世田谷区福祉人材育成・研修センター
体験を通じて、子どもたちに福祉の魅力を伝える~世田谷区福祉人材育成・研修センター「夏休み介護体験」~
掲載日:2020年11月17日
2020年11月号 トピックス

世田谷区福祉人材育成・研修センター職員の皆さん

 

令和2年4月、「世田谷区福祉人材育成・研修センター」(運営:世田谷区社会福祉事業団)が、小田急線梅ヶ丘駅近くに新たに整備された「世田谷区立保健医療福祉総合プラザ」内に移転しました。
同センターでは、世田谷区内の総合的な福祉人材対策推進のため、福祉人材の発掘・育成、定着支援、調査・研究等の事業を実施しています。平成19年のセンター開設当初より、高齢・介護分野を主な対象としてきましたが、今年度から障害分野や子ども・子育て分野、保健医療連携にも拡大しています。
現在、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」)の感染防止のため、例年の事業手法を見直しながら、事業展開しています。特に、センターの中心的事業である福祉従事者向けの各種研修は、新たにWEBも活用した形で実施しています。日時・会場が決まった集合型研修よりも、事業の都合に合わせて参加しやすいことから、例年より参加者数が増え、受講生の評価も上々です。

 

センターが入る、世田谷区立保健医療福祉総合プラザ

 

次世代に向け、福祉の理解促進に力を入れる

センターの事業の枠組みの一つに「福祉の理解」促進があります。直接的な人材確保・育成だけでなく、区民に福祉の仕事の魅力を伝え、広く理解を促すことも重視しています。

 

中でも、子どもの頃のボランティア活動や福祉に関係するポジティブな体験が、将来の職業選択の際、福祉の仕事を選ぶきっかけにもつながる可能性があることから、次世代を担う子どもを対象とした事業にも力を入れています。これまで、小中学校等への福祉の出前出張講座を実施してきました。

 

令和元年度には、世田谷区内の特別養護老人ホーム20か所の協力で、小学3~6年生とその保護者向けの「夏休み親子介護施設体験」を初めて実施しました。センターでは企画、周知、申込み受付、体験先の調整等を行い、各施設がプログラムを用意し、約200人の参加がありました。

 

当日、施設では、参加した子どもと保護者に対し、施設の概要、職員の仕事や利用者の生活を紹介するとともに、専門的な介護技術や施設内に備える福祉機器の体験等を提供しました。

 

センター長の瓜生律子さんは「各施設が工夫を凝らして参加者を迎えてくれた。子どもたちからは『雰囲気が明るくて施設のイメージが変わった』『機械浴の設備に驚いた』等の感想があった。現場だからこそ得られる体験が提供できたと思う」と振り返ります。

 

なお、昨年度は3月にも、春休みの高校生を対象に「高校生介護施設バスツアー」を予定していましたが、新型コロナの感染拡大の影響でやむなく中止しました。

 

小学生親子・中学生・高校生を対象とした「夏休み介護体験」

令和2年度は、新型コロナの影響を受け、特に学校生活等において、見学や外出など、子どもたちのさまざまな体験型の学習が制限されています。また、感染防止のため、福祉施設でも面会や見学、ボランティアの受入れができない状況にあります。

 

そこで、今年度の「夏休み介護体験」は、子どもたちが実体験できる場や機会を提供するとともに、新たなセンターの紹介も兼ね、感染予防策を講じた上で、センターを会場に実施することとしました。

 

対象は小学3~6年生とその保護者、中学生、高校生とし、年代別に受講日を設定しました。区内の全小中学校と8つの高校、公共施設等にチラシを配布して周知しました。8月中の7日間で全14回開催し、430人を超える申込みがあり、346人が参加しました。

 

当日のプログラムは、講義と体験の2部構成です。昨年度、各施設が趣向を凝らして実施した内容を参考に、介護の資格を持つセンター職員たちの創意工夫で、独自のプログラムとテキストを作成し、実施しました。

 

参加者は、世田谷区内の福祉関連の状況について説明を受けた上で、区内特養の協力で作成された施設内の様子や福祉機器(特殊浴槽やICT機器)の紹介、職員の仕事のやりがいの話などの動画を視聴しました。その後、車いす体験、介護ベッド体験、高齢者疑似体験を行いました。体験後は修了証が授与され、一瞬だけマスクを外して参加者全員で記念撮影を行いました。

 

参加者のアンケートでは、「車いすは道路で乗ったら前にすすみにくいだろうと思った」「介護ベッドは、介護する方とされる方、両方にいいと分かった」「身近にいる人(おじいちゃん、おばあちゃん)の目線になれた」「将来、介護の人になりたい」などの声がありました。小学生と一緒に参加した保護者からも「子どもが楽しんで福祉について学べた」「さまざまな人にとって暮らしやすい社会となるよう自分にできることを考えたい」等の感想がありました。将来の福祉現場での就職を考えた高校生もいたそうです。

 

今回の体験に参加した子どもたちは、さまざまな身体状況にある人の生活に想像をめぐらすとともに、介護技術や福祉機器の意義や働きを実感できたようです。また、小学生と参加した保護者にとっても、福祉に対する理解や関心がすすんだ様子が見られました。

 

来年度について瓜生さんは「コロナ禍が収まり、各施設で子どもたちが、高齢者や職員との交流ができることを願っている」と言います。新型コロナの状況に応じ、実施方法を工夫する予定です。

 

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「夏休み介護体験」当日の様子

 

修了後の記念撮影
(小学生親子の回)

 

令和2年度は「福祉の仕事の魅力向上・発信」が調査・研修のテーマ

今年度はセンターとして「福祉の仕事の魅力向上・発信」をテーマに、取組みをすすめています。

 

センターが今年度実施した区内55か所の高齢・障害の事業所へのヒアリング調査では、「福祉の仕事の魅力向上・発信に必要なこと」として「将来を担う子ども世代への理解促進」(61・8%)、次いで「区民への理解促進」(45・5%)、ほか「高校生介護施設体験」「子育て終了、定年退職後の方への働きかけ」「福祉のしごと相談・面接会、出前講座」(各30・9%)の回答がありました。

 

瓜生さんは「福祉の仕事は、未だ『誰でもできる』『3K』のイメージが持たれている。現場の職員がやりがいや魅力を発信し、専門的な知識や技術に基づく仕事であり、また、人間の尊厳や生活の質を支える社会的に価値のある仕事であることをアピールする必要がある。併せて日常的な学びや研修等でサービスの質の向上を目指すことが重要。そのことを経営層にも伝えていきたい。それが中長期的に見て、福祉人材の確保につながっていく」と、サービスの質の向上と福祉の魅力を発信する必要性を語ります。

 

今後もセンターでは、コロナ禍においても実現可能な形をさぐりながら、研修や福祉の魅力の発信、理解促進につながる取組みをすすめます。

 

取材先
名称
世田谷区福祉人材育成・研修センター
概要
世田谷区福祉人材育成・研修センター
https://www.setagaya-jinzai.jp/
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