(社福)七五三会 紺野智子さん、紺野ひろみさん
娘のペースでゆっくりと成長し、やりがいをもって過ごしてほしい
掲載日:2020年3月3日
2020年2月号 くらし今ひと

(左)髙見けい子さん、(中央)紺野智子さん(右)、紺野ひろみさん

 

あらまし

  • 特別支援学校高等部を卒業後、社会福祉法人七五三(なごみ)会に就職し、勤続10年を迎える紺野智子さんと、母親の紺野ひろみさんにお話しいただきました。

 

町田市にある七五三会 いづみの里では勤続10年を迎える職員に対し、表彰を行っています。令和元年12月23日には栄養課の紺野智子さんの表彰式がありました。理事長 髙見けい子さんの「これからも頑張ってください」の声かけに、「頑張ります」と笑顔で応える智子さんの声が会場に響いていました。

 

◆智子さんより

Q:どんなお仕事をしていますか
A:トレーを台車に入れたり、コップを洗ったりしています。あとは、テーブルを拭いたり、お箸をおぼんに並べたりしています。
Q:お仕事は楽しいですか
A:とっても楽しいです。大変だと思ったことはありません。
Q:休日は何をしていますか
A:(小学1年生から習っている)ピアノを弾いています。施設のクリスマス会で披露する「きよしこのよる」の練習をしています。得意な曲は「にんげんっていいな」です。
Q:お仕事で頑張りたいこと(目標)はありますか
A:今のお仕事をこれからも頑張りたいです。

仕事の様子

 

◆ひろみさんより

就職するまで

娘には生まれつき知的に障害があります。中学校までは、地域の特別支援学級で過ごし、特別支援学校の高等部に進学しました。七五三会さんのことは、当時の進路指導の先生の紹介で知りました。高等部在学中に、2回の現場実習を経て、入職することを決めました。実習中の職員さんとの手紙のやりとりから、娘が落ち着いて作業に取り組むことができていたこと、職員さんが娘の得意なことや苦手なことに合わせきめ細かく働きかけていただいていたことが決め手となりました。
実際に入職が決まってからも、娘に“なにができるか”という視点で、働きやすい時間帯や、得意なことなどを細かく聞いていただき、親子ともに安心した状態で新生活のスタートを切ることができたことを覚えています。

 

新しいことは親子にとって挑戦

娘は新しい環境や、急な予定変更に対応することが苦手ですが、決められた手順があれば丁寧にこなすことができます。最初の大きな壁は、電車通勤でした。電車は混雑や天候等で運転時間が変更になることが多いため、娘が慣れるにはかなりの時間を要しました。最初の半年間は私が付き添って出勤し、徐々に後方から見守る形をとるようにし、入職5~6年目くらいからは1人で通勤できるようになりました。それからしばらくした頃、娘が乗車する電車がトラブルにより50分程度停止したことがありました。パニックを起こしているだろうと慌てて駅に向かいましたが、娘は車内放送に従って、落ち着いて電車の席に座っていました。今では娘を信じ安心して送り出すことができています。新しい出来事はいつも“挑戦”だという気持ちで乗り越えてきました。

 

入職してから

入職してからは、栄養課に配属となりました。トレーやコップの洗浄など、娘がルーティンでできる仕事内容を割り振っていただいています。娘も「おじいちゃんとおばあちゃんの手伝いをする仕事」と言い、やりがいをもって働いています。施設の方からは「周りの状況をうかがい次の仕事を見つけることができるようになってきている」と聞いています。娘の成長や意欲に合わせて仕事内容を調整していただいていることがうかがえ、職員さんにはとても感謝しています。家庭でも、洗濯物を干したり、お風呂のお湯を張り替えてくれるなど、気づいた家事を率先して行ってくれるようになりました。勤続10年を迎え、改めてたくさんの方に支えていただいていることを実感しています。これからも娘なりにゆっくりと成長しながら、やりがいをもって仕事に励んでほしいと思っています。

 

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七五三会 施設長の矢島史稔さん、副施設長の永野賀子さん、理事長の髙見けい子さん、栄養課係長の後藤文さんにもお話を伺いました。

 

◆施設より

永野さん:知的に障害がある方の雇用は紺野さんが初めてでした。高等部在学中の2回の実習では、保護者の方と情報を共有しながら仕事内容に慣れることや、紺野さんの得意なことや苦手なことの確認を丁寧に行いました。入職前には、働きやすい時間帯などをお聞きし、“どうやったら働きやすいか”“紺野さんにできることは何か”という視点で調整を重ねました。

 

髙見さん:入職前からピアノが得意だと聞いていたので、採用1年目からクリスマス会のピアノを担当してもらっています。最近では、ご利用者さんからのアンコールにも応えられるようになり、少しずつ初めてのことや、いつもと違う状況に対応できるようになってきていると感じます。

 

矢島さん:同法人の施設の開所式でもピアノを担当してもらいました。大勢の人のなかでも物怖じすることなく堂々と演奏する姿はとても素敵でした。

 

後藤さん:栄養課では食器の洗浄や台拭き、箸やネームプレートの配膳などを担当してもらっています。仕事内容によっては紺野さん1人で担当しているものもあり、厨房にはなくてはならない存在です。最近では周りを見て行動することが増え、こちらからの指示がなくても次の仕事を見つけ、取り掛かることができるようになってきました。また、調理が苦手だと聞いていましたが、デジタル計りを使用した食材の計量もできるようになってきています。紺野さんの意欲や責任感に繋がるよう、様子を見て新しい仕事をお願いしています。

 

永野さん:受け入れを決めた時は、“人間関係をうまく築くことができるだろうか”、“栄養課の職員は紺野さんを受け入れてくれるだろうか”など不安なことは多かったですが、今までトラブルは一度も聞かれません。むしろ、「こんちゃん(紺野さん)がいると明るくなる」と聞いています。栄養課の職員の理解があったことはもちろんですが、なにより紺野さんの明るく、優しい人柄が今の栄養課の風土を作ったのだと思います。

取材先
名称
(社福)七五三会 紺野智子さん、紺野ひろみさん
概要
(社福)七五三会
http://www.753kai.or.jp/
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