特定非営利活動法人わくわくかん 就労移行支援事業・就労定着支援事業 リボーンプロジェクト 精神保健福祉士 藤井晴太郎さん
共に生きていく社会をつくりたい
掲載日:2020年8月20日
2020年8月号 福祉のおしごと通信

藤井晴太郎さん

 

あらまし

  • 特定非営利活動法人わくわくかんの就労移行支援・就労定着支援事業「リボーンプロジェクト」で精神保健福祉士として働く藤井晴太郎さん。お仕事の中でのこれまで、そしてこれからについてお話しいただきました。

 

ボランティアをきっかけに

大学では、福祉・心理を専攻しました。当初は自分の中の生きづらさから、心理に興味がありました。ボランティア活動で精神障害の方の就労継続支援事業所に関わったことがきっかけで「自分もこういうところで働きたい」と思うようになりました。

 

就労継続支援A型事業所で学んだ「共に生き、共に働く」ということ

現法人に就職し、これまで就労移行支援事業所、就労継続支援A型事業所、相談支援事業所、グループホーム、ホームヘルプ事業と異動し経験を重ねてきました。

 

大きかったのは、就労継続支援A型支援事業所での経験で、これが今の自分の核となっています。そこでは事業として高齢者宅への配食サービスを行っていましたが、自分より利用者の方が仕事の経験もありスキルも高く、私は利用者からダメ出しや指導を受けていました。「利用者から仕事のサポートを求められているわけでもない。自分の存在は何なのだろう」と悩みました。

 

けれど徐々に、利用者が抱える生きづらさが見えてきました。病状の波などで余裕がなくなってきた時は様子が分かります。通院同行などを助けながら、一方、配食の仕事では自分が助けてもらう、困ったときは助け合う「おたがいさま」の形が実感できました。支援する・されるの関係ではなく、働く仲間だから当然のこととして共にできることを補い合うという関係、これが「対等」ということなのだ、そして、法人のめざす「共に生き、共に働く」ということなのだ、と腑に落ちました。

 

相談支援事業所で「当事者を取り巻く環境」を知った

その後は相談支援事業所に異動しました。そこで感じたのは、思っていたよりもサービスは使いやすいものではないということです。自治体により利用量などの差もあります。また関わる支援者が多い場合などには、時として、支援者に本人の意向が違う方向に引っ張られかねない危険性もあることを知りました。支援者はそのことを十分認識して注意する必要があります。グループホームでは、犯罪歴がある方の受入れなどを通じて、本当に困っている人が福祉分野にさえ受け入れられづらい現実などを目の当たりにしました。就労継続支援A型事業所にいたときには実感できていなかったことです。いつかソーシャルアクションにつながるような取組みをしていきたいと思います。

 

同じ目線で考えたい

利用者との関わりで「自分と同じだな」と思うことも多くあります。実は、私は高校を中退し、一時期、人と関わらない時期がありました。そのため、同じような状況にある当事者の精神状態は想像できます。私の場合はその後、音楽活動を通じていろいろな人と出会い、学びたいと思えたことで、進学を決めました。いろいろな立場に置かれている人達と同じ目線に立ち、助けになりたいと思います。

 

今は、就労移行支援事業所にいます。利用者は2年間の中で訓練を受け就労をめざします。通過施設とはいえ、ここにいる間も人生です。嫌な思い出はつくってほしくありません。心地よさと厳しさとのバランスを重視しています。また自分の病状を自分で見立てられるように、一人ひとりに情報はオープンにするように心がけています。

 

共に生きていく社会をつくりたい

今、新規事業を立ち上げるチームの一員として議論をしています。法人のミッションである「共に生き、共に働く町づくり」、そしてもっと先の「共に生きていく社会」をめざしています。団地の空き店舗を「働く場や居場所に」とか「居住支援関係の取組みを」など、わくわくするアイデアがあがっています。法人内だけではなく、地域団体などと一緒に議論をしており、刺激を受けます。外の団体との交流も法人が後押ししてくれています。

 

初めの頃は悩んだこともありましたが、その経験を経て、今の自分があります。これから福祉の仕事をめざす方、あるいは仕事に就いたばかりの方は、最初は、よく理解できないことも多いと思います。それでも、先入観を捨て、しばらく続けていくことで、おもしろいこと、自分のやりたいこと、情熱を傾けられるものが見えてくると思います。ぜひ、しばらく続けてみることをお勧めします。

 

プロフィール

  • 藤井晴太郎さん Fujii Seitaro
    特定非営利活動法人わくわくかん
  • 就労移行支援事業・就労定着支援事業 リボーンプロジェクト 精神保健福祉士
取材先
名称
特定非営利活動法人わくわくかん 就労移行支援事業・就労定着支援事業 リボーンプロジェクト 精神保健福祉士 藤井晴太郎さん
概要
特定非営利活動法人わくわくかん
https://wakuwakukan.net/
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