スクールソーシャルワーカー 見上謙人さん
子どもたちからの信頼を大切にしていきたい
掲載日:2020年2月4日
2020年1月号 くらし今ひと

スクールソーシャルワーカー 見上謙人さん

 

あらまし

  • 杉並区でスクールソーシャルワーカー(以下、SSW)として活動している見上謙人さんにお話しいただきました。

 

子どもたちが置かれた環境にアプローチしたい

学生時代は社会科学を専攻し、さまざまな社会課題について知りました。その時に一番考えさせられたことは、人は自分が生まれてくる環境を選べないということでした。国も家族も、親も、生まれる前に選ぶことはできません。一方で、何か課題や問題が起こった時には「その人の努力が足りない」とか「根性が無い」など、その人に問題の根源があるような焦点の当て方をする社会だな、と感じていました。それって不公平だなと思いました。生まれた環境が違えば悩まなくて済んだ問題だったのかもしれないのに、その人が悪いと周りの人間が決めるのは、辛いことだなと。だから、その人が置かれた環境を変えていくことで、その人を責めずに良い方向に変わっていけばいいと思っていました。私は社会で一番弱い立場に置かれているのは子どもだと考えていたので、子どもたちが置かれた環境にアプローチする仕事をしようと決めました。

 

スクールソーシャルワーカーを目指して

就職活動中は、SSWの存在を知りませんでした。色々と考えた結果、先生の業務負担を減らすことで子どもの環境に影響を与えられるのではと思い、教育系のIT企業に就職しました。仕事は楽しく、教育現場に貢献している実感もありました。でも、子どもたちが置かれている社会環境は悪化している気がしていました。その頃、SSWの役割と存在を知り、やりたいと思い始めました。どの採用情報にも社会福祉士や精神保健福祉士の資格が必要とありました。「資格は無いのですがやらせていただけませんか」と東京都内の30くらいの自治体に電話しましたが全滅でした。想いだけでやれる仕事じゃありませんから、今考えれば当然の結果です。その後は社会福祉協議会で働きながら福祉に関する知見を広げつつ、大学の通信課程で2年間学び、社会福祉士の資格を取得しました。

 

杉並区での活動

杉並区のSSWは、子どもとの直接的な関わりを大切にしています。子どもの家庭を訪問したり学校で会ったり、または勉強ができる場所や子ども食堂などが地域にあるので、そこへ一緒に行ったりもします。こうした活動を通じて、その子に「自分は大切な存在なんだ」と感じてもらえるような関係性を、SSWを含めた社会の中に築いていきます。これは信頼関係がないとできないことです。日々迷う事もありますが、上司や同僚にすぐに相談させてもらい、助けられています。

 

教育と福祉の垣根はない

杉並区は東京で最も早くSSWを導入した自治体です。長年にわたる協働の中で、区内の学校の先生方はSSWのことをとても理解してくださっていると感じます。これまで多くのSSWの先輩方が業務を通じて学校から信頼を得てきた結果だと思います。よく「教育現場に福祉の人間が入ることで難しさを感じませんか?」と聞かれますが、そう感じたことはありません。【子どものために】という点ですぐに関係者が一丸となれる土壌が杉並区にはあると思っています。

 

今後について

関わった子どもたちからの信頼を損なうようなことがないようにありたいです。また、環境にアプローチするというソーシャルワークの考え方が世の中に広がっていくといいなと思います。

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スクールソーシャルワーカー 見上謙人さん
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