です。身寄りのない病気の高齢者に寄り添った経験は一度や二度ではありません。毎日のように家に通い、ドライシャンプーを手伝ったり、のり巻きをつくって届けたり、都営住宅の玄関に手すりを付けられるように働きかけたこともありました。
振り返ると、さまざまなことをしてきましたが「してあげている」という感覚はなく、何かあればお互い様という気持ちや、人と会える楽しさ、誰かの役に立てたという充実感が力になって、自然と体が動いています。
製本業を営んでいた実家には、昔から多くの人が出入りしていて、みんながお互い様という心でつながっていることを幼い頃から当たり前のように見てきました。そんな生活の中で受け継いだ考え方が今につながっているのかもしれません。
子どもが小さい時には、PTAの役員を合計で11年間、地域の子ども会の役員も17年間務めました。自分の家族はもちろんですが、地域のみんなにとって少しでも良くなれば、という思いでいつも動いています。
出来ること一つ一つを大切に
コロナ禍になり、今まで通りの活動ができないことは一番の悩みでしんどいところです。なかなか集まれないので、会報をつくり、7名の役員が手分けをしてサロンの参加者に届けています。顔を見ると様子も分かるので、いつもと違うなと感じた時には社協に相談するようにしています。
正直に言えば、若い世代もいないので、将来このサロンがどうなるかは分かりません。ただ、これまで考え続けてきたのは、今、目の前のできることに一つ一つ誠意を持って取り組むということです。たくさんの人に支えられ、子どもや孫など、若い世代からも教えてもらいながら活動しています。自分がいい加減に取り組んでいたら手を貸してもらえないし、信用も得られないと思っています。できることに一生懸命向き合って、社協の職員や地域包括支援センターの職員、若い人の手も借りながら、仲間と健康に長生きしたいですね。