向台町地域包括支援センター(運営:(社福)東京聖新会)
外出自粛中の地域の高齢者とのつながりを緊密に
掲載日:2020年12月15日
2020年12月号 連載

西東京市にある向台町地域包括支援センターは、市からの委託を受け社会福祉法人東京聖新会が運営しています。同じ建物には、入所施設である「特別養護老人ホームフローラ田無」と医療スタッフやリハビリスタッフが常駐する「老人保健施設ハートフル田無」があり、さらに訪問看護や訪問リハビリといった事業も行っています。

 

「施設」サービスと「在宅」サービスを同一建物で行っているため、新型コロナウイルス感染症への対応も、施設の内側と外側の両面から備えています。

 

法人全体の取組み

新型コロナウイルス感染症が拡大しだした2月、法人として「COVID-19対応指針」を定め、「個人」「各事業所」「法人全体」の三段階での対応を明確にしました。(※図1参照)この指針は感染症の状況の変化に応じて適宜見直しをしながら、常に全ての職員が共有しています。

 

さらに4月には、建物全体を「ZONE分け」して、各事業の職員と利用者が他の事業の職員・利用者と空間を共有することのないように、工夫しながら動線を分けました。建物に入る際の玄関も事業ごとに厳密に分けて、裏口や非常口を活用し、そこからそれぞれの事業スペースへの移動ルートも定めました。他事業からの感染を予防し、ウイルスを「持ち込まない」「蔓延させない」ための取組みを法人全体で徹底しています。

 

 

【図2:参考】コロナウィルスと疑われる熱発時の対応プロセス フローチャート

 

【写真1】施設内の床に「ZONE分け」の表示をしています。

      ピンクゾーンとグリーンゾーンに色分けして表示し、施設内の空間を区分しています。

 

サテライト事務所の設置による職員体制の確保

向台町地域包括支援センターでは、緊急事態宣言が出てすぐに、職員の出勤は最小限にとどめて運営することになりました。向台町地域包括支援センターは職員が6名ですが、事務所内で密を避けるため、当面の間、交代で3名の出勤と3名は自宅待機をすることとなりました。

 

利用者宅への訪問は原則自粛とし、もっぱら電話で連絡を取ることに専念しました。出勤職員が聞き取った様子を、その後全員で情報共有するためには、多くの時間と労力が必要でした。そんな時に、事務所の目の前にあるスポーツセンターの空きスペースを借りられることになり、4月になって、すぐ隣の建物にサテライト事務所を作ることが出来ました。

 

サテライト(支所)をすぐ近くに設け、そこに3名分の職員が就業するスペースを作れたことで、密にならずに事務所とサテライトで常時6名の職員が勤務することができ、コロナ禍での事業運営体制を確保できました。

 

これまで以上にこまめに利用者へ電話で連絡をとるようにして、さらに、向台町地域包括支援センター独自の【むこなみ新聞】の臨時号を発行し、利用者宅1000戸以上に戸別配布をしたり、FM西東京の『みんなおいでよ! 東京聖新会!!』というラジオ番組への出演も活用して情報発信に努めました。

 

外出自粛の中だからこそ利用者とのつながりをより緊密にしよう、と意識して取組みを重ねていきました。

 

【写真2】「みんなおいでよ!東京聖新会!!」FM西東京(84.2MHz)

毎月第2月曜日12:15~12:45 収録後の様子です。

 

認知症カフェの休止と再開

この間、公民館や施設のスペースを活用して行っていた認知症カフェも介護予防体操教室もすべて中止です。多くの高齢者が外出自粛の状態になってしまい、地域の方たちと顔を合わせる機会が減りました。

 

外出自粛が続く中、家族と過ごす時間が長くなることで、本人や家族のストレス等によるさまざまな問題が顕在化してきて、都度対応が求められるようにもなりました。

 

地域包括支援センター相談員で法人の地域連携室長の尾形剛弥さんは、「あらためて、認知症カフェ等のサロン活動の役割の大きさを実感した。そうした場があることで、地域の高齢者に社会参加の促しをすることができた。利用者本人だけでなく家族やボランティアからも、認知症カフェや介護予防体操教室を早く再開してほしい、と声が上がってきた」と話します。

 

そこで、9月に入りコロナ感染症が少し落ち着いたタイミングで、認知症カフェを一回だけ、人数制限をして開催することとしました。

 

尾形さんは、「久しぶりに会う利用者やボランティアさんからは、皆さんに久々に会えて本当に良かった、と喜んでもらえた。一方で、コロナウイルスが終息しない中での参加には不安がある、との意見もいただいている。今は参加者の安心・安全確保のために何ができるか、自治会やボランティアとの協働による各地域での少人数開催等も検討していきたい」と話します。

 

コロナ禍での地域包括支援センター

一人の利用者をその地域の社会資源で支えていくことが「地域包括ケア」であり、地域包括支援センターには利用者支援を通して地域の安心と安全を維持する役割があります。自宅で体調が悪くなった利用者の様子を確認するため、保健所の指導を受けながら迅速に万全の準備で訪問する等、利用者支援と安心・安全確保のための活動は継続しています。

 

突然のコロナ禍で、これまでの手順やマニュアル通りに進めることが困難な場面が数多くありましたが、センター長の近藤崇之さんは、「電話連絡しかできなくても、職員一人ひとりが【情報】共有の大切さを理解している。【情報】は地域の血液。正しく適切に循環させることで地域包括支援センターは機能停止することなく役割を果たせているのだと思う」と話します。

 

 

感染リスクと共存する新しいスタンダードを模索

また、「これからは、職員の手と声だけでなくICTの活用による健康管理を取り入れるなど、感染リスクと共存する新しいスタンダードを模索することも必要だと考える」と、今後の課題を見据えています。

取材先
名称
向台町地域包括支援センター(運営:(社福)東京聖新会)
概要
(社福)東京聖新会
http://tokyo-seishinkai.or.jp/
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