(社福)立川市社会福祉協議会
立川市社協における重層的支援体制整備事業の取組み―6つの圏域に地域福祉コーディネーターを複数配置し、市と社協に相談支援包括化推進員を配置するとともに、3つの重点対象者を設定―
掲載日:2022年7月25日

Ⅱ 地域福祉コーディネーターの活動強化

 

(1)地域福祉コーディネーターを6つの圏域全てに複数配置へ

立川市社協では、平成19年度に都内で初めて地域福祉コーディネーターを配置しました。その活動は、6つの圏域の一つの第4地区(栄町・若葉町)の地域包括支援センターに席を設けてのモデル配置で始まりました。

 

地域包括支援センターに配属するのではなく、社協職員として各福祉圏域へ地域配属するものです。最初は東京都の「地域福祉推進区市町村包括補助事業」を 財源とした配置でした。その後、平成22年度に第6地区(上砂町・一番町・西砂町)に2人目、平成25年度に第2地区(錦町・羽衣町)に3人目を配置しました。さらに、国の地域力強化推進事業のモデル事業にも取り組むようになり、平成27年度には残りの第1地区(富士見町・柴崎町)・第3地区(曙町・高松町・緑町)・第5地区(砂川町・柏町・幸町・泉町)に配置し、6つの圏域すべてに計6名が配置されるに至りました。

 

そして、令和4年4月からは重層的支援体制整備事業を活用してさらに6名を増員し、6つの圏域全てで地域福祉コーディネーターを複数配置する体制を実現しています。12名は全て正規職員です。また、社協本部に配置している係長も地域福祉コーディネーターの経験のある職員を配置しています。この6つの圏域は、地域包括支援センターの日常生活圏域、地区民生委員・児童委員協議会の地区割と一致しています。

 

広報たちかわ

 

(2)地域福祉コーディネーターが大切にしてきていること

令和2年度実績で全地区合わせた相談件数は3,051件。地域福祉コーディネーターは、「孤立のないまち」「住民が心配ごとの解決に参加できるまち」をめざし、活動に取り組んでいます。活動にあたって地域福祉コーディネーターが心がけているのは「相談が今このタイミングで寄せられていることに意味がある」と考え、「この人はどんな可能性を持っている人か?」といったできること探しに努め、また、一人で抱えずに、「とにかくどこかに持ちかけ」、「何がどうつながっていくか」を意識し、地域福祉コーディネーター自身が課題を解決するよりもむしろ、地域の活動につないでいくことを大切にしています。

 

地域での「孤立」「孤独」を防ぐには、やはり人と人が出会う場や機会を作ることが必要です。そのために必要なのは、居場所であり出番であり、さらにはそういった場や機会を住民と一緒に作っていくことが大切になります。地域福祉コーディネーターは令和2年度実績で「地域懇談会」を全地区で372回開催。グループ支援では17グループの新規立ち上げを支援し、地域団体・関係機関とさまざまな協働事業に取り組んできました。そして、こうした活動実績を年度ごとの『地域福祉コーディネーター活動報告』で発信しています。

 

地域福祉コーディネーターが活動にあたり意識していること

・「関係ない」相談はない

・この人はどんな可能性を持っている人?

・誰と一緒に、どこと一緒に取組めるかな?

・何がどうつながっていくかな?

 

また、コロナ禍にも多くの市民とともに活動を展開しました。例えば、市民、NPO、社協が協働し平成29年からフードバンク立川の活動をスタートしていますが、コロナ禍にはそれまでの活動の輪を通じて通常のフードドライブ(食品回収)に加えて地域の関係機関・団体からも持ち込まれ、前年度比で2.1倍の件数の個人・団体に配布することができました。特にコロナ禍は多くの地域活動やボランティア活動が休止する中で「地域で困っている人のために何かできないか」という相談が社協に寄せられました。それは「手作りマスクを福祉施設に届けたい」「ひとり親家庭へ無料のお弁当を配布したい」といった市民の声があり、そこで、そうした新たな地域活動を市民が支えるための『新型コロナウイルス地域支援寄付金』を創設しました。同寄付金は令和2年5月以降、のべ500万円を超える寄付が集まり、それを原資にグループや団体への助成を行いました。そして、助成金を活用したグループ・団体の取組みを報告書にまとめて市民に知らせています。

 

成果を地域に知らせる取組み

 

さらに、「立川市社協動画チャンネル」では、地域福祉コーディネーターが地域の活動や拠点を取材した動画をYouTubeで紹介しています。

 

前述の地域福祉コーディネーターの増員が実現したのは、地域福祉計画の策定委員会などでもスライドで可視化しながら示して評価につなげてきたことが背景にあります。また、地域包括支援センターに席がある地域福祉コーディネーターは、インフォーマルなつながりづくりにその力を発揮することで地域包括支援センターからも一定の評価を得てきました。

 

(3)地域福祉コーディネーターの配置に活用できる財源は何か?

重層的支援体制整備事業の実施に向けて、立川市では令和3年度から重層的支援体制整備事業の移行準備事業に取り組んできました。令和3年5月頃から市の福祉総務課、高齢福祉課、生活福祉課と社協の地域活動推進課、総合相談支援課、在宅支援事業課のメンバーで打ち合わせを重ねてきました。特に5~7月には予算策定や要望に向けて集中的に基本的な事業骨子を打ち合わせ、それ以降は月1回程度のペースで検討してきました。

 

地域福祉コーディネーターの配置財源に何が活用できるかは市と社協の間で共有をすすめてきました。重層的支援体制整備事業では、新たな機能(多機関協働、参加支援、アウトリーチを通じた継続的支援)を実施する補助基準額が人口規模別に定められています。他にも包括的相談支援事業や地域づくり事業の一部を地域福祉コーディネーターが担うことによる予算按分、生活困窮者自立支援事業の地域づくりに向けた支援事業、生活支援体制整備事業における生活支援コーディネーターなどの活用が考えられます。立川市では地域福祉コーディネーターが重層的支援体制整備事業において地域づくりに向けた支援を中心に参加支援や相談支援を実施していく役割を担うことを位置づけてこれらの財源を活用しています。

 

また、立川市社協では地域福祉コーディネーターとは別に、平成27年度から社協に設置している基幹型の地域包括支援センターに生活支援コーディネーターを配置していました。翌年にはもう1名を配置して、市の北部と南部をそれぞれ担当していました。これを重層的支援体制整備事業が始まってからは、財源を再構成して12名の地域福祉コーディネーター全員が生活支援コーディネーターを兼務する体制へと改めています。

 

そして、重層的支援体制整備事業に移行することで従来、補助事業だった地域福祉コーディネーターの配置は市からの委託事業となりました。それによって日報や月報など帳票や記録の作成に時間がかかりすぎないようにしながらも実績を可視化していくことが課題です。

 

地域福祉コーディネーターは日頃は配属された各圏域で活動していますが、月に2回、市の所管課と社協の担当課長・係長も交えた形で全員が集まり全体ミーティングを開き、各地域での相談事例や活動事例を共有しています。また、月に1回は、地域福祉コーディネーターだけでも集まり情報交換しています。さらに、年に1~2回、地域福祉市民活動計画の策定委員会の委員長を務める学識経験者によるスーパービジョンの場も設けています。
 

取材先
名称
(社福)立川市社会福祉協議会
住所
 
概要
(社福)立川市社会福祉協議会
https://www.tachikawa-shakyo.or.jp/
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