舟渡小あいキッズ(運営:NPO法人シンフォニア)
子どもと深く関わることを 続ける
掲載日:2021年1月26日
2021年1月号 連載

距離をとりながら、外でお弁当を食べました

 

「あいキッズ」について

板橋区放課後対策事業「あいキッズ」は区内の小学生を対象に、授業終了後、各学校内で楽しく安全に過ごすことのできる放課後の居場所を提供する事業で、区内全51区立小学校で実施しています。文部科学省の全児童を対象とする「放課後子ども教室事業」と厚生労働省の就労家庭等の児童を対象とする「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)」とを一体に運営しています。

 

あいキッズの利用は対象者別に登録制となっています。全児童を対象とした「さんさんタイム一般」と、保護者の就労要件等に該当する1~2年生で出席および帰宅時間の管理を希望する児童を対象とする「さんさんタイムオレンジ」は17時まで(冬季は16時半まで)利用できる無料区分です。有料区分の「きらきらタイム」は保護者が就労要件等で家庭が留守となる1~6年生を対象となり最大19時まで利用できます。

 

NPO法人シンフォニアでは、板橋区より「舟渡小あいキッズ」を受託し運営しています。舟渡小あいキッズでは、通常時、下校してから30分~1時間は宿題や本を読んだりする時間を設け、その後部屋遊びの時間となります。上級生の授業が終わると校庭が使えるので、夏は17時まで、冬は16時半までが外遊びをし、そのあとに補食を食べます。18時までは児童のみで帰ることができるため、17時半と18時に集団で帰宅します。

 

また、職員が指導役となり、学習支援活動や、野球やサッカー等のスポーツ、折り紙、お絵かき、ボードゲームやトランプ等のゲームクラブなどの活動を実施しています。その他に、区が推進する地域サポーター事業(※)として、読み聞かせや工作教室等の活動に地域の方がボランティアで協力しています。

 

新型コロナの影響が出る以前は、舟渡小あいキッズには全ての区分の児童を合わせて170名利用する日もありました。

 

(※)「地域の子どもは地域が育てる」という『いたばし学び支援プラン』の理念に基づく

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kyoikuiinkai/houshin/vision/index.html

 

左)NPO法人シンフォニア 理事長 山下真由美さん

右)舟渡小あいキッズ 責任者 太田幸一さん

 

「あいキッズ」の利用制限

新型コロナへの対策については板橋区の指示に従って対応しました。同法人では緊急事態宣言が出た場合でも継続して勤務できるかどうかの確認を事前に行ったところ、勤務できないという職員がいなかったため体制を維持することができました。

 

令和2年3月以降の一斉休校に伴い、あいキッズは朝から開所することとなりましたが、区の方針により利用に制限がかかり、さんさんオレンジタイムの1・2年生、きらきらタイムの1・2年生、要支援児等特別に配慮が必要な児童のみの利用となりました。4月からは、きらきらタイムの新3年生も利用できることとなり、利用条件を満たした20人程度が舟渡小あいキッズに来ていました。責任者の太田幸一さんは「4月は入学式を迎える前の新一年生も利用する。例年であれば3月に実施する新入生保護者会もできなかったため、そのまま4月1日を迎え、保護者も不安に思いながら子どもを連れてくるという状況だった。しかし、少人数の利用であったため職員がしっかりと関わることができたこともあり、子どもたちは落ち着いて過ごしていた」と振り返ります。

 

クラブや学習支援活動、地域サポーター事業は中止となりました。また、あいキッズ内でもできる限り“密”を避ける必要があったため、卓上の仕切りを手作りするなど工夫しました。アルコールなどの対策物品はストックでまかなうことができました。感染対策については、子どもたちも手洗いうがいについてさまざまな場面で言われていたため、違和感なく徹底することができました。

 

卓上の仕切りを手作りするなどして感染対策を行っています

 

子どもたちは、なるべく“密”にならないようにしながら、休校中に学校から出された課題に取り組むなどして過ごしました。太田さんは「不安の中で子どもたちが過ごすので、少しでも安心して楽しんでもらうという役割があると感じた。感染対策をしながら小さなイベントを工夫して実施したり、外でブルーシートを敷いてお弁当を食べたりもした」と話します。

 

職員も交代で在宅勤務を行いました。在宅勤務中には、講習の動画を視聴や事務作業、次の日に行う折り紙などのプログラムの練習をするなどしました。同法人理事長の山下真由美さんは「在宅勤務では普段の業務時間内ではできないことができ、職員のスキルアップにつながり、子どもたちに提供できるものの幅が広がった。子どもたちがどうしたら安心してもらえるか、楽しんでもらえるか職員一人ひとりが考える機会にもなった」と話します。

 

職員が在宅勤務で折り紙など練習し、プログラムに幅ができました

 

学校が再開してから

6月1日から分散登校が始まり、6月22日から学校が全面的に再開しました。あいキッズについては、6月22日からさんさんオレンジタイムの1・2年生ときらきらタイムの1~6年生が利用できることとなり、舟渡小あいキッズは70名程度が利用するようになりました。しかし、現在(12月4日取材時点)でもさんさんタイム一般の児童の利用再開には至っていません。

 

「3月に利用制限がかかってからずっと利用していなかった子に久々にあって、背がとても伸びたことに驚いた。それだけ長く会っていなかったということを実感した。また、クラス替えがあった学年もあったため、学校が再開してから友達関係が変わったり、悩んだりする子もいた。例年なら4月にある光景が6月に後ろ倒しになった印象」と太田さんは言います。

 

コロナ禍で工夫してクラブやイベントを実施していったところ、子どもたちの活動にも変化が出てきました。例えば、大勢で野球をする代わりにキャッチボールを始めたところ今まで野球に参加したことのなかった子どもたちが参加し始めたり、“密”を避けながらできることを考えてバドミントンや卓球をやってみたところそれが活動として定着してきています。

 

また、保護者会が実施できないため、毎月のおたよりの中で子どもたちの様子を伝えています。山下さんは「コロナ禍で子どもたちがどう過ごしているかということは保護者の一番の関心事。おたよりに載せることで保護者に安心してもらえている。利用者アンケートでも概ね満足という結果であった」と話します。

 

深く関わることを続ける

山下さんは「コロナ禍ではできないこともあり大変なこともあったが、ネガティブなことだけではなく、職員がしっかりと子どもたちと関わったり、在宅勤務で日ごろできなかったことができたりというポジティブな部分もたくさんあった」と強調します。そして、太田さんは「この一年は子どもたちの成長が特によく見えた。今までは利用人数も多いため子どもたちへの関わりが浅く広くなりがちであったが、コロナ禍で利用人数が減り、より深く関われるようになった。それを利用制限が解除されていっても続けられている。さらに利用制限が解除されて利用人数が多くなった場合に、この深い関わりをどう維持し続けていくかがこれからの目標となる」と今後について話します。

取材先
名称
舟渡小あいキッズ(運営:NPO法人シンフォニア)
概要
NPO法人シンフォニア
https://sinfonia.life/philosophy/
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