葛飾区教育委員会生涯スポーツ課
ユニバーサルスポーツを通じて人と人との関係を築く
掲載日:2021年5月11日
2021年5月号 トピックス

(写真右から)
葛飾区教育委員会事務局生涯スポーツ課事業係
事業係長 張替 武雄 さん
主事 妹尾 舞 さん
主事 長井 緋香里 さん

 

あらまし

  • 東京都が令和3年2月に公表した「障害者のスポーツに関する意識調査」によると「障害のある都民(18歳以上)の週に1日以上のスポーツ実施率」は31・9%と、令和元年調査の37・0%から減少しました。東京都は「東京都スポーツ推進総合計画」(平成30年3月策定)において「令和3年までに40%」の達成指標を掲げています。現在も新型コロナの影響が続く中、東京都では障害がある方が安心してスポーツや運動ができるための取組み、また関心をもってもらうための取組みをすすめています。今号の「でたでたデータ」では本調査を取り上げています。
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  • 「トピックス」では、令和3年7月から東京オリンピック・パラリンピック大会の開催が予定される中、平成10年から障害者スポーツの普及啓発活動に取り組む葛飾区の実践を紹介します。

 

障害のある方にスポーツの機会を

葛飾区は、平成10年度から初級障害者スポーツ指導員(※1)養成講習会を実施しています。葛飾区教育委員会事務局生涯スポーツ課事業係長の張替武雄さんは「東京都障害者スポーツ協会(以下「都障協」)が実施していた講習会を区の事業として実施した。当時、自治体主催としては珍しい取組みだった」と話します。それまで、葛飾区内で実施していた障害者スポーツの振興事業は単発の水泳教室と、風船バレーや輪投げなどを楽しむ複数種目の教室のみで、都障協から指導員を派遣し、その指導員がスポーツ指導にあたる形をとっていました。張替さんは「年に数回の単発的な教室だったにも関わらず、障害のある方、そのご家族から好評だったと聞いている。それを受け、区として指導員を養成し、障害のある方のスポーツの機会を増やしたいと思ったのが取組み推進のきっかけ」と話します。

 

年間を通して教室を実施、指導員の活動の場としても

現在、多くの自治体が初級障害者スポーツ指導員養成講習会を主催しています。事業係主事の妹尾舞さんは「葛飾区では平成10年以来、毎年開催しており、多い時は15名程度の参加がある。令和2年度も、コロナ禍の中ではあったが、15名の参加があった。感染防止対策をしながら、より多くの方に参加していただけるよう、開催期間を短縮したり、内容を凝縮するなど、工夫した」と話します。受講者の年齢は幅広く、その背景には「もともと障害者スポーツに携わっていた」「定年を迎えたため、新たな活動の場としたい」などさまざまです。

 

現在、障害者スポーツ振興事業の一環で葛飾区が実施する障害者スポーツ事業は「ボッチャ教室」、「フロアホッケー教室」をはじめ、15教室あります。張替さんは「障害のある方が年間を通してさまざまなスポーツに取り組むことができるようスケジュールを組んでいる。また、活動の場が増えることで指導者の実践の場にもなり、指導者の育成にもつながっている」と話します。

 

このほか、葛飾区では38年前から区独自で「葛飾区公認スポーツ指導員」制度を導入しています。これは、スポーツ指導の専門的な技術や知識を有した指導員を養成し、地域住民の要望に応じてスポーツの機会を提供する制度です。前述の講習会を修了し、教育委員会の審査で適任と認められると、認定・登録という流れになります。この制度に、以前は障害者スポーツの種目は含まれていませんでしたが、平成26年度からボッチャ、平成28年度からフロアホッケーが追加されました。区で実施するボッチャ教室やフロアホッケー教室は、この制度で専門の資格を持つ方が指導にあたっています。

 

障害の有無にかかわらず一緒に楽しむ”ユニバーサルスポーツ”の推進

障害者スポーツ教室を開催するにあたっては、指導員をはじめ、葛飾区内のさまざまな運営団体が携わっています。その一つに30年以上前から障害の有無にかかわらずスポーツ活動を実践してきた「きさらぎジュニア」があります。区との関わりは、5年前に、区のスポーツセンターでフロアホッケーの全国大会が開催されたことからでした。以降、区内でもフロアホッケーを普及するきっかけとなり、現在まで関係が続いています。令和2年1月から実施している障害者スポーツ開放事業「のびのびユニスポ広場」は、きさらぎジュニアの関係者より「障害のある方が定期的に身体を動かす機会と場所がない」と要望があったことから開始された事業です。”ユニスポ”は、障害の有無にかかわらず誰もが一緒に参加し、活動を楽しめるスポーツ”ユニバーサルスポーツ”の略です。現在、毎週火曜日の16時~17時半の一時間半スポーツセンターを開放し、きさらぎジュニアのスタッフが運営主体となりフロアホッケーやボッチャなどの活動を実施しています。張替さんは「今は障害のある方の身体を動かす場として開放しているが、利用者が増え、事業が定着してきたら、障害の有無にかかわらず、一緒にスポーツを楽しめる場所にしていきたい」と話します。ユニバーサルスポーツは、区で実施する15の障害者スポーツ教室の中でも複数実施しており、区として広める取組みをすすめています。妹尾さんは「毎回、教室を楽しみにしてくださっている方がいる。特に昨年は”コロナ禍の中、外出が大幅に減ってしまったが、外に出るきっかけにもなった”という声が聞かれた」と話します。張替さんは「指導員の方からは”一緒に活動に取り組むことを通じて、障害のある方の理解がすすんだ”という声を聞く。回を重ねるごとに人と人とのつながりが深まっていることを実感する。今後も続けていきたい」と言います。

 

利用者、指導員、関係団体と共に活動を作り上げていく

活動を継続、発展させるためには、指導員の育成と場の提供だけでなく、利用者、特に必要とする方に情報を届けるしくみが必要です。葛飾区では、2年前から区内約40か所の障害福祉関係施設に対し次年度の障害者スポーツ教室の日程とチラシを配布しています。事業係主事の長井緋香里さんは「毎年2月の時期は、来年度の予定を組み始める時期。時間帯が合えば福祉施設の活動の一環として参加してくださることもあり、周知を始めてから教室全体の参加者が増えた」と話します。また、妹尾さんは「葛飾区が長く障害者スポーツの普及啓発活動に取り組むことができているのは、利用者、指導員の協力はもちろん、運営に携わる区内の関係団体の尽力があってこそ。今後は、団体同士の横の繋がりを深めていきたい」と話します。張替さんは「葛飾区は、東京パラリンピックブラインドサッカー日本代表の合宿地となることを契機として体験会なども予定している。体験会後は教室の活動に組み込むなど、今後も提供する内容を充実させたい」と話します。

 

(※1) 障害者のスポーツ参加のきっかけづくりを支援する指導員。健康や安全管理に配慮した指導を行い、スポーツの喜びや楽しさを伝える役割を担う(公財)日本障がい者スポーツ協会の認定資格。

 

フロアホッケーの活動の様子

取材先
名称
葛飾区教育委員会生涯スポーツ課
概要
葛飾区教育委員会生涯スポーツ課
https://www.city.katsushika.lg.jp/index.html
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