(社福)松栄福祉会
緊急事態宣言発出後の地域公益活動~社会福祉法人松栄福祉会「みんなのカフェ メリ・メロ」の取組みより~
掲載日:2020年9月1日
2020年8月号 TOPICS

「みんなのカフェ メリ・メロ」の入口

 

新型コロナウイルス感染拡大に伴う地域公益活動の状況把握調査

東京都地域公益活動推進協議会(以下、推進協)では「新型コロナウイルス感染拡大に伴う地域公益活動の状況把握調査」を実施しました。この調査は、推進協の会員法人(社協を除く)を対象とした「社会福祉法人向け調査」と、社会福祉法人の区市町村ネットワーク事務局(社協等)を対象とした「区市町村ネットワーク向け調査」に分けて、Webフォームを通じて行ったものです。(※1)

 

調査のうち、「社会福祉法人向け調査」は、実施期間を令和2年5月22日~6月4日とし、配布数240法人のうち、119法人からの回答を得ました。(回収率:約50%)

 

119法人のうち96法人が地域公益活動を実施していると回答。そのうち、緊急事態宣言発出後の地域公益活動の実施状況について「当面中止している事業がある」が82法人、「感染対策に留意して実施している事業がある」が28法人、「活動方法を見直し、対応している事業がある」が12法人、「新たな活動を実施している」が2法人でした(複数回答可)。また、創意工夫している地域公益活動としては、カフェやサロンを中止した代わりに食事や広報誌を届ける活動等に切り替えたり、マスク等の資源を配布する取組み等を行っているという回答も見られました。
その他に、地域公益活動を中止したことによる参加者・対象者への影響や、地域の新たな課題とそれに対して地域公益活動としてできること、できそうなことについても回答を得ています。

 

今号では、調査で寄せられた回答の中から、社会福祉法人松栄福祉会の「みんなのカフェ メリ・メロ」の取組みをご紹介いたします。

 

※1 調査結果については推進協のホームページよりご覧になれます。
https://www.tcsw.tvac.or.jp/koueki/

 

「みんなのカフェ メリ・メロ」の取組み

羽村市で2つの保育園を運営する社会福祉法人松栄福祉会では、平成30年5月にJR青梅線小作駅前で、子育て中の方や高齢の方など地域の住民が交流できる場として「みんなのカフェ メリ・メロ(以下、メリ・メロ)」をオープンしました。”メリ・メロ”はフランス語で”ごちゃ混ぜ”という意味で、世代や立場を超えて、皆がカフェに来て一息つける居心地の良い空間にしたいという思いが込められています。

 

 

「みんなのカフェ メリ・メロ」外観、テラス席

 

 

「みんなのカフェ メリ・メロ」の店内

 

メリ・メロでは主に、日替わりのランチを500円、おにぎりやワッフル等の軽食を300円で提供しています。近所の子育て中の方や高齢の方が多く訪れ、子ども向けのお話会などのイベントも定期的に開催しています。また、店内にはレンタルボックスがあり、地域の方が手作りしたアクセサリー等を展示・販売できる場にもなっています。

 

 

 

日替わりのランチ、ワッフル

 

 

イベント開催時の様子

 

レンタルボックス

 

取組みを始めた経緯について、同法人 統括園長の橋本富明さんは「平成28年の社会福祉法改正において地域公益活動の実施が責務となった。さらに、平成31年に法人が40周年の節目を迎えるにあたり『地域に何かできることはないか』と模索していた」と話します。そのような中、駅前の空き店舗を安価で借りられたため、活動拠点を確保することができました。そして、どんなことをするか職員で話し合いを重ね、カフェを始めることにしました。

 

メリ・メロでは、2つの保育園の保育士が交代でホール係を担当しています。保育士が接客をすることで、お客さんの「子どもが夜寝ない」などの悩みを聞いたり、手遊びを教えたりしています。調理については管理栄養士に委託しています。そのため、栄養管理がしっかりした食事を提供できるだけでなく、離乳食や、高齢者の糖尿病等の食事の相談にも乗ることもできます。身近な地域で子育てや栄養面などの相談ができることが、保育園を運営する法人が取り組むカフェだからこその特徴です。

 

夕食支援のお弁当販売を実施

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、メリ・メロは令和2年3月から休業しました。お客さんに子連れの方が多く、特に子どもは”3密”を避けることが難しいため、休業の判断をしました。学校の一斉休校に伴い、一般の飲食店が昼食支援としてお弁当を販売するところも多くあったため、メリ・メロでは夕食支援として3月17日よりお弁当販売を実施しました。3月中は、保育士に負担がかからないよう、橋本さんと2人の管理栄養士で対応しました。3人の日程が合い、販売可能な日に行うこととしたため、定期的に実施することはできませんでした。また、どのような販売状況になるか全く予想できない中で始めたため、日々のお客さんの状況を見ながら販売計画を立てていきました。しかし、お弁当について「いつ販売するのか」という問合せや要望が多くなり、4月からは保育士も加わり、火・水・木の定期販売を開始しました。

 

  

夕食支援で販売したお弁当

 

平常時のランチは20食のところ、お弁当は60食を販売しました。共働きの家庭も少なくないため、夕食のお弁当は好評でした。管理栄養士の式地亜矢さんは「お弁当はスーパーやコンビニでも買える。しかし、メリ・メロのお弁当は管理栄養士がメニューを考えているところに選んでもらえる理由がある。一斉休校となり、保護者は不安になり疲れてしまったと思う。そんなときに栄養バランスのよいお弁当が買えるという安心感をもってもらえたのではないだろうか」と話します。

 

コロナ禍においてのお弁当販売実施の裏には、他にもさまざまな努力がありました。もともと食材を仕入れていたネットスーパーが休止してしまったため、スタッフが直接お店を回り食材を調達しました。また、アルコール消毒液やマスクが不足することが心配されましたが、在庫でどうにかまかなうことができました。調理の際に頭にかぶるヘアキャップは入手困難となり、洗って再利用し乗り切りました。お弁当販売時には、お客さんにはアルコール消毒とソーシャルディスタンスを保っていただくようお願いしました。そして、ただ販売するだけでなく、健康豆知識を載せた紙を手渡したり、お弁当のレシピを紹介したりするなどの細やかな対応も行いました。

 

以前はLINE@と店頭のチラシだけで広報していましたが、5月にはホームページとFacebookを開始し、さらに口コミで情報が広まりました。当初は1食400円で販売、その後300円に値下げし、6月には「羽村市テイクアウト推進支援事業(※2)」での補助も受けられたため、半額の150円で提供しました。半額にしたところ、反響が大きく問い合わせが相次ぎました。遠くから買いに来る人もいて、お弁当をきっかけにメリ・メロを知ったという方も増えました。その一方で、いつも買いに来てくれるご近所の方が売切れで買えなくなってしまうということも起こり課題が残りました。

 

また、「ひとり暮らしの私にはちょうどいい量」と言って購入していく高齢の方がいたり、一人でお弁当を買いにくる子どもの姿があるなど、お弁当販売を通じて地域の実情が垣間見えることもありました。

 

コロナ禍において、地域の中で気軽に立ち寄って話したり相談できる場所がなくなり、スタッフの保育士から「カフェに来ていたあの親子はどうしているかな」と心配する声が聞かれました。また、お弁当購入者向けにアンケートをとり、緊急事態宣言中に困ったことや欲しかったものなどについて聞いたところ、”人とのつながりや交流”をあげる回答が目立ち、カフェの再開を心待ちにしているという声もありました。

 

※2 羽村市内登録店舗が提供するテイクアウトメニュー(1店舗2品まで)の販売価格の1/2を上限10万円で補助。(令和2年6月30日終了)

 

カフェの再開とこれからについて

 

カフェの再開に向け衛生管理研修を実施

 

緊急事態宣言期間が明け、6月末でお弁当販売は終了し、7月7日にメリ・メロは営業を再開しました。再開にあたり、日本フードサービス協会が示すガイドラインに基づき対策を行い、スタッフの衛生研修も実施しました。お客さんには入店時の検温、アルコール消毒、マスク着用、連絡先の記入などをお願いしています。また、座席数を制限したため席の予約もできるようにしています。

 

今後について、式地さんは「メリ・メロが地域に周知されてきた矢先に休業となった。さらに多くの人に取組みを知ってもらいたいが、何よりも通常に戻ってほしい」と言います。また、橋本さんは「これからどのような状況になるかはわからないが、まずは目の前の課題に取り組み、日々のお客さんの声を叶えていきたい」と話します。

 

スタッフのみなさん(平成30年6月撮影)

取材先
名称
(社福)松栄福祉会
概要
(社福)松栄福祉会
https://www.hamura-matsunoki.ed.jp/

みんなのカフェ メリ・メロ
https://cafemerimero.amebaownd.com/
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