(社福)筑水会 特別養護老人ホーム 筑水苑
被害を最小限に抑え利用者を守り、施設自身が早めに立ち直る ~床上64センチの浸水被害を受けた施設が再開するまで~
掲載日:2018年3月26日
ブックレット番号:6 事例番号:55
茨城県常総市/平成29年3月現在

 

家族向けに出した手紙。被災して家族も様子を見に来られなかったため、様子を伝えるために作成した。

 

これから立ち直る

災害対応は「初動が大切」と長尾さんは言います。利用者に筑水苑に戻れる具体的な日にちを伝えられないジレンマや、事業再開までを長引かせると職員のモチベーションが下がってしまうことを指摘しながら、「職員にはあえて物資などを筑水苑に取りに来てもらい、直っていく施設の姿をみせ、『自分はここに戻るまで避難先で利用者を守らなければ』と感じてもらった」と話します。

そして、当初3か月かかると言われていた施設の再建も、毎日必死に対応し、1か月でまずは「半復旧」として2階の機能を取り戻し事業再開にこぎつけ、守谷市の施設にいた利用者をまず戻しました。空調関係の機能が2階にあったことも幸いしました。「利用者が筑水苑に戻ってくる日、移動のスピードは驚くほどだった。利用者も職員も『帰るんだ』という意識があったのが何より嬉しかった」と長尾さんは話します。

 

■半復旧(2階)での事業再開の基準(◎特に重視したこと)

◎食事(水・電気)が出せるか

●エレベーターが1基でも動くか

●排泄設備に問題がないか

●お風呂(ボイラー、電気)が使えるか

●ライフラインが確保できているか

 

被災した内部の片づけは、建物を空にし、その後、消毒という流れです。ボランティアに協力いただき、使えるものは中庭に、駄目なものは玄関に運び出す作業を行いました。1階は壁を崩し、3回消毒し壁紙を張り替えました。戸棚類は水を吸って扉も外れ、使える状態ではありませんでした。泥のついたドアは水圧洗浄しました。スチール製のものは中庭にブルーシートを敷き乾かしました。

中庭には流れてきた家具などがたまっていました。中庭の畑のコーナーの土の入れ替えは、1か所で30万円かかるとのことでした。以前は、畑に季節の野菜を育てていましたが、土がよくなるまでは野菜は控えて草木を植えています。28年春には元から位置していた洋シャクナゲの木に花が咲き、梅の木の梅の実もなりました。

総額で約2億4千万円の被害がでました。エアコンの空調以外は全てダメになりました。

 

国・県と市の補助で6千万円、保険に入っていたこともあり保険金が下りたものもありましたが、法人負担は4千万円でした。本館1階の床が、事業再開後3か月後の28年1月頃からめくれ上がるようになりました。水分を含んだ建物の被害はじわじわと後から出てくることもあり、壁からの水漏れなども含み、県や国への被害の申請が終わった後にも被害が出てきています。

お金だけでは揃えられないものや、元に戻せないものもあります。1階の地域交流スペースに、昭和の懐かしい品々を飾って「昭和コーナー」を設置していましたが、すべて流されてしまいました。殺風景になってしまった部分は、みんなの工夫で補っています。

 

      

水が引いてからの居室状況(左) 1階にあった冷蔵庫8台、ベッド53台が全損(右)

 

 

      

電気関係(ウォッシュレット63個)も故障(左)   室内の床の状況(右)

 

      

使えるものは中庭に、使えないものは玄関に運び出す(左)   ボランティアさんによる搬出作業(右)

 

 

居室の壁の修復

 

取材先
名称
(社福)筑水会 特別養護老人ホーム 筑水苑
概要
(社福)筑水会 特別養護老人ホーム 筑水苑
http://www.tikusuien.jp/
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