東京ボランティア・市民活動センター
新型コロナウイルスと ボランティア・市民活動 ~居場所活動団体、ボランティア・市民活動センターへの緊急アンケート結果から~
掲載日:2020年7月8日
2020年6・7月号 NOW

 

あらまし

  • 新型コロナウイルスの感染拡大の影響はさまざまなところにおよび、現在も状況が日々変わっています。
    ボランティア・市民活動においても、活動をこれまでどおりに行えなくなり一時的に休止・縮小したり、活動の方法を変更したり、一方で新たに生じるニーズをキャッチし取り組んでいる状況もあります。
    東京ボランティア・市民活動センターでは、新型コロナウイルスの感染が急速に拡大していた中、ボランティア・市民活動団体の対応状況を把握するために令和2年4月に対象別に5つのアンケート調査を実施しました。
    その中で、居場所活動団体と、活動団体を支援する都内区市町村ボランティア・市民活動センターへのアンケート調査結果を中心にご紹介します。

 

新型コロナウイルス対応に関する対象別の5つのアンケート調査は、4月10日から24日にかけて回答期間をそれぞれ1週間設け、緊急に行いました。この時期は、緊急事態宣言後、ほとんどの公共施設の利用が制限され、地域のイベントや行事、会合などが中止・延期されていました。

 

調査内容は、活動や事業の実施状況に加え、感染防止対策、利用者等に対する新たな取組み、周辺地域の生活上の課題、団体の運営や事業上の課題、今後予想される課題や方向性などです。調査結果は、次のURLからご覧いただけます。

 

「居場所活動団体向けアンケート調査結果報告書」より

活動中止・縮小しながらやり方の工夫・新たな取組みも

地域で居場所づくり活動を行う団体への調査には、区市町村ボランティア・市民活動センターなどの協力もあり、154団体から回答がありました。(このアンケート調査では社会福祉協議会が直接的に運営するサロンは対象としていません。)

 

9割以上の団体が活動を中止・縮小しながらも、3割近くが新たな取組みを行っていました。また、開催時間を短縮して活動日数を増やしたり、メール、電話、オンラインなどによりつながりを保つ工夫をしている団体もありました。

 

運営については、それほど不安はないという回答もありましたが、利用者の心身を心配しているという団体が多く見受けられました。

 

[居場所の主な利用対象者]
回答した団体が開く居場所の主な利用対象者は「誰でも」が半数以上(53・2%)、乳幼児・親子(42・2%)、高齢者(35・0%)、小学生(29・2%)、障害者(28・5%)です。【図1】

 

 

[居場所の活動状況]
調査時点での活動状況を尋ねたところ、9割超の居場所団体が「活動を縮小した(中止、時間制限・利用制限など)」と回答しました。その中でも「全面的に活動を中止した」という回答が多数を占めました。「一部の機能を中止した」という団体からは、(1)イベントの中止、(2)食事提供の中止、(3)個別対応は継続、という回答がありました。

 

「やり方を工夫して実施している」という団体の回答には、(1)お弁当の配布、(2)電話・メール等で連絡、(3)WEB会議ツールを使用して実施、(4)登録者のみ予約制で実施、(5)時間短縮、(6)人数制限、(7)屋外で実施、(8)感染防止対策の強化など、さまざまな工夫が見られました。

 

[居場所を実施する際の感染防止対策]
居場所を実施する際の感染防止対策として、8割超が「定期的な換気」、8割弱が「消毒液の設置」「体調が悪い方は控えて頂く」、7割が「スペースの確保・人との距離を空ける」「利用者のマスクの着用」という対応を実施。「その他」では、「手洗い」と「検温」などの回答がありました。【図2】

 

 

[新たな取組み]
自粛対応に伴い生活に影響を受けた利用者に対する新たな取組みを「行っている」と回答した団体は約3割で、さまざまな手段で連絡を取り合う取組みが見られました。具体的には、(1)WEBでの居場所開催、(2)SNSでのつながりづくり、(3)電話・メールでの安否確認・状況確認、(4)はがき・手紙の送付などの回答でした。

 

また、情報発信を強化している団体も複数あり、多かったのは(1)情報誌を発行、(2)WEBサイトで情報発信というものです。

 

必要なものを配布するという回答もあり、(1)お弁当やお菓子の配布、(2)マスクの配布のほか、フードパントリーなどの取組みがあげられました。
その他、(1)開催日数を増やす、(2)訪問活動をする、(3)利用者作品を紹介するネットショップの立ち上げ、(4)利用者が使えるスマートフォンのレンタル、(5)集まれない代わりに(公園で子どもを連れた親に)積極的に声掛けするなどの回答もありました。

 

[参考事例集の作成]
アンケート調査の回答をもとに東京ボランティア・市民活動センターでは事例調査を行い「新型コロナの中などでのボランティア・市民活動 参考事例集」をまとめました。この中では、持病のある高齢者など居場所に姿が見えなくなり気になる人へ「体調はどうですか?」「どう過ごされてますか?」と電話で声掛けをする、高齢者にも多く利用されているLINEのオープンチャット機能や、Zoomミーティングを使って、オンライン上のグループでおしゃべりできる場をつくる、「こんな時だからできる楽しいアイディア」を募集する手紙をマスクの手作りキットとスタッフ手作りのきれいな小箱と共に子どもに届けるなどの事例を紹介しています。また、誰でも集まれる形は中止にしつつも、家に大人がいないために食事が十分にとれない子どもや学童に登録していない子どもなどに対象を限定し、時間帯をお昼に絞って活動を続けている子ども食堂などの工夫も取り上げました。

新型コロナの中でのボランティア・市民活動参考事例集ホームページ
https://www.tvac.or.jp/corona/jireisyu/

 

利用者のストレス・不安を受けとめながらも再開・活動維持に課題と不安が

 

居場所の運営者が利用者から相談を受けたり耳にしたのは、「不安・閉塞感・ストレス」についてです。具体的には、(1)外出制限による閉塞感、(2)感染リスクに伴う不安、(3)人と対面できないことによる孤立のストレス、(4)話し相手の不在によるストレスといった内容です。また、行く場所がないという相談では(1)日中過ごす場所がない、(2)暇を持て余す、(3)悩みを一人で抱え続ける辛さ、といった内容が見られました。

 

また、子どもに関する懸念として、(1)勉強の遅れ、(2)体力の低下、(3)生活リズムの乱れ、(4)遊び場所がないことによる体力・ストレスの発散不足、(5)学校給食がないことによる食生活の乱れ、栄養不足、(6)乳児の行き場がない、(7)休校・休園による不登校児への悪循環、などの相談が活動団体に寄せられていることが分かりました。高齢者に関しては、(1)運動不足による身体機能の衰え、(2)孤立による会話能力の低下、認知症の進行、(3)生活管理、体調管理(命に関わる場合も)についてがあげられました。また、家庭内に関することについては、(1)子どもと過ごす時間の増加による母親の肉体的・精神的な負担の増加、夫婦仲の悪化、(2)DV・虐待の悪化、(3)障害児を家族だけで支え続けることへの心配、といった相談があるとの回答がありました。

 

さらに、収入などの生活面の不安として寄せられている相談内容では、(1)休校・休園による仕事の制限、支出の増加、(2)減収、失業といった回答がありました。その他には、(1)居場所の活動縮小・休止による不便さ、(2)感染予防・感染した場合への不安についての相談などもみられました。

 

[団体の運営面の課題]
団体の運営面の課題としては、7割超が「活動再開の時期の判断が難しい」と回答。半数の団体が「今年度の活動計画を立てられない」と続きます。この状況下で「メンバーと十分に話し合えない」「この時期にできる活動が見つからない」との回答も3割以上にのぼりました。【図3】

 

 

[今後想定される課題]
今後想定される課題では、(1)運営資金の不安、(2)今年度の活動の予定が立たない、(3)再開時期の目途が立たない、(4)再開時に居場所団体としてどこまで対応できるか、(5)これを機に活動を終了するかどうか、という声があがりました。
再開時の不安としては、(1)利用者がこれまでのように継続参加してくれるか、(2)感染防止対策ができるか不安がある、という回答がありました。また、長引く自粛によって、再開時にスタッフのモチベーションが維持できるかやボランティアが減少しないか、などの不安もあがりました。

 

都内区市町村ボランティア・市民活動センター向け「第2回新型コロナウイルス対応に関する緊急アンケート」調査結果より

7割が閉館せず相談事業などを継続、新型コロナの影響に関連する相談が多数

 

居場所活動団体への緊急アンケート調査と同時期に行った、都内の区市町村ボランティア・市民活動センター(以下、センター)への「第2回新型コロナウイルス対応に関する緊急アンケート」(1回目は3月31日実施)では、46団体から回答を得ました。(回答率約54%)

 

[センターの開館状況や利用制限など]

開館状況については、19か所のセンターが「閉館対応は行っていない」、13か所が「センターの一部閉館(土日など)」と回答。完全に閉館したのは7か所でした。【図4】

 

一方で、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、9割のセンターが「会議室・活動室等の利用中止」と「センター主催のイベントの中止」をし、7割の団体が「フリースペース、作業室・印刷機の利用中止」と「センター主催の会議中止」をしていました。

 

相談事業については、メール・電話対応は継続、個別対応は実施しつつ、手続きは郵送で対応するなど極力対面しない形で相談を継続しているという回答がありました。

 

 

 

[相談対応の事例]
さまざまな団体や個人からセンターに寄せられている相談の内容を尋ねたところ、「活動団体への支援をしたい」「新型コロナ関連でボランティアをしたい」など、支援活動に関する相談が多く寄せられていることが分かりました。

 

他にも、困りごとの相談では、「話し相手が欲しい」という希望や「マスクを寄付してもらえないか」という施設からの依頼、「低額のお弁当宅配をしてくれる団体を知りたい」というものなど、新型コロナウイルス感染拡大の状況下に関連する相談が多いという回答もありました。

 

NPO・ボランティアグループの運営相談では、総会の開催方法、今後の運営資金に対する不安などがあがりました。居場所活動団体へのアンケート調査の回答と同様に、団体からの活動の再開や再開後の不安も見受けられました。

 

[ボランティア・市民活動の工夫]
さまざまな活動団体が地域において、取組みを工夫しながら活動を継続している事例もセンターから寄せられました。例えば、電話やオンラインなどを使用しての安否確認、動画・オンラインによる活動の情報発信、切手の整理や発送作業など自宅でできるボランティア、屋内活動を屋外で行う、会食から配食への切り替えなどの事例がありました。

 

感染拡大の状況に対応して新たに取り組んでいる活動として、「フードドライブを始めた」「テイクアウトできる店のマップを作成」「まちの飲食店への財政支援」などがあげられました。困りごとが広範におよんでいるため、地域の中でこれまで関わりが少なかった人たちへの支援活動や新しく活動に参加する人も増えています。

 

センターとして今後考えられることとしては、「自粛対応で生活に困る方へのニーズが増える」という回答のほか、ボランティア活動者に対しては「長期間活動がないことからモチベーションの低下がおきるのでは」との危惧する声がありました。一方で、「団体がさまざまな工夫で活動を継続する姿を見て、センタースタッフとして市民の姿に勇気づけられた」「いまは(センターが)知恵を絞る時期だ」という声も寄せられました。

 

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誰もが経験したことのない状況の中、つながること、つながりをつくることを大切にしてきたボランティア・市民活動も、つながりを切らずに紡いでいくために、活動団体、ボランティア・市民活動センターと多様な人の力で、知恵を絞り、工夫しあって取り組むことの必要性と可能性がアンケートの回答に寄せられていました。

取材先
名称
東京ボランティア・市民活動センター
概要
東京ボランティア・市民活動センター
https://www.tvac.or.jp/
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