(社福)春和会 わんぱく乳児院
相手の思いを汲み取ることを大切に
掲載日:2021年4月21日
2021年4月号 福祉のおしごと通信

社会福祉法人 春和会 わんぱく乳児院

里親支援専門相談員 佐々木理恵子さん

 

あらまし

  • 社会福祉法人春和会 わんぱく乳児院で里親支援専門相談員として働く佐々木理恵子さんにお話を伺いました。

 

現在の仕事に出会うまで

私の小さい頃はとても消極的で、特にこれといってやりたいことがありませんでした。そんな中、親戚が集まった時に「小さい子はあなたに一番懐くね」と言われたことがあります。そこから、子どもと関わる仕事がしたいと思うようになりました。学校で保育士の資格を取得、卒業後は保育園に就職し、5年ほど働きました。ですが、園児の親御さんと関わる中で、まだ子育て経験のなかった自分の未熟さを感じ、転職を考えました。やりたいことは何か迷いましたが、漠然と「人の役に立つ仕事がしたい」という気持ちがあり、医療業界を考えました。保育士として働きながら医療事務の資格を取り、転職をして、小児科クリニックに20年ほど勤めました。病気の子どもを先生に診てもらうために来院する方がほとんどですが、その子の世話をする親御さんも身体的にも精神的にも大変です。そのような方に「寝られていますか?」などとちょっとした声かけをするようにしていると、子育てなどの相談をされるようになりました。自分自身も結婚、出産、子育てを経験したので、お話を聞く中で「子どもたちとその親の力になりたい」と思い、相談援助に興味を持ちました。そのため、働きながら社会福祉士の資格を取り、現在は里親支援専門相談員として乳児院で働いています。

 

乳児院は、さまざまな事情によって家庭で暮らせない0歳から就学前までの子どもたちが生活をする施設です。私は、施設にいる子どもたちが家庭的な環境で成長できるように、児童相談所などの機関と相談をしながら、里親との面会や交流を調整し、里親に委託をすることを手伝っています。地域の里親家庭も支援していて、定期的に様子を見に行ったり、子育てについての相談を受けたりしています。

 

悩んだ時は「どう乗り越えるか」を常に考えている

里親支援専門相談員として働き始めてまだ1年目なので、戸惑うこともあります。「子どもと里親の相性は良いのか」「このまま里親委託をすすめて良いのか」と悩むこともあります。その時は、一人で考え込むよりも、職場のいろいろな職種の人の考えを聞いたり、他の乳児院の里親支援専門相談員に子どもと里親の交流方法などを相談したりして、双方にとって良い方向で里親委託がすすむように調整しています。周りに相談することで、自分一人では1つしか思い浮かばない解決方法も2つ3つと出てきて、さらに、別の視点から自分では思いつかないようなことも見つけることができます。

 

相手の思いを汲み取ろうとしてきた

改めて振り返ると、小さい子どもたちが懐いてくれたのは、その当時は意識していませんでしたが、相手の思いを汲み取ろうとして接していたからではないかと思います。この部分は今も変わらず、これまでの仕事や現在にも通ずるところで、自分の基軸となっています。

 

子どもは自分が思ったことのすべてを上手に言葉にすることはできません。だからこそ「今何を求めているのか」といった相手の思いを汲み取ろうとすることを大切にしています。それは子どもと接する時に限ったことではなく、仕事をする上でも常に意識していることです。乳児院には、保育士や看護師、心理士や家庭支援専門相談員など、さまざまな職種や仕事内容があるので、一緒に仕事をしている人が今どんな気持ちなのかを考えるようにしています。子どもたちを含めて、人間関係は大切にしています。

 

里親制度を多くの人に知ってほしい

里親支援専門相談員は、頑張ったことがすぐに目に見えて出るわけではありませんが、とてもやりがいのある仕事です。乳児院内で子どもと里親が交流する様子を近くで見てきて、里親家庭に委託が決まった後に家庭訪問に行くと、子どもの顔つきがその家庭に馴染んでいるのが分かります。その瞬間に「委託をすすめてきて良かった」と感じます。

 

今後については、先のことかもしれませんが、里親と里子という関係が一般的になればいいなと思っています。家庭的な環境を必要とする子どもたちがいること、里親制度があることを多くの人に知ってほしいです。里親家庭が、一般家庭と同じような生活ができる社会になることを信じて、里親制度の啓発活動や仕事に取り組んでいきたいです。

取材先
名称
(社福)春和会 わんぱく乳児院
概要
(社福)春和会 わんぱく乳児院
https://wanpaku-infanthome.tums.jp/
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