(社福)南相馬福祉会 特別養護老人ホーム福寿園
依然として困難な介護人材確保と 全国の法人からの応援事業
掲載日:2017年12月18日
ブックレット番号:4 事例番号:45
福島県南相馬市/平成27年3月現在

福島県南相馬市は、東日本大震災の前には7万人の人口がありましたが、東京電力福島第一原発の事故に伴い市内の人口は一時期1万人程度まで減少しました。平成26 年6月時点で人口は5万人まで回復しましたが、依然として1万人を超える住民が市外に避難し、特に若年層の流出が著しくなっています。

市内の仮設住宅・借上げ住宅等には1万2千人弱が入居しています。長引く避難生活から新規の介護認定の申請が増加する一方で、市内の介護施設の一部はいまだ事業の再開ができず、再開している介護施設・事業所も介護職員の確保がなお厳しい状況にあります。施設入所の待機者は増加し、居宅サービスも職員の確保ができないため、定員を減らしたり、新規者を受入れられない事業所が増えています。

 

このような相双地域の介護サービスの厳しい現状を支援するため、福島県社会福祉協議会(以下、「福島県社協」)は平成24年6月より全国の社会福祉法人の協力を得て「福島県相双地域等への介護職員等の応援事業」を実施しています。平成26 年度は南相馬市、広野町、いわき市の6 施設に全国の132法人からのべ202人が応援に入っています。福島県社協にコーディネーターを配置して受入れ施設と応援施設をマッチングしています。

東京都社会福祉協議会の社会福祉法人協議会でも、平成26年4月8日~7月1日に都内11 法人の協力を得て、南相馬市の特別養護老人ホーム福寿園へ派遣を行い、6期にわたって支援しました。

 

 

 

 

震災前に比べて2割減の職員体制で頑張り続ける

社会福祉法人南相馬福祉会では、震災とともに全ての事業所が休止となり、特別養護老人ホームの利用者は遠く横浜市の老人保健施設にまで避難しました。そして、その利用者は、さらに全国の施設に分散しました。その後、市内に戻れるようになり、震災から3か月後の6月に南相馬市で特別養護老人ホーム万寿園、グループホームたんぽぽ、福寿園デイサービス、居宅介護支援センター、福寿園ヘルパーステーション、原町東地域包括支援センターが再開し、震災から6か月後の10 月に特別養護老人ホーム福寿園、ケアハウスさくら荘を再開させました。警戒区域解除後も避難解除準備区域となっている小高地区にあったグループホーム小高は仮設住宅内に仮設のグループホームなごみの家として再開し、25 年3月には新たにグループホーム石神、石神デイサービスセンターを開設しています。その一方、小高地区にあった特別養護老人ホーム梅の香は再開に向けた準備をすすめていますが、まだ再開できていない状況にあります。

 

市内の介護ニーズに応えようと、なんとか介護サービスを展開してきた南相馬福祉会ですが、震災前には法人全体で235 人いた職員は、震災後の1年間で104 人が退職しました。平成26 年3月末の職員数は185 人となっています。23 年度、24 年度となんとか20人ずつ採用して一時は195人まで回復させたものの、25年度以降は採用がさらに厳しくなっています。特に26年4月採用では大学生、専門学校から有資格者の学生の応募者が一人もいませんでした。これは法人開設以来初めてのことです。南相馬福祉会常務理事で福寿園施設長の大内敏文さんは、「今年(平成26年)も3月末に1人、4月末に1人、6月末に5人退職している。奥さん、子どもが県外に避難していて夜勤明けに会いに行く生活をずっと続けてきてくれた職員もいた。自分の家族よりも仕事を優先する生活を3年も頑張ってくれてきた職員が限界に達して辞めていく。子どもと避難している避難先から今なお毎日70㎞の山道を3年も通い続けてくれている職員もいる。そんな職員に『ずっと続けてほしい』とは言えない」と、つらい想いの胸中を話します。法人本部事務長で福寿園副施設長の末永千津子さんは「子どものいる若い世代は、市内の医療体制への不安が大きいと思う。病院が北側にしかなく、病床も十分にない。子どもが夜中に具合が悪くなったときのことを考えると、不安にならざるをえないだろう」と指摘します。

 

介護職員以外の人材確保も困難となっています。介護にかかる医療職(看護師、理学・作業療法士)も介護事業所での確保が困難な状況です。退職した50~60 歳代の看護経験者に直接お願いして確保していますが、長期に安定した確保が難しくなっています。福寿園では調理を震災前から業者に外注していますが、その業者も26年6月末で撤退することになりました。7月以降の業者探しに苦労し、なんとか確保できた状況です。

 

介護人材を確保するためにさまざまに工夫

このように、人材確保が厳しい現状ですが、手をこまねいているわけにはいきません。求人をハローワークに出すのはもちろん、人材を確保するために南相馬福祉会ではさまざまな工夫に取組んでいます。

一つは、人材確保と合わせて人材の養成にも取組むため、2級ヘルパーの養成校の指定を受けています。高校生を育てながらこれまで6人を採用に結びつけています。また、24 年6月には「職員紹介奨励金支給制度」を創設しました。これは知人を紹介して雇用に結び付けると奨励金を支給する制度で13人が採用に結び付いています。さらに、26 年4月からは契約職員の約50 人を正職員化しました。法人としてできる範囲ではありますが、安心して働ける環境を整えようと努力しています。また、国の補助金を活用して正職員の応募チラシを作成して、相双地域に新聞折り込みで配布しました。チラシでは「正職員 随時募集」「資格・経験不問。採用後、キャリアアップを支援します」とうたい、職員からのメッセージを添えることで、若い人材を育てながら確保しようとしています。大内さんは「こうした取組みがゆっくりと効いてくれれば…」と話します。

 

 

限られた人員で円滑にサービスを提供していくための工夫もしています。例えば、ショートステイでは職員体制が減った中で、利用者一人ひとりが持ち込む物をそれぞれ管理する手間をなくすため、利用者には何も持たずに来てもらい、ホテルのように必要なものはあらかじめ揃えて用意しておくように改めました。少ない体制であっても利用者と向き合える時間を確保するために周辺業務を切り詰めています。

さらに、抜本的な解決をすすめるため、平成26年5月には相馬地方の10法人が「相馬地方に介護福祉士養成学科をつくる会」を設置し、その実現に向けた活動を始めました。県内には7つの介護福祉養成施設がありますが、相馬地方から通学できる学校がありません。今後の長期的な人材確保と養成を見据えた取組みもすすめています。

 

 

 

取材先
名称
(社福)南相馬福祉会 特別養護老人ホーム福寿園
概要
(社福)南相馬福祉会 特別養護老人ホーム福寿園
http://minamisomafukushikai.or.jp/
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