北区社協権利擁護センター「あんしん北」職員の皆さん
(撮影当日、在宅勤務中の方も画面上で参加)
地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業。以下、地権事業※1)は、認知症高齢者や知的障害者、精神障害者等で、一人で判断することが難しい方を対象に、契約に基づき福祉サービスの利用援助や日常的金銭管理等を行い、地域生活を支援する事業です。全国的に、社協等が実施しています。
東京都北区では、北区社協の権利擁護センター「あんしん北」(以下、あんしん北)で地権事業を実施しています。令和2年12月末時点の利用者(契約者)は44人です。
※1:地域福祉権利擁護事業は、全国的には「日常生活自立支援事業」の事業名で実施されている。東京では事業創設当時の「地域福祉権利擁護事業」の名称にて現在も事業を実施。
令和2年2月頃より支援調整を開始
地権事業では、「専門員」が相談やアセスメント、支援計画の作成、契約、モニタリング等を行います。契約後の支援計画に基づく利用者宅や金融機関等でのさまざまな手続き等の支援や助言は、「生活支援員」が行います。多くの場合、社協の募集に応じた地域住民の方が生活支援員として登録し、活動しています。
あんしん北では、2年2月頃より、高齢の方も多い生活支援員に、コロナ禍での活動継続の意向確認を行いました。支援の際、利用者宅へ訪問したり、金融機関等に同行するため、感染への不安から活動休止を希望する生活支援員もおり、意向に応じて個別に調整を図りました。
その後、2月中旬以降は、関係機関との会議や研修は全て中止としました。またこの頃は、特に衛生用品等の物品が手に入りづらかった時期ですが、非接触型体温計はインターネットで探して購入したり、相談窓口用のアクリルボードは職員が手作りするなどしました。各所で不足していたマスクについては、幸い住民や企業等から多くの寄附があり、支援の際にも大いに役立ちました。
3月25日からは国の施策として、全国の社協において、新型コロナの影響で減収や失業した方等を対象とする生活福祉資金の特例貸付が開始されました。北区社協にも相談や申請が殺到し、社協全体で対応しました。全部署からこの貸付の担当に常時職員を出し、また学校の一斉休校や、緊急事態宣言での要請を受け、職員が交代で在宅勤務も行う中、数か月間は、あんしん北に残る職員が、貸付の応援と並行して地権事業を行いました。
命を最優先に支援を一時休止・縮小
3月末、緊急事態宣言発出を見据え、地権事業の東京での実施主体である東社協は、地権事業について「必要不可欠な支援は確実に継続することを前提に、可能な範囲で支援の縮小や効率化、一時休止等を検討」するよう各社協に通知しました※2。
あんしん北では同様の方針で事前調整をすすめており、利用者の持つ力や福祉サービスの利用状況、家族の状況等を考慮し、個別に当面の対応を決めました。例えば、あんしん北で通帳を預かっている場合は一旦返して本人管理としたり、一度に払い戻す生活費を増額した上で、訪問回数を減らすなどとしました※3。
あんしん北センター長の飯野加代子さんは、「区内では大半の福祉サービスが継続されたこともあり、この時点では利用者と生活支援員の感染を防ぎ、命を守ることを最優先に、原則として一定期間、支援を休止することを前提に対応を決めた」と言います。利用者へは担当専門員から丁寧に説明や相談を行い、理解を得ていきました。
4月からは生活支援員の活動を全面休止しました。春に新たな生活支援員を登録したものの、通常開催する研修や説明会が中止となり、活動の機会も持てない方もいたことから、「ニュースレター」を発行し、生活支援員に随時情報を伝えるよう工夫しました。
利用者への訪問ができない中でも、専門員は定期的に本人や家族へ電話したり、ケアマネジャーや利用者の日中の通所先の事業所へ見守りの依頼等を行うなどし、生活状況の把握に努めました。
※2:東社協からは令和2年2月25日以降、随時、通知「地域福祉権利擁護事業における新型コロナウイルスへの対応について」を都内各社協に発出。この時点の通知は第2弾(2年3月26日発出)。3年1月13日現在で計5回発出。
※3:利用者一人ひとりの状況に応じて、「月何回何曜日に、A銀行のB口座より何円を代理で払い戻す」等の支援計画を作成し、契約している。通帳紛失等が懸念される方等の場合、社協にて通帳を預かる計画とする場合もある。
感染予防に配慮して事業を再開
5月末の緊急事態宣言解除後は、都や東社協の方針等を参考に、北区社協の各部署で作成した「事業再開計画」や「ロードマップ」に基づき、フェーズに応じて事業を段階的に再開し、利用者の支援を行いました。
8月には特別定額給付金の給付手続き等を中心に支援し、9月には生活支援員の活動を全面的に再開し、通常の支援に戻すことができました。
生活支援員の活動再開にあたり、新たに、感染予防に配慮した支援のためのマニュアルを作成し、支援時に使用する消毒液や手袋、カバンの下に敷くシート等を入れた「感染予防セット」を生活支援員に配付し、感染予防に配慮した支援を行っています。
生活支援員が支援時に使用する「感染予防セット」
主任の田村佳奈子さんは「非常事態の中で支援休止や縮小への心配は大きかったが、これまでは自力での通帳や生活費の管理は難しいと見立てていた方が、数か月間、ご自身で対応された例もあった。利用者の持つ力や支援内容を改めて見直す機会にもなった」と言います。
感染予防を徹底して研修会等を開催
あんしん北では、地権事業に加え、北区内での成年後見制度の利用支援、区民や関係機関等への両制度の普及啓発等の役割も担っています。
6月までは関係機関からの相談も一時、減少しましたが、7月頃からは地権事業の新規利用に関する相談が増加しています。また、飯野さんは「コロナ禍で不安が高まり、特に自粛期間中に自身の将来や今後のことを考えた方も多かったようで、成年後見制度の利用についての相談者も増えている」と言います。
10月以降は、研修会や講座も、実施方法を工夫し再開しています。内容や対象者に応じ、オンラインでの講座等も始めました。会場での開催の場合は、事前申込みを必須とし、開催前に参加にあたっての注意事項とヘルスチェックシートを送り、記入と当日の持参を必須とするなど、感染防止を徹底しています。開催の都度工夫を重ね、現在は、受付時点で参加者と座席を記録し、仮に開催後に発症者や濃厚接触者であったことが判明した場合も、その方の周囲の参加者を特定できるようにしています。
講座開催時の講師周辺の様子
(参加者との間にアクリルボードを設置)
講座開催時の座席の様子
(参加者ごとの席番号を受付で記録)
飯野さんは「北区社協全体が『コロナ禍でも区民・利用者のためにできることを考え実行する』というスタンスでいる。コロナ禍での事業実施に必要なオンライン環境なども組織として整え、職員も新たな形で事業を実行するためのアイディアを出しやすい状況にある。3年1月に2度目の緊急事態宣言が出た中ではあるが、今後もこの姿勢で取り組んでいきたい」と話します。
https://kitashakyo.or.jp/shokai/anshinkita/