こども食堂かくしょうじ 細川真彦さん
子どもにとっても大人にとっても大切な居場所でありたい
掲載日:2021年5月17日
2021年5月号 くらし今ひと

 

調布市にあるお寺、覚證寺では平成28年から「こども食堂かくしょうじ」を開いています。住職の細川真彦さんにお話を伺いました。

 

こども食堂を開いたきっかけ

平成23年に、息子の担任の先生が学習支援の活動場所を探していたので、本堂の下のホールを使ってもらうようになりました。その時に、妻がポテトや唐揚げなどの簡単な食事を出すと、子どもたちが大喜びで食べてくれて、その姿がとても印象に残りました。

 

その後、6年ほど続けていましたが、勉強しに来たり遊びに来たりする子どもたちを見ていて、学習支援以前に「みんなでご飯を食べる」などの家庭的な体験を増やす必要があるのではないかと感じ、「食堂のようなものができたら・・・」と思うようになりました。その頃、テレビでこども食堂のことを知り、調布市社会福祉協議会に地域福祉コーディネーターが配置された時に話をしてみたところ「ぜひやりましょう」と後押しをしてくださったのが、動き出したきっかけです。

 

当時のPTA関係者や民生児童委員、保護司の方、中高生向けの児童館のスタッフなど、地域の子どもに関わっている人たちに声をかけ、活動を始めました。その際「ひとり親家庭など、生活が大変な家庭をターゲット層にしつつ、誰もが気軽に来られる場所にしよう」とみんなで話し合いました。

 

コロナ禍での活動内容

月2回の開催で、1年目は毎回平均40人の子どもたちが来ました。その後、子ども同士の口コミなどで広まり、2年目、3年目には60人、80人と増えていき、多い時には100人を超える子どもとその親が来ていました。子どもたちにとっては、食事ができるというだけでなく、安心して友だちと遊べる楽しい場所だったのですが、新型コロナの影響で、会場で一緒に食事をする活動は休止せざるを得なくなりました。

 

小学校の一斉休校が始まった当初、お弁当を配った際には、情報を届けられず利用が少なかったので、LINEの公式アカウントをつくりました。今ではそれを上手く活用して、近所の飲食店と協力して食事券を配ったり、お弁当や食品を配るフードパントリーの活動を継続しています。

 

ただ、食事券の配布やフードパントリーだけだと、子どもの居場所にはなりません。そこでスタッフと相談をして、密を避けながら遊べる縁日などの遊び場も始めました。やはり子どもたちと実際に会えると嬉しいですし、様子も分かります。

 

食べ物を受け取った子に「美味しかった?」と後日聞くと「弟は食べたけど僕は食べていない」という答えが返ってきたことがありました。本当に大変な家庭への支援の届きづらさを痛感しました。

 

子どもも大人も交わる居場所

こども食堂では、さまざまな大人の自然な姿を、子どもたちに見せることができます。自分の親や学校の先生以外の大人と関わることのできる大切な場所です。さらに子どもだけではなく、大人のスタッフやボランティアの中高生、大学生にとっても居場所になっていると、実際に活動をしている中で感じています。スタッフやボランティア同士の新たなつながりが生まれ、彼らが刺激を与え合ったり、今までとは違った見方ができるようになったりすると思います。子どもと接することで大人側が元気をもらうことも多いです。

 

自分にできることを精いっぱい

今後については、いつか中高生の居場所をつくりたいと考えています。こども食堂は小学生が多く、賑やかなので、中高生には敬遠されてしまいます。また、小学生までを対象にした支援と比べると、中高生に対する支援は少ないのが現状です。「小学生が集まる日とは別の日の少し遅めの時間に、中高生がふらっと立ち寄れるカフェみたいなものができればいいな」と想像をしています。

 

今は、すでに活動していることだけで手いっぱいですが、自分に何ができるかを考え続けて、できることがあれば精いっぱい動きたいですし、何をするにしても楽しんで取り組む気持ちを忘れずにいたいです。

 

 

取材先
名称
こども食堂かくしょうじ 細川真彦さん
概要
こども食堂かくしょうじ
https://syokudou.kakushoji.or.jp/
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