理事長 今裕司(こんひろし)さん(右)
施設長 私市真彦(きさいちまさひこ)さん(左)
あすなろみんなの家は、多摩地区西部のあきる野市で単独型の通所介護サービスを提供している事業所です。在宅で介護を必要とする高齢者の方たちに、生活リハビリや趣味活動、入浴・食事サービス等を提供しています。利用者の登録数は約100名、一日当たりの定員は40名で運営しています。同一敷地内と車で10分ほどの場所には、同法人が運営する2つの保育園があり、保育園の子どもたちとさまざまな年中行事等を通して世代を超えた交流や四季の変化に応じた日常を提供しています。利用者一人ひとりの気持ちを大切に、それぞれのペースで過ごしてもらえるよう心がけています。
【あすなろみんなの家】の外観
2階建て、単独型のデーサービスセンターです。
新型コロナ感染拡大時の初期対応
新型コロナが国内外で拡大していった令和2年2月から、社会福祉法人秋川あすなろ会では、全ての利用者と家族、職員に向けて、これまで以上にこまめに「お知らせ」や「お願い」の文書を発行しました。国からは、学校への休校要請、緊急事態宣言が出され、日々刻々と状況が変わり、さまざまな情報が錯綜する中、事業所や法人としてその時々で必要な判断と方針を示し続けました。利用者、家族、職員がばらばらに判断することによる不安の増幅を避けるためです。
事業継続可能かどうかを判断するために、子育て中や介護で出勤できない職員が何人くらいになるのか、職員全員を対象として緊急の調査も行いました。少人数の職員体制で何ができるか、自分たちの感染対策に問題はないか、専門家の助言を受けながら情報を精査し、その後のサービス提供の方針を共有するための情報発信を続けました。
サービスの変更をしながら事業継続
利用者への連絡の中で、可能な方には利用自粛のお願いをしました。さらに、送迎の乗車人数を減らして、便数を増やすなど多くの変更に取り組みました。利用者や職員が、個人では入手困難だったマスクや除菌アルコールを、事業所でまとめて数を確保するためにこまめな手配にも尽力する等、これまでとは違う動きも増えました。住宅地にある事業所であるため、風評に配慮して外出の機会を減らし、レクリエーションでお楽しみのカラオケはなし、保育園の子どもたちとの交流も中止しました。
利用を自粛している利用者の中には、センターでの食事を楽しみにしている方たちが大勢います。そのような利用者には、法人が行っている配食サービスを手配して自宅に食事を届けるようにしました。
利用控えから生じたさまざまな問題点
2年4月の緊急事態宣言後は、自粛のお願いをした事もあり、利用者、家族からの利用自粛の申し出も増えました。一日の利用者数はそれまでの60~70%となりましたが自粛の難しい方々の受け入れを続けながら事業を継続しました。利用控えが増える中、新たな問題点も生じました。施設長の私市真彦(きさいちまさひこ)さんは「利用者の方たちは利用控えと外出自粛により自宅で過ごす時間が増え、体力・筋力の低下と日常生活能力の低下が顕著になってしまった。また、日中、自宅で家族が介護することになり、家族の方たちの仕事にも影響が出た。自宅では入浴介助ができず入浴回数が減る、などの問題も出てきた」と話します。
この間の外出自粛は、利用者の方たちにとって身体的にも精神的にもよい影響は何一つなく、家の外に出て、他者との交流をすることが日常生活の中でとても重要な時間である、と再認識することになりました。
家族から「早く以前のようなペースで利用できるよう戻してほしい」との要望を受けて、必要な方にはサービス量を戻して提供してきました。
さらに私市さんは「我々の事業所では利用者数が減ったため、収入減少が続き、経営の悪化に直面している。規模の小さい事業所にとって、利用控え等による収入減の影響は大きい」と苦慮しています。
コロナ禍で在宅サービスが抱えているリスク
社会福祉法人秋川あすなろ会の理事長の今裕司(こんひろし)さんは、東社協の高齢者福祉施設協議会のセンター分科会長でもあり、その両方の立場から、コロナ禍で在宅サービスが抱えているリスクの大きさに警鐘を鳴らしています。「在宅で介護サービスを利用している方たちは、複数のサービスを組み合わせて生活している方が多くいる。こういう方たちが感染すると、場合によっては、いくつものサービスが同時に停止せざるを得なくなり、その地域の高齢者にとって深刻な状況になる。地域の在宅サービスの事業所が連携して、官民一体で感染症に関する情報共有のしくみと対策を考えることが急務」と話します。
大規模な法人・事業所では、職員が出勤できなくなった時には併設の事業所等からの応援で対応することが可能ですが、小規模法人や単独型のデイサービスではそのようなことは期待できません。
今さんは「福祉サービスの中でも、在宅系のサービスには小規模事業所が多いのが特徴。コロナ対応も事業所ごとに単独で行うには限界がある。特に小規模の在宅サービスの分野はコロナ対応に係る支援体制の構築が遅れている印象が強い。個々の事業所への支援だけでなく、地域単位で支援の仕組みが必要になっている」と話します、さらに、「今、このような状況だからこそ利用者と家族にとって、在宅介護サービスの継続はとても重要になっている。事業継続のために必要な支援を訴えていきたい」と対応の遅れを懸念しています。
午後のレクリエーションの様子
全員マスク着用で、各テーブルの上には感染予防のアクリル板があります。
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