(社福)新栄会 更生施設・宿所提供施設 ふじみ
日常生活を継続しながら感染症対策を追加する
掲載日:2021年2月12日
2021年2月号 連載

施設長 八木 武寛さん

 

更生施設について

更生施設は、心身上の理由から、一人では在宅生活が難しい生活保護受給者が入所し、生活指導や軽作業を通じて、在宅生活をめざすための施設です。都内には11か所あり、うち単身女性を対象とする施設は3か所です。社会福祉法人新栄会が運営する更生施設 ふじみ(以下、ふじみ)は、対象を単身女性、定員を50名としています。都内全域より措置された方が入所します。

 

入所される方の年代は10代から高齢の方まで幅広く、最近では精神科病院から地域生活に戻る前に更生施設に入り、在宅生活が可能か見極めるケースが多くあります。

 

利用者は、原則個室で生活します。エコたわしや雑巾づくり等の作業や、利用者が集まる月1回の懇談会、バス旅行や納涼祭等の行事が通常時は行われています。

 

職員は、施設長、事務員、相談員、看護師、栄養士、用務員に加え、ふじみでは夜勤補助員を雇用しています。

 

また、ふじみでは、宿所提供施設も併設し、母子を中心に入所しています。

 

非常事態時は日頃のつながりが大事

日頃の感染症対策として、インフルエンザなどの感染症にかかった方が生活できるように、特別室を用意しています。マスク、防護服、使い捨て手袋などは一通り揃えており、感染症マニュアルに従って対応します。更生施設は看護師が必置のため、感染症が発生すれば看護師を中心に対応することになっています。

 

令和2年2月の新型コロナの感染拡大以降は、従来のマニュアルとは別に、新型コロナ専用のマニュアルを作成しました。

 

感染対策等に関する情報は随時、東京都や東社協の更生福祉部会等から得ました。また、区内社会福祉法人連絡会が月1回開催され、リスク管理の方法や感染対策物品の調達ルートとして地域の業者の紹介等、種別を超えて情報共有しました。他にも3か月に一度の都内更生施設の施設長会では、議題に必ず新型コロナに関することがあがり、施設間で情報交換しました。

 

こうした他施設との情報交換について、施設長の八木武寛さんは「種別に関わらず、他の施設も同様の対策を行っていることがわかり、安心感を持てた。2月頃、業者からの感染対策物品の入荷が未定の中、社会福祉法人連絡会での情報提供や法人内での融通などにより、急場をしのげた。このような非常事態にこそ、日頃の付き合いが大事だと思った」と振り返ります。

 

 

行事はほぼ中止

新型コロナが流行し始めてからは、まず、手洗い、手指のアルコール消毒の徹底を伝えるための掲示物を玄関やエレベーターに貼り出しました。掲示物は難しい言葉や漢字を使わず、シンプルに伝えることを意識しました。また、利用者の懇談会では施設長から「感染症対策に注意していただきたい」と直接利用者に注意喚起したり、5月頃からは毎日の検温を始めたりするなど、感染症対策を強化しました。

 

月1回ほど行っていたバス旅行や料理教室等の行事は、ほとんど中止としました。その中でも規模を縮小し、工夫して行ったものもあります。例えば、納涼祭は本来中庭で出店を出していましたが、今年度は綿菓子やヨーヨーを渡すだけとしました。他にも、大道芸のパフォーマーを呼び、距離を取って鑑賞するなど、利用者の楽しみが減りすぎないよう職員が工夫しています。

 

行事が少なくなったことについて、利用者からは「寂しいわね」という声もありましたが、利用者は原則1年程度の利用のため、行事を行わない生活に違和感は少なく、逆に「職員がよくやってくれている」という声も多くあります。

 

作業室にはアルコールを置いています。

 

卓上の仕切りを設置し、感染対策を行っています。

 

緩やかにこれまでの生活を続ける

職員の出勤体制も工夫しました。3月から、日勤班と夜勤班の2班体制に分け、どちらかの班に感染者が出ても施設の運営が続けられるよう交代して出勤する体制をつくりました。

 

しかし、職員数が少ないことから業務がうまく回らず、身体的、精神的に負担が増えたなどの理由から、4月半ばでこの体制を終了しました。以降は、感染症対策をより徹底した上で、従来の体制で業務を行うことにしました。一部の職員からは、家族に感染させてしまう可能性から不安の声があがり、同時期に交代で自宅待機としました。

 

コロナ禍での施設の生活について、八木さんは「特別なことは何もしていないと言えるかもしれないが、繁華街に出かける人に『あなたの行動はここにいる全員に影響する』と伝えることもある。更生施設は利用者の生活の場。厳しく制限することと、それで溜まるストレスを考えた時、緩やかに制限するところはしながら、これまでの状態と変わらぬ生活を維持してもらう方が良いのではないかと考えた」と言います。

 

「緩やかに」という考え方は「緩やかに地域生活に移れるよう助言する」日頃の支援の姿勢に通ずるものがあります。「日頃から利用者には、朝早く起きてご飯を食べて夜寝るというリズムの整った生活をめざして、1つだけでもいいから助言する、支えることを意識している。『ほんのちょっと一緒に考えませんか?』という支援のスタンスに、新型コロナで気をつけてほしいことが加わっているイメージ」と話します。

 

今後について

「感染者が出たらどうしよう、という不安が絶えずある。しかし、私自身も含めて誰に聞いても完璧な感染対策は分かるものではない。トップダウンではなく、施設としての大きな方針を出しながら職員と共に頑張りたい」と八木さんは言います。

 

新型コロナの影響で、行事や業務が前年踏襲とはいかなくなる中、それらのやり方を見直すきっかけにもなったといいます。

 

「これまでは『職種ごとに職員がいるので、それぞれがその職種の範囲の仕事内容を分かっていれば良い』という雰囲気があった。しかし、自宅待機や班編成を考える中で、誰が出勤できなくなっても施設を継続するためには、人の仕事を“お節介する”必要があると気づいた」と言います。

 

また、オンライン化の流れを受けて、関係者会議や職員の研修、懇談会等の場面で、職員や利用者が使えるようタブレット端末を用意するなどの環境整備を急いでいます。

 

コロナ禍の中、福祉業界で働くことについて「新型コロナが感染拡大する中で、『人と関わる仕事をしていなければ』と不安に思う気持ちと、それでもこの仕事が好きだという気持ちの間で何度も揺れ動いている。他の施設の皆さんもきっと不安と戦いながら、ギリギリのところでやっていると思う」と八木さんは語ります。

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