(社福)やぎ
全壊した障害者施設「八木園」再開までの取組み
掲載日:2017年12月19日
ブックレット番号:4 事例番号:47
広島県広島市/平成27年3月現在

 

昭和60 年から30 年間にわたって広島市安佐南区で運営してきた社会福祉法人やぎの障害者施設「八木園」(就労継続支援B 型事業所)は、平成26 年8 月20 日に発生した豪雨および土砂崩れによって全壊しました。発災した時間帯が深夜だったので、施設に通っている10 ~ 70 歳代の利用者30 名および職員10 名は施設内におらず全員無事でした。しかし、瓦礫や土砂で埋まった作業所は活動の休止を余儀なくされ、利用者や家族は待機状態となり一日も早い再開が求められていました。

社会福祉法人やぎでは、地域の関係者や県外からの応援を受け、約2週間後の9 月8 日には安佐北区と安佐南区の2 か所に分かれて作業所を再開し、11 月4 日からは隣接する安佐北区に新たに拠点を移して運営しています。財源や人員が限られているなかで、利用者への対応を継続しながら、短い期間で作業所の再開に至ることができた八木園の取組みを紹介します。

 

(右から)

社会福祉法人やぎ理事長 菅井直也さん

サービス管理責任者 山脇智鶴さん

八木園施設長 春木強さん

 

土砂災害発生時から再建に向けて動く

8 月20 日早朝、八木園施設長の春木強さんは、利用者の家族から土砂災害の連絡を受けて施設のある八木地区に向かいました。しかし、周辺の道路は土砂に埋もれ、施設までたどり着くことができませんでした。春木さんは職員に自宅待機の連絡を行い、利用者全員に対して連絡網を使って安否確認および休園の連絡を行いました。当時、被害の大きい八木地区には3 名の利用者がおり、連絡網が途中で止まってしまいましたが、その日のうちに電話で利用者全員の無事を確認することができました。

11 時頃、再び春木さんが施設に向かい、状況を確認すると、事務所と作業場は全壊していました。1つだけ建物は残っていましたが床から1メートルの高さまで土砂と瓦礫が入り込み、傾斜していました。そして、別の作業場は完全に流され、跡形もない状態でした。利用者の送迎に使っていた車両は、5 台中3 台が使用不能となっていました。

 

被害状況の確認と同時に、社会福祉法人やぎ理事長の菅井直也さんと春木さんは、行政の所管部署、安佐南区社会福祉協議会、作業所の仕事の請負業者や保険会社など各関係者への連絡も行いました。その際に、八木園と同じ安佐南区にある社会福祉法人あさみなみから、10 名程度が利用できる「地域交流スペース」を仮の作業所として使ってよいとの提案がありました。こうした情報提供により、他法人の施設の間借りを視野に入れた作業所の再開に向けて、災害発生当日から動き出すことができました。

 

八木園周辺の土砂災害の様子(右下付近)(出典:国土地理院撮影の空中写真、2015 年撮影)

土砂に埋もれた八木園

建物の半分が土砂に流されている様子(社会福祉法人やぎ提供)

 

役割分担をして同時並行で対応をすすめる

幸いなことに八木園の職員は土砂災害の被害を受けなかったため、翌日21 日には全職員が集まり職員会議を開催しました。そして、被害状況の確認や利用者一人ひとりの状況の共有、今後の見通しについて話し合い、職員10 名それぞれの役割分担を決めました。

 

まず、利用者への対応はサービス管理責任者の山脇智鶴さんが担当し、利用者の状況把握に加え、自宅待機中の利用者の家族に対して8 月24 日に保護者会を開催することが決まりました。また、ひとり暮らしの利用者1 名については、他法人の生活支援センターにつなぐ対応をしました。

渉外関連では、春木さん、山脇さんと各請負作業の担当職員が2日間にわたり請負業者のあいさつ回りをしました。「土砂で作業所にあった注文の部品や品物は紛失し、使い物にならなくなっていた。そのため、被災直後から発注元の各業者に状況説明を行った。業者の皆さんは八木園の現状と再開に向けた取組みに理解を示してくれて、大変ありがたかった」と春木さんは話します。

 

また、行政や地域の福祉関係者については理事長の菅井さんと春木さんが対応し、社会福祉法人あさみなみに加え、安佐北区のNPO 法人みんなでスクラム生活支援センターの一部を間借りできることになりました。そこで、被災から2 週間後の9 月8 日から、2か所に分かれて作業所を再開することにしました。これまで八木園は1か所で運営を行ってきたため、作業所を安佐北区と安佐南区の2か所で実施するには、改めて職員の配置や連絡体制を検討しなければなりませんでした。加えて、利用者の送迎コースや間借りする場所を利用する上での注意点も一つひとつ確認しました。例えば、作業所のうち1か所は2 階建てのため、足の不自由な利用者のサポートをどうするのか、一般家庭にあるタイプのトイレでの介助をどう行うのかなど、細かいチェックが必要でした。

 

さらに、行政や保険の手続き等も9 月8 日の再開に向けて同時並行で行う必要がありました。事務書類等の多くは土砂で流されてしまいましたが、後片付け中に見つけたパソコンのデータをなんとか復旧させることができ、その後の事務処理は比較的スムーズに行うことができました。こうした対応一つひとつを通して、利用者の送迎用の車両や作業所の備品をそろえていく目処が少しずつ立っていきました。そして、職員は多方面にわたる準備や検討を役割分担しながら同時に行うことで、予定通り9月8日に再び作業所を開始することができました。

 

取材先
名称
(社福)やぎ
概要
(社福)やぎ
https://yagien.amebaownd.com/
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