社会福祉法人 至誠学舎立川 至誠ホーム
広がる外国人材の受入れ(1) 4つの外国人材受入れ制度の概要/ともに現場を支える仲間として(立川市・至誠ホーム)
掲載日:2019年10月29日
2019年10月号 連載 福祉人材の確保・育成・定着に向けた取組み

(左から)
至誠ホーム ホーム長 旭博之さん
同 統括事務局次長 浅沼智比古さん

 

あらまし

  • 福祉人材の確保・育成・定着に向けたさまざまな取組みの一つとして、福祉施設や事業所では、福祉を学んだ新卒学生だけでなく、未経験者や主婦層、高齢者、外国人など多様な人材に対し、採用や育成・定着のためのさまざまな工夫やアプローチを行っています。多様な背景を持つ人たちが、福祉の仕事に関わるきっかけや働く環境をつくるための取組みや工夫等を取り上げます。

 

福祉分野で働く外国人の増加

福祉人材の確保難に対応するための「多様な人材」の確保策の一つとして、介護分野を中心に、外国人材の受入れが増加しています。東社協社会福祉法人経営者協議会が、会員のうち、都内に法人本部がある社会福祉法人に対し平成30年に行った調査(※注1)では、回答した313法人のうち、外国人を雇用する法人は約30%となっています。外国人が働く福祉現場は今や珍しいものではなくなってきました。

現在、福祉職場で働く外国人の多くは、在留資格を持ち日本で生活されている方です。前述の調査でも、外国人を雇用している、または雇用予定の103法人において、最も多い雇用の枠組みは、日本人の配偶者や在日の定住・永住外国人(97法人※複数回答可)となっています。

 

介護分野においては、こうした、もともと日本で生活されている方の雇用に加え、国の制度において、さまざまな理由や条件のもと、介護分野へ外国から人材を受け入れる枠組みが拡大していることを背景に、外国人材の受入れが広がっています。

 

外国人介護人材受入れの4制度

令和元年10月現在、外国人介護人材の受入れ制度は、4種類あります。

 

1つ目は、二国間の経済連携の強化を目的とした「EPA(経済連携協定)」です。協定に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナムから外国人介護福祉士候補者を受け入れています。介護や看護を学び、一定の日本語能力(※注2)を備えて来日し、「特定活動」という在留資格が与えられます。一定期間内に介護福祉士資格を取得すると日本で永続的に就労することが可能です。平成20年7月に開始され、介護分野への外国人材受入れのきっかけとなる制度であることから、EPAでの受入れを行う施設が多くあります。

 

2つ目は、在留資格「介護」です。専門的・技術的分野での外国人の受入れを目的に、平成29年9月に開始された制度です。外国人留学生として来日し、介護福祉士養成校に2年以上通います。資格取得後は「介護」の在留資格により、永続的な就労が可能となります。多くの方が、施設でアルバイトをしながら養成校に通い、資格取得を目指します。

 

3つ目は、「技能実習制度」です。現行制度の開始は平成29年11月からで、国際貢献として、相手国への技術移転を目的としています。多くの場合、監理団体が受入れを調整し、介護施設等で技能実習生として最長5年間実習(雇用)できます。現在、法令順守と実習生の保護が強化されています。

 

4つ目は、この4月に改正入管法により創設された「特定技能制度」です。介護現場での人手不足をカバーするため、一定の専門性と介護技術を持つ外国人を受け入れることが目的とされています。在留資格「特定技能1号」を持ち、通算5年在留することが可能とされています。前述の「技能実習制度」と同様に、介護福祉士の資格取得後は在留資格「介護」が得られ、永続的な就労が可能となります。なお特定技能での受入れの本格化はこれからと考えられています。EPAを除く3制度では、人材を送り出す国に制限はなく、EPAでの三国に加え、タイ、中国や南米諸国等からも来日しています。

 

制度は複雑化していますが、各法人の方針とさまざまな工夫のもと、外国人材を受け入れている状況があります。今号では、施設での受入れ事例や取組みをご紹介します。

 

 

出典:厚生労働省ホームページより(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html

 

質の高い介護士の育成をめざして~立川市・至誠ホーム

立川市にある社会福祉法人至誠学舎立川の高齢事業本部である至誠ホームでは、現在8名の技能実習生と14名の留学生、計22名の外国人スタッフを4つの特養で受け入れています。技能実習生は、スリランカ・インドネシアから、留学生はベトナム・カンボジアから、とその出身国も多様です。

 

至誠ホームが外国人材の受入れを始めたのは、平成29年からです。もともと同法人には海外研修を行ったり、海外からの視察が多数あるなど、多文化を受け入れる土壌がありました。制度が拡大する中、将来を見据え、しっかりとした技術を持った質の高い介護士を養成していく必要があると考えています。

 

受入れにあたり、英語の話せるコーディネーターを採用し、職員寮の一部を外国人専用に整備しました。寮は施設内にあるため、出入りの際に職員と挨拶や会話を交わし、困りごとがないか、体調に変わりはないかなどを確認することができます。同ホームでは彼らのことを親しみを込めて、「Foreign(フォーリン)スタッフ」と呼んでいます。

 

良い影響を与え合う仲間として

至誠ホームの技能実習生はN2~4、留学生はN4と言われる程度の日本語能力を習得して来日しています。日本語の習熟度は介護技能の習得速度に大きく関わります。試行錯誤の末、現在は簡単な日本語でも理解しやすい作業から一つひとつ慣れていってもらうという教え方を採用しています。慣れない日本で暮らし、実習の合間に勉強を続けることは、当人にとっても大変な挑戦です。それでも「若くして技能や言語を身につけようと単身海外に渡ってきただけのことはあり、学びたい、教えてほしい、こうなりたいという彼らの意欲の高さには驚かされる」と同ホーム統括事務局 次長の浅沼智比古さんは話します。制度上、彼らが日本に滞在できる期間は限られていますが、指導する日本人職員は熱意をもって受け入れています。「日本人職員も刺激を受け、熱心に指導し、生活面や体調面も親身になって心配するなど、施設全体の雰囲気にも良い影響がある。1年も経過すると、任せられる業務が増えて現場から頼られる人材も出てきている。彼らがどのような進路を選ぶかは今は分からないが、応援していきたい」と浅沼さんは続けます。

 

ホーム長の旭博之さんは、「彼らのうちの一部はいずれ、深刻化する人材不足の中、日本の将来を担っていく仲間になってくれるかもしれない。我々には、職員と利用者がともに多様な文化との共生を実践してきた経験がある。単に一法人としてだけでなく、社会全体のために時間をかけて育てていくという、広い心と長い目を持つことが必要だと考えている」と話します。

 

※注1)「福祉人材の確保・育成・定着に関する調査」(調査期間:平成30年10月16日~11月9日、調査対象:東社協社会福祉法人経営者協議会会員のうち都内に法人本部がある822の社会福祉法人、有効回答数313件、回収率38.1%)
※注2)日本語能力は、日本語能力試験(主催:国際交流基金、日本国際協力支援協会)により判定され、最も低い「N5」(基本的な日本語をある程度理解可)から「N1」(幅広い場面で使われる日本語を理解可)まで5段階で示される。

 

  • 外国人向け入門テキスト
    『和英対訳初めての介護  Eldery Care for Beginers』
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  • 至誠学舎立川 至誠ホームでは、今年2月、入門者向け介護テキストの翻訳本『和英対訳初めての介護 Eldery Care for Beginers』を発行しました。外国人向け入門テキストのニーズに応えるものとして、橋本正明理事長はじめ同法人関係者や専門家の監修のもと製作されました。
    分かりやすいイラストとともに英語に対応した日本語にルビが振ってあること、基本的な介護の専門用語が使われていることから入門用のテキストとして使いやすい、と好評です。また、基本的な和食の配膳をイラストで紹介しているところ等は、既存のテキストには見られない特色です。
    ●担  当:至誠ホーム出版会 松田
    ●問合せ先:042-527-0035
    ●至誠ホームHP「和英対訳 初めての介護」
    http://www.shisei.or.jp/event/book/book8.html
取材先
名称
社会福祉法人 至誠学舎立川 至誠ホーム
概要
社会福祉法人 至誠学舎立川 至誠ホーム
http://www.shisei.or.jp/
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