昭島荘 主任生活指導員の茂木貴之さん
あらまし
- 昭島荘は、昭島市にある生活保護法第38条に基づく保護施設です。救護施設は、心身に障害や疾病があり経済面も含めて、自立した日常生活を営むことが困難な利用者の健康で安心・安全な生活を支援する施設です。定員は100名で、現在(令和3年1月18日時点)96名が入所しており、男性の平均年齢は64.2歳、女性は69.1歳です。最年少は39歳、最高齢は91歳と、幅広い年齢層の利用者が生活しています。
◆感染症対策について
「昭島荘は入所施設のため、感染が発生すると集団感染(クラスター)のリスクが高く、インフルエンザやノロウイルス等の感染症対策は、以前から取り組んでいた」と、主任生活指導員の茂木貴之さんは話します。
手洗い・うがいの徹底や1日2回の館内消毒と伴に、冬場であれば換気の回数を増やし、利用者へマスク着用のお願いをしています。このほかにも、インフルエンザ等の感染症予防研修を職員向けに実施しました。
これらの対応に加え、一度目の緊急事態宣言が発出された令和2年4月からは、食堂は対面を避けるテーブル配置としました。また、一度に利用できる人数を制限し、食堂の前で配膳を待つ際は、利用者間のソーシャルディスタンスを保つため、テープを貼りました。そのほか、職員会議の少人数化(不参加者へは議事録回覧の徹底)、政府の要請に則して時差出勤・自宅待機者の対策等を講じています。
令和2年7月には、防護服「着脱方法研修」を全職員に実施し、さらに、新型コロナ陽性者発生に備え、委託している消毒業者と消毒手順等の検討を行いました。茂木さんは「建物の構造と利用者の障害等の特性を鑑み、陰性者と陽性者を分けること(ゾーニング)が困難である。その際にどこまで感染を防げるのかという不安はある。だからこそ、”感染しない””持ち込まない””感染させない”という気持ちで取り組んでいる」と話します。そのために、フェイスシールドや防護服、消毒液等の備品も用意しました。
看護師が講師となって行った職員全員対象の防護服「着脱方法研修」
◆行事・イベントを「やらない」よりも「何かできることを」
コンサートやお祭りなどの行事やクラブ活動は、一度目の緊急事態宣言を受けてほとんどを中止としました。茂木さんは「利用者に日常生活の外出や近隣の買い物の自粛要請で、不便をかけてしまったところはある」と振り返ります。続けて「コロナ禍だからといって何もしないのではなく、何かできることはないか考えた。そこで、移動水族館(※1)に応募したところ、幸運にも抽選が当たり、移動水族館が実現した」と話します。これを施設のイベントにしようと、模造紙や色紙を使って海の生き物をつくり、1か月間、施設内を装飾しました。「何もやらないよりも、できることをやることが施設も活気づき、利用者も楽しめる」と話します。
年末恒例の「年忘れ会(クリスマス会と忘年会を合わせたもの)」は食堂に大勢が集まるイベントのため、コロナ禍での実施は困難でしたが、仮装をした職員が利用者の居室に出向いて、個別にプレゼントをお渡しする形に変更しました。
茂木さんは「集まれないなら利用者の居室に行けばいいという発想で企画した。これに限らず“少しでも楽しいことができないか”という思いで、常に模索し続けている」と話します。
(※1)移動水族館:都立葛西臨海水族園が行う、来園が難しい方々のいる社会福祉施設等を対象に、海の生き物を専用のトラックで運ぶイベント。
模造紙や色紙を使って、施設内を装飾
都立葛西臨海水族園の移動水族館
◆安心・安全と自由のバランス
「コロナ禍で、制限の多い生活となり、利用者は外出の機会が減り、楽しみが少なくなり、そこを何とかしたいという思いがある。安心・安全の確保と、今までの生活と変わらない自由の線引きを意識するようになった」と茂木さんは振り返ります。
制限の多い生活の中で、「少しでも楽しくしよう、明るい気持ちになろう」と考え、ミニ花火大会や小さな縁日を企画し、日常の生活の中にちょっとした行事を盛り込みました。
「利用者の生活に楽しみやうるおい、刺激を提供するのも私たちの仕事だと思う」と話します。
感染症対策を講じた上で実施した小さな縁日
◆今までやってきたことを継続する
新型コロナの感染が拡大してから、制限の多い生活はずっと続いています。令和3年1月に二度目の緊急事態宣言が発出されましたが、大きく変わったことはありません。新たな感染症対策や生活様式を変更することで混乱してしまう利用者もいます。それを防ぐためにも、日常生活や外出等のルールを再確認し、改めて気を引き締めるようにしています。
カラオケや映画会などの活動は、アクリルボードを購入して飛沫を防ぎ、少人数で回数を増やして行うことで再開することができました。制限の多い中でも、物品を用意するなどの工夫により、実施できるよう取り組んでいます。
また、このような状況だからこそ、それぞれの趣味を活かした生活が、利用者の楽しみとなっています。塗り絵を楽しみ、セーターやマフラーを編み、職員(施設長)へのプレゼントもありました。
趣味の時間を活かし、編み物が得意な利用者がセーターを編みました。
少し大きかったですが、施設長はこの笑顔です。
◆今後に向けて
次年度の活動については、今まで行っていた行事をコロナ禍でも実施可能な企画にすることを検討中です。
また、茂木さんは「利用者の安心・安全を守った上で、新規の入所者をどう受け入れていくかは今後の課題である」と考えています。あわせて、さまざまな事情を抱える人を受け入れる”地域のセーフティネット”の役割があり、「コロナ禍で本人・家族、社会からのSOSにどう応えていくかが私たち救護施設の使命」と話します。
http://akisimasou.jp/