(社福)七五三会
新型コロナウイルス感染症下での家族と利用者のオンライン面会の実施【社会福祉法人 七五三会】~
掲載日:2020年6月23日
  • 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、社会福祉法人七五三会では、家族とのオンライン面会をスムーズに実施するため、イベント予約サイトを使用して日程調整を行っています。施設長の矢島史稔さんにお話を伺いました。(取材日:2020年6月4日、12日メールにて)

 

 

新型コロナウイルス感染症拡大の影響と、課題となったことについて教えてください

矢島さん)本法人の特別養護老人ホームのご利用者の中には、テレビのニュースや新聞、職員の話などから緊張感が伝わり、不安を感じている方がいらっしゃるように見受けられます。また、ご家族との面会やボランティアの受入れが中止になり、寂しい思いをされているように感じられています。現在、デイサービスのご利用者については、感染予防の観点からレクリエーションの内容を変更しているため、ご不便をおかけしています。そのため、ストレスを抱えているご利用者もいらっしゃいます。

また、面会が出来ないことにより、ご利用者の体調などを心配されているご家族は多いと感じています。3~4月頃はご家族より「いつ面会が再開されるか」というお問合せがありましたが、最近は「緊急事態宣言が解除されたが、直ぐに面会を再開しないでほしい」との声も聴いています。ご利用者には会いたいが、外から感染リスクを持ち込むことが心配だという両方の思いを感じています。

職員については、健康、家族の健康を心配しながらも責任をもって勤務してくれていることに感謝しています。介護職の体制は変えていません。そのため「自分が感染源となってしまったら」や「この緊張感はいつまで続くのか」といったストレスを抱えている職員も多いです。私たち自身が安心して職場で働くため、少しでも不安を取り除けるようしっかりと感染症対策をしていかなければならないと考えています。

 

新型コロナウイルス感染症拡大防止を図る状況下でサービスの量や質への影響はありましたか

矢島さん)特別養護老人ホームについては、介護サービスの内容に変更はありませんが、外部からのボランティアや法人内保育園との交流、外出行事を中止しています。また、法人全体で行うお祭りも中止にしましたので、ご利用者の楽しみが減ってしまい申し訳ないと思っています。

デイサービスについては、ボランティアやカラオケ、麻雀などのイベントを中止しています。その代わりに、ビンゴゲームやクイズ、イントロクイズ、音楽鑑賞、映画鑑賞など三密にならないように気をつけて、別のレクリエーションを楽しんでいただいています。

 

感染症対策として、取り組んでいることについて教えてください

矢島さん)日頃から、手指と机の消毒を行っています。また、年間を通して清掃担当職員が全館の手すりや床などを次亜塩素酸ナトリウム水溶液で消毒しています。そのほか、窓を開けたり、換気システム(ロスナイ換気)を使用した換気を行っています。

 

これに加えて、コロナウイルス感染症拡大以降は、

・検温(全ての入館者が入館時に行い、記録を取る。)

・マスクの着用(ご利用者、職員)

・体調管理票への記入(職員全員が出勤時に記入する。)

・可能な限り24時間換気

・面会の中止

・館内の消毒の徹底(一日数回、各階ごとに消毒を実施する。職員のみが使用するところも行う。)

・全階事務スペースに遮蔽ビニールを設置(休憩室も)

・休憩室の分散

など、考え付く限り、できることは全て実行しています。

デイサービスについても同じ対応です。ご利用者にはご利用のない日も含めて毎朝の検温を必ずお願いしています。また、送迎時にも職員が玄関先で検温します。また、送迎車内の座席の間隔の確保、送迎ごとの消毒、換気を行っています。

 

こうした工夫を導入した当初は職員から「新型コロナウイルス対策が厳しい」などの反応もありましたが、自分や自分の身の回りの人を守ることになることを説明し、毎日すすめています。また、ご利用への対応に個人差がないよう、基準を設けたり、チェックシートを作成し、活用しています

 

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う「緊急事態宣言」等を受け、新たに取り組んだことはありますか

矢島さん)セミナーやミーティングをオンライン開催できるアプリケーションである「ZOOM」を用いてご家族とのオンライン面会を実施しています。実施にあたっての日程調整は、イベント予約サイトである「peatix」を採用しています。

 

<peatixを用いた日時の調整方法>

1.あらかじめお便りでオンライン面会が始まることをご家族に伝える。(「peatix」と「ZOOM」の利用方法に関するプリントも同封)

2.施設が「peatix」でアカウントを作成し、面会予約のページを作成する。

3.施設が面会可能日を入力する。ご家族に予約ページの公開日をアナウンスし、公開日になるとご家族が面会の予約を入れる。

4.ご予約時にご家族より入力していただいたメールアドレスに、当日の指定した時間のみ有効なZOOMのURLを施設から送る。

5.当日はご家族とご利用者双方が「ZOOM」にアクセスし、面会を行う。

 

準備期間の間はほとんどご家族からの問い合わせはなく、とてもスムーズに行えています。

 

オンライン面会に至った経緯について教えてください

矢島さん)ご利用者が面会できない状況が続き、とても心苦しく思っていました。オンライン面会を実施している施設があるという情報を聞き、ご利用者が少しでも笑顔になるよう、実施することとしました。

しかし、職員体制や日程の調整が必要であることから、自由にオンライン面会ができる環境ではありませんでした。特に日程調整に関しては、お便りなどでお知らせした場合、一斉に予約が入り電話対応に追われることが予想されていました。オンライン面会を実施するためには、ご家族との日程調整をいかにスムーズに行うかが課題だと思いました。

ご家族、職員双方の負担を減らしながらスムーズに日時調整を行う方法を考えた結果、「peatix」を採用するという方法にたどり着きました。「peatix」は以前職員が中心となって開催した地域の認知症啓発イベントで使用したことがあったため、スムーズに活用できました。

 

オンライン面会の効果や反響はありましたか

矢島さん)ご利用者には大変喜んでいただいています。なかには泣きながら、ご家族が映るモニターに手を振る方や、モニターを触られる方もいらっしゃいます。また、人数制限がなく、場所を選ばずどこからでも参加できるので、普段面会することができない遠方に住むご利用者のお孫さんなどからも参加いただくことがありました。オンライン面会だからこそできたことだと思います。

面会時は職員も喜んで参加させていただいています。いつもご利用者のそばにいる職員が隣に座ってサポートしたり、ご家族からの質問に答えています。ご家族、ご利用者の笑顔、喜びを間近で感じることができ、とても良い経験となっています。またご利用者へ貢献できているという達成感にもつながっていると感じています。

 

 

 

 

オンライン面会の様子

 

今後の取組みなど、考えていることがあれば教えてください

矢島さん)しばらくの間は状況を見ながらこのオンライン面会の取組みを継続していこうと考えています。また、職員に対しては、会場を分散し「ZOOM」を使用した法人内会議や内部研修も始まりつつあります。この機会に業務を見直し、スマート化をすすめているところです。

 

今後は、フェイスシールドを使用した入浴介助を実践する予定です。気温が高い夏場にマスクを着用しての入浴介助は、職員の体調に影響する可能性があるからです。フェイスシールドが入荷し次第、実行する予定です。そのほか、特別養護老人ホームやデイサービス、ケアハウスなどでご利用者の楽しみが減っている現状が今後も続くようであれば、ボランティアのオンライン参加や保育園とのオンライン交流などを行っていきたいと考えています。

 

 

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