(社福)武蔵野会 すぎな愛育園放課後等デイサービス事業所「こすもす」・「あみぃ」
コロナ禍でも、利用児が充実した余暇を過ごすために~社会福祉法人武蔵野会 すぎな愛育園放課後等デイサービス事業所「こすもす」・「あみぃ」(八王子市)~
掲載日:2021年6月16日
2021年6月号 連載

園長の野田久美子さん

 

 

主任の福見喬司さん

 

八王子市にあるすぎな愛育園は、障害児を抱える親の会の要望に応える形で八王子市の協力のもと、昭和55年に開設した障害児通所支援施設です。児童発達支援センター事業をはじめ、保育所等訪問支援事業、放課後等デイサービス事業など、幼児期から高校生まで、それぞれのライフステージに合わせた事業を展開しています。

 

放課後等デイサービス事業所「こすもす」では小学校に通う障害児を対象に、「あみぃ」では中学校から高等学校に通う障害児を対象に、授業終了後または休業日に、学校や家庭とは異なる時間、空間、人、体験等を通じて、個々の子どもの状況に応じた発達支援を行う児童福祉法に基づくサービスを行っています。

 

利用児が過ごしやすい環境を

「こすもす」と「あみぃ」では、利用児に対し、外出支援の後や、昼食、調理活動の前に手洗い、うがいを呼びかける等、平時から基本的な感染症対策を実施していました。

 

平時から使用している手洗いの掲示

 

新型コロナの感染拡大が広がり始めた令和2年2月下旬、政府より特別支援学校を含む全国一斉の臨時休校を要請する方針が示されました。休校要請に伴い「こすもす」では、特別支援学校への迎えから自宅への迎えに切り替えました。「あみぃ」では、午前中から開所する等、長期休暇時と同様の対応を取りました。また、外出支援、調理活動、ボランティアの受入れはすべて中止しました。「こすもす」「あみぃ」の責任者で主任の福見喬司さんは「『こすもす』は、日中を児童発達支援施設として使用しているため、開所時間を延ばすことができなかった。休校期間中、国の通知に基づいて、特別支援学校に登校できた(※)ケースもあるが、多くの家庭では、家族が仕事を調整して、家庭で児童と過ごしていた。これまでにない環境の変化に、利用児はもちろん、保護者も大きな不安と負担があったと思う。だからこそ、受入れ時には制限された活動の中でも、利用児が好きな活動を取り入れるなどし、安心して過ごせる環境づくりに配慮した」と振り返ります。

 

利用児と職員を守る取組み

2年4月、5月の一度目の「緊急事態宣言」期間中、自宅で過ごせる利用児は利用を自粛するよう呼びかけをしたため、一日の利用が通常の3~5割に減少しました。感染症対策については、手洗い、うがいの徹底に加え、利用前の検温や、マスクの着用など、以前よりも徹底するようにしました。また、保護者をはじめ、外部からの人の出入りを制限しました。福見さんは「中には感覚過敏があり、マスクの着用が難しい利用児もいる。体調管理を徹底することによりマスクが苦手な利用児にも安心して事業所を利用してもらっている」と話します。

 

職員に対しては、発熱が確認された場合、5日間の休暇を取るよう呼びかけました。園長の野田久美子さんは「利用児を守ることはもちろんだが、職員を守る取組みも重要。不安を抱える職員には個別に面談をし、勤務を調整するなどした」と話しました。

 

保護者との情報共有を大切にする

一度目の緊急事態宣言の解除後も、活動内容の制限を大きく解除せず継続していたため、3年1月からの二度目の緊急事態宣言、3年4月からの三度目の緊急事態宣言も、混乱することなく対応することができています。宣言解除後は、十分な感染症対策のもと、保護者の事業所への出入りを緩和していましたが、三度目の緊急事態宣言を受けて、再度出入りを制限しています。福見さんは「新型コロナが流行する以前は、保護者の送迎時に利用時の様子を見てもらい、連絡帳では伝わりきらない詳細な出来事を直接伝えることができていたが、現在は、事業所の外で待機してもらい、保護者とのやりとりも長時間にならないようにしている。だが、対面でのやりとりから育児に関する悩みや思いを吐露されることもあるので、自粛しなければならない状況は胸が詰まる思い」と話します。

 

制限の多い状況を受けて、2年9月に、保護者との面談期間を設けました。「面談を通して、休校期間中だけでなく、学校が再開してからも、分散登校の対応や、休校のリズムから学校に登校するリズムに戻すことなど、環境の変化が苦手な利用児に寄り添いながら非日常と向き合う保護者の状況があることを再確認した。コロナ禍だからこそ、保護者との情報共有は丁寧に行っていきたい」と話します。

 

制限がある中でもできることを

新型コロナの感染拡大が続く中、福見さんは「外出支援や友達との交流などの余暇活動を通して家庭とは異なった刺激や経験が得られる場となるよう支援することが放課後等デイサービスの役割。活動の自粛が求められる今、いかに余暇を充実させていくかは直面している大きな課題」と話します。

 

一方で、新たに生み出された活動もあると言います。福見さんは「最近では、フットバスやハンドマッサージなどの、リラクゼーション活動を取り入れるようになった。照明や映像、音楽なども工夫することで、五感を使ってリラックスする方法があることを、コロナ禍で改めて気付くことができた。制限がある中でも、利用児が楽しく過ごせる活動を見つけていきたい」と話します。

 

(注釈)

※…福祉サービスの人員確保の問題等で幼児児童生徒の居場所を確保できない場合等、臨時休業措置を取れない場合は、多くの幼児児童生徒が同じ場所に長時間集まることのないよう、必要な対策を行ったうえで、必要最小限の人数に絞って登校さ せる等の特段の配慮を行うこと。(文部科学省『新型コロナウイルス感染症対策のための小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における一斉臨時休業について(通知)』令和2年2月28日)

取材先
名称
(社福)武蔵野会 すぎな愛育園放課後等デイサービス事業所「こすもす」・「あみぃ」
概要
(社福)武蔵野会 すぎな愛育園放課後等デイサービス事業所「こすもす」・「あみぃ」
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