南相馬市・飯舘村地域自立支援協議会災害部会
福祉避難所を機能させるための 災害時要配慮者支援センター構想
掲載日:2018年3月26日
ブックレット番号:6 事例番号:53
福島県南相馬市/平成29年3月現在

 

関係者の議論をかさねて福祉避難所のあり方を提言

「南相馬市障がい者計画・障がい福祉計画」に基づく南相馬市・飯舘村地域自立支援協議会では、平成24年5月から同協議会に「災害対策部会」を設置し、東日本大震災での経験をふまえた検証を行いました。その2か年の災害対策部会の部会長を務めたのが郡さん、副部会長を務めたのが佐藤さんです。月に1回のペースで開いた部会では、最初の半年間は障害福祉関係者以外のメンバーも加えながら、それぞれの立場から震災でお互いに経験したことを洗いざらい出し合い、課題を整理しました。事業所、社協、民生児童委員というそれぞれの立場からとにかく課題を出し合ったというこのプロセスは、重要な半年間だったといえます。そこで出てきた課題は次の4つの柱に整理されました。

 

1 福祉避難所の指定

2 要配慮者名簿の更新

3 避難のための「個別計画」の作成

4 情報発信、支援者の育成

 

こうした議論を経て、災害対策部会で協議・検証した結果をまとめた『福祉避難所の指定及び運営に関する提言書-災害時における要援護者の安心な生活を願って-(障害児者を中心とした検証)』を平成25年12月に市長へ提出しています。

福祉避難所については、福祉避難所に持たせたい機能や必要なことを議論の中で出し合い、それを一覧にしていきました。議論の過程では、民生児童委員、地域包括支援センター、仮設住宅の自治会長などからの意見も入れていきました。そして、障害種別や利用できる施設、資機材などハード面で何が必要かとともに、福祉避難所を有効に機能させていくためには、人的な体制というソフト面のあり方も考えていく必要性が指摘されました。

 

 

福祉避難所の指定

平成28年3月末現在、福島県内では51市町村で359施設の福祉避難所が指定されていますが、南相馬市ではその約1割にあたる32施設が指定されています。そのうち、高齢者福祉施設が68.8%、障害者福祉施設が31.3%です。

県内では、障害者福祉施設が福祉避難所の指定を受けているのは72施設ですが、南相馬市で10施設。これは、いわき市の26施設、須賀川市の14施設に次ぐ数となっています。東日本大震災で実際に障害者が被災したいわき市と南相馬市において、障害者福祉施設が福祉避難所の指定を受ける割合が高くなっています。

 

 

南相馬市では、前述の提言をふまえ、平成26年8月に市内の介護保険事業所、障害福祉事業所に対して「福祉避難所指定に関する意向調査」を実施しました。そして、9月に説明会を実施した上、同年12月17日に18法人31施設と「南相馬市災害発生時における福祉避難所の設置運営に関する協定」を締結しています。

郡さんの法人では、災害対策部会でも議論してきたので、意向調査にいち早く手を挙げました。その一方で、郡さんは「議論してきた関係者は福祉避難所の必要性を具体的に理解した上で手を挙げたが、その理解が十分に行き届いていたわけではない。各施設・事業所とも人材確保がままならない状況もあっただろう」と話します。そうした中でも最終的に32施設が指定を受けました。まずは指定を受けることから始まり、シミュレーションや訓練等を通じて理解を深めながら、実効性を高めていくことが重要となっています。

 

福祉避難所の「対象者」をどのように想定し、そのニーズに対応していくために、どれぐらいの人数の要配慮者を受け入れる用意が必要かは難しい課題です。南相馬市での福祉避難所のあり方の議論では、まずは学校などの一般避難所では個室やパーテーションのある「福祉避難室」を設けて、ある程度はそこで要配慮者にも対応できるようにすることを前提に、そこで難しい方のための「福祉避難所」という位置づけにしました。そのため、南相馬市の地域防災計画では「(一般)避難所における物理的障壁の除去」を位置づけ、「避難所として指定する施設は、障がい者や高齢者などの生活面での物理的障壁が除去され、ユニバーサルデザインへの配慮がなされている公的施設とすることを原則とするが、ユニバーサルデザイン化されていない避難所に要配慮者が避難した場合は、多目的トイレ、スロープ等の段差解消設備を速やかに設置できるようあらかじめ体制の整備に努めておくものとする。また、介助、援助を行うことができる部屋を別に設けるなど、要配慮者の尊厳を尊重できる環境を整備するよう努めるものとする」としています。その取組みがあった上で福祉避難所の指定を行う形になっています。

 

福祉避難所が必要となる数を考える際には障害者手帳の保持者の数なのか、また、避難するのは日ごろ利用している施設を原則とすべきなのか、近くて実際に知っている施設がよいのか、などが話し合われました。佐藤さんは「周知や訓練で避難所に対する理解を広げるとともに、障害のある人にも障害の特性に応じた避難先を選ぶ権利がある。だからこそ、指定とともに『要配慮者名簿の更新』と『避難の個別計画』を合わせてすすめていくことが必要になるのだと思う」と話します。経験に基づいた、福祉避難所のしくみだけで要配慮者支援が成り立つわけでないことの指摘です。

南相馬市内の指定福祉避難所32施設の施設種別の内訳は次ページの図のようになっています。通所型の施設も少なくありません。佐藤さんは「指定を受けている福祉避難所の『受入れ予定数の定義』を明確にしていかなければならない」と指摘します。その数が通常の利用者に上乗せした地域の要配慮者を受け入れる数なのか、通常の利用者までなのか。例えば、通所施設において通常の利用者をそのまま受け入れるという場合もあります。その意味合いは異なってきます。どのスペースでどのような形でどのような人を受け入れ、通常の利用者をどのように想定するのかを明確にすることが必要です。

 

 

取材先
名称
南相馬市・飯舘村地域自立支援協議会災害部会
概要
(社福)南相馬市社会福祉協議会
http://m-somashakyo.jp/
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