(社福)立川市社会福祉協議会
立川市社協における重層的支援体制整備事業の取組み―6つの圏域に地域福祉コーディネーターを複数配置し、市と社協に相談支援包括化推進員を配置するとともに、3つの重点対象者を設定―
掲載日:2022年7月25日

Ⅲ 相談支援包括化推進員による「まるごと」相談支援

 

(1)市と社協のそれぞれに相談支援包括化推進員を配置

立川市では、「相談支援包括化推進員」を令和2年度から社協に1名、令和3年度から市にも1名、さらに重層的支援体制整備事業がスタートした令和4年度からは新たに社協に1名を配置しています。また、令和4年度からは新たに市は地域福祉課を設け、これまで高齢福祉課にあった地域包括ケア推進係を移し、市の相談支援包括化推進員をここに配置しています。3名の相談支援包括化推進員は市と社協に分かれて配置されていますが、担うべき役割は同じです。そうした中で市の相談支援包括化推進員は庁内の連携、社協の相談支援包括化推進員は地域との連携にそれぞれの強みを発揮しています。

 

相談支援包括化推進員は年齢別の縦割りの窓口では受け止めきれなかった制度の狭間の相談を受け、制度と制度をつなぐ支援を展開します。令和2年度の配置当初からの取組みでは8050問題、ひきこもりのケースといった対応を通じ、次のようなことがみえてきました。

 

  • ①早期につながったケースの方が受援力は高く、受援力の有無は相談ケースの困難さにも比例する。いかに受援力を高められるか、相談窓口の周知や地域づくりが必要。
  • ②相談の入口はいろいろで、徐々にさまざまな機関から相談が入り始める。見えづらい人に支援を届くようにすることが必要。
  • ③どの世代の相談にも関われる機会は複数ある。早期に関わりが持てることで、その機会がつながるようにできる。

 

相談支援包括化推進員は各相談機関に次のように投げかけます。「今までどおり、各制度における相談機関は、必要に応じ連携しながら支援を実施してください。『うまく連携がとれない』『世帯支援が困難』なケースの時には、相談支援包括化推進員に相談してください」。相談窓口のそれぞれの分野からはみ出してしまう相談があります。それらが既存の相談窓口にとどまってしまわないよう、早期に世帯としての総合的な支援につなげていくことが必要です。

 

相談機関からつながってきたケースに対しては相談支援包括化推進員が訪問を繰り返し、関わりを作り、そして専門機関同士の連携を作ったり、新たに市に配置された「アウトリーチ専門員」による継続的な支援につなげていきます。また、参加支援や継続的な関わりには市民の協力が重要です。そのため、地域のインフォーマルな関わりが必要な場合には地域福祉コーディネーターの活動につなげます。

 

狭間の相談を受け、制度と制度をつなぐ

(2)重点対象者である「ひきこもり」「ヤングケアラー」の相談窓口を開設

立川市では、重層的支援体制整備事業を活用し、令和4年度は特に「ポストコロナの生活困窮者」「ヤングケアラー」「ひきこもり」を重点対象者とした支援体制の構築をすすめることとしました。そのため、令和4年4月25日の市の『広報たちかわ』では、「ひきこもり」「ヤングケアラー」の相談窓口を市の地域福祉課地域包括ケア推進係に開設することを市民に伝えています。

 

「ひきこもり」については、今まで相談窓口が明確でなく、民生児童委員やケアマネジャーから地域包括支援センターへ情報が入るものの、地域包括支援センターだけでは支援が困難なケースとなっていました。今後は身近な相談窓口として地域福祉コーディネーターや相談支援包括化推進員につながることで、相談支援包括化推進員が世帯の課題を整理し、情報が不足する場合には改めてのアセスメントに努めます。さらに、アウトリーチ専門員が訪問し、家族や本人の話を複数回聞くことによって信頼関係を構築し、課題を整理していくこととなります。

 

「ヤングケアラー」は、その呼称こそ目立ちますが、実際は「ケアラー」全体に共通する課題を捉えていくことが必要で、相談支援包括化推進員による関わりは始まったばかりですが、関わりを作っていくことは大切であり、やはり複合化した課題を抱える世帯としてその課題を整理していくことが重要になってきます。ヤングケアラーの高校生たちの集まるある支援団体のオンラインサロンでは、「かわいそうな子ども扱いはされたくない」「相談窓口にはぜったいに行かない。どんな人がいるかわからないし、大ごとになりそう」「感情面のサポートは行政に相談してもどうにもならない。高校生同士で話せれば普通に話せる」「親のサポートもほしい」といった声が上がっています。ケアの負担を軽減して教育の機会を奪われないようにするだけでなく、自身のしているケアを評価しながら、求められている支援は何かをよく話を聴いて、関係をつくりながら一緒に考えていく必要がありそうです。

 

「ひきこもり」「ヤングケアラー」の相談窓口を開設

 

(3)顕在化している生活困窮世帯への対応・・・「困窮相談振り分け会議」

そして、もう一つの重点対象者は「ポストコロナの生活困窮者」です。立川市社協では、生活困窮者自立支援事業を受託しています。同事業を実施する社協の「くらし・しごとサポートセンター」では、自立相談支援事業、住居確保給付金、家計改善支援事業、就労支援事業、生活福祉資金、教育支援資金、受験生チャレンジ支援事業を実施しています。特にコロナ禍には生活福祉資金の特例貸付を通じて、外国籍の方々も含めて、これまではあまり相談に訪れていなかった方々が窓口に見えるようになりました。

 

こうしてコロナ禍に顕在化した生活困窮世帯には多様な世帯状況があります。そこで、特例貸付の借り受け世帯や住居確保給付金の受給世帯等のその後の状況の確認と必要な支援の検討を市の生活福祉課と地域福祉課、くらし・しごとサポートセンター、前述の相談支援包括化推進員で行うことにしました。そのため、令和4年度には「困窮相談振り分け会議」を新たに設置し、同会議を通じて重層的支援体制整備事業での対応が必要なケースを精査する取組みを始めました。

 

(4)立川市における多機関協働事業・・・「支援会議」「重層的支援会議」

各相談窓口だけでは対応が困難な相談は相談支援包括化推進員につながると、初期相談を受けた窓口を含めた多機関協働の場として「支援会議」と「重層的支援会議」の活用が考えられます。

 

重層的支援体制整備事業の実施に合わせて社会福祉法に新たに法定化された「支援会議」は、本人同意が得られる前の段階から守秘義務をかけて関係者が関わりや支援の方向性を検討することができます。同様に守秘義務をかけた会議には、生活困窮者自立支援法や介護保険法、児童福祉法にもそのしくみが従来からありますが、重層的支援体制整備事業の「支援会議」は分野や対象にとらわれずに開きやすいことがメリットとなります。立川市では、個別支援会議(ケース会議)の場としてこの「支援会議」を位置づけています。そして、「重層的支援会議」は、立川市では市の関連部署の課長による会議としました。本人同意のもとでの個別の支援のプランを評価・決定するとともに、そこから必要となる施策の検討にもつなげていこうとしています。

 

さまざまな相談と支援会議等のイメージ図

 

取材先
名称
(社福)立川市社会福祉協議会
住所
 
概要
(社福)立川市社会福祉協議会
https://www.tachikawa-shakyo.or.jp/
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