(社福)大島社協、(社福)椿の里 大島老人ホーム
大島土石流災害から2年 ~今だから大切な福祉~
掲載日:2017年12月18日
ブックレット番号:- 事例番号:51
東京都大島町/平成27年11月現在

 

土石流災害の教訓をふまえた取組み―大島老人ホーム

2年前の土石流災害では、大島老人ホームは都内で初めて福祉避難所を設置して要配慮者を受入れました。これまで大島では、災害時に開設する福祉避難所は大島老人ホームと町の2か所でしたが、現在は新たに町の施設がもう1つ指定されています。

避難指示や勧告が発令された場合、要配慮者は町の施設に避難します。そして、専門的な支援が必要な方を大島老人ホームで受入れる流れです。大島老人ホームでは、ショートステイ枠やデイサービスを縮小しての受入れを検討しています。

 

大島老人ホーム施設長の藤田竹盛さんは、「2年前の教訓をふまえ、町と連携を密にして体制づくりをすすめている」と話します。まずは、町と締結している「災害時配慮者の避難支援等の協力に関する協定書」を見直しました。要配慮者の範囲は、要支援・要介護に加え、一人暮らし高齢者及び高齢者のみ世帯を追加しました。また、町の施設が福祉避難所になった場合においても、車両要請があれば送迎の応援を行うことにしています。大島では車椅子対応の車両は少なく、要配慮者の状態を把握している法人職員が対応した方が安心なためです。実際に26年2月に大雨により避難勧告が発令された際にも、事前に町から大島老人ホームに連絡が入り、要配慮者を福祉避難所へ送迎しました。そして、福祉避難所の運営については、町が看護師や介護員、ボランティアの確保を行うよう取り決めています。

 

町で唯一の大島老人ホーム。施設長の藤田竹盛さん

 

命を守るための備え

2年前の土石流災害では、大島老人ホームの機械室の排水溝から水が逆流し床上浸水しました。その時の教訓をふまえ、町の補助により大型の非常用発電設備を設置し、施設予算で自動排水設備を設置しました。藤田さんは「電気が使えなくなると、照明、ポンプ、冷暖房、トイレ、エレベーター等の全てが使えなくなる。利用者の安全、福祉避難所で受入れた要配慮者の命を守ることが施設の使命」と話します。

備蓄品の変更も行いました。これまで、3日間の朝・昼・晩の食事は、それぞれ別のものを確保していました。災害時の食糧は ”その場をしのぐためのもの“と見直し、食のレパートリーを減らし、3日分の備蓄を5日間分に増やし、保管場所を2か所とし、米は300キロを確保しています。

 

また、土石流災害を想定した訓練を実施しています。山側から流れてくる土石流から逃れるため、山側の棟の利用者を海側の棟に避難させ、防火扉と土嚢で流入を防ぎ、山側の居室の掃き出しを開放し土石流を流すようにしました。それ以外にも、災害時は自宅へ帰ることが難しくなるため、2~3日分の着替えをロッカーに保管するようにし、泊まり込み訓練や連絡網訓練も実施しています。藤田さんは「災害時に幹部職員が不安になると職員に不安が伝わってしまう。そして、利用者の生活も不安定になる。皆が落ち着いて行動できるよう冷静な対応と心構えが必要」と指摘しました。

 

災害時には燃料が続く限り自動で施設全体に電気を供給する非常用発電設備

 

要配慮者の情報を町と共有

大島町地域包括支援センターでは、要介護・要支援認定者、独居高齢者、高齢世帯等の避難時に必要な援助(歩行状態、移動手段、排泄状況、認知症の状態)について、ケアマネジャーや介護事業者、社協、民生児童委員等と連携しながら、情報収集しています。集めた情報をもとに名簿を作成し、町担当課と実際の避難方法について協議しています。災害に備え、早め早めに住民に情報提供するように心がけています。

大災害から2年を迎えた大島は、島民の力に支えられながら復興にむかっています。その中で、住民に寄り添い、住民の命を守るため、今だからこそ福祉の力が求められています。

 

 

取材先
名称
(社福)大島社協、(社福)椿の里 大島老人ホーム
概要
(社福)大島社会福祉協議会
http://oshima.tokyoislands-shakyo.com/

(社福)椿の里
http://care-net.biz/13/tubakinosato/
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