板橋区、板橋区民生児童委員協議会、(社福)板橋区社会福祉協議会、蓮根AIPささえあい協議会、板橋区町会連合会蓮根支部
高齢者等のワクチン接種予約を地域で連携して支援する取組み~板橋区と、同区内蓮根(はすね)地区「スポット仲蓮根」~
掲載日:2021年8月13日
2021年8月号 TOPICS

取材に応じてくださった、板橋区、区民児協、区社協、町会、蓮根AIPささえあい協議会の皆さん

 

あらまし

  • 令和3年4月頃より、新型コロナウイルスワクチンの一般接種が開始されています。都内でも多くの地域で75歳以上の後期高齢者から始まり、順次接種がすすんでいます。
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  • その中で、情報が届きにくい方や接種を希望していても自力で予約することが困難な方等への対応が課題になっています。そうした方への支援の取組みが、都内の複数の地域で実施されています。
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  • 板橋区では、区、民生児童委員協議会(以下、民児協)、社会福祉協議会(以下、社協)、町会連合会などの地域の関係者が連携し「チーム板橋」で支援の取組みをすすめています。
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  • 板橋区全域と、同区内の蓮根地区での具体的な取組みを紹介します。

 

板橋区民児協と社協での予約支援

人口約57万人の板橋区では、区内に多くの医療機関があることから、かかりつけ医でのワクチン接種体制が優先的に整備され、7月時点では、集団接種会場の区施設6か所、ほか医療機関約200か所、高齢者施設約130か所でも接種可能な体制が構築されています。接種券は5月6日に75歳以上へ、以降は順次、対象年齢別に発送され、6月28日には16歳以上の方への発送が完了しました。接種には、電話かオンラインでの事前受付が必要です。75歳以上の集団接種は、5月10日が初回の予約開始日でした。

 

区では、支援が必要な世帯(移動の難しい高齢者や障害者等)への状況に応じたきめ細かい対応が必要であると認識し、早くから支援策を検討していました。そうした中、坂本健板橋区長から、板橋区民児協会長で、板橋区社協会長でもある相田義正さんへ、民生児童委員による高齢者等への情報提供や接種勧奨支援の実施について依頼がありました。相田さんも「日頃の民生児童委員の訪問活動の中で、予約の電話がつながらずあきらめている方、予約方法が理解できない方、接種券が届いても開封していない方等がいることを見聞きしており、支援の必要性を感じていた」ため、民児協内で協議の上、実施を決めました。

 

6月4日には、区の福祉部長と保健所長との連名での正式な依頼文も受け、避難行動要支援者名簿の訪問調査票等をもとに、区内の538人の民生児童委員が、一人暮らしの高齢者や高齢者のみの世帯、気がかりな世帯等を訪問して状況や希望を把握し、必要な方にかかりつけ医への予約方法等の情報提供や支援を行いました。

 

同じ頃、板橋区社協でも接種予約のサポートを開始しました。集団接種の予約開始日にあわせて支援日を設定し、相談を受けるほか、本人に代わり、集団接種や接種可能な医療機関への予約連絡を行います。板橋区社協地域包括ケアシステム推進係長で生活支援コーディネーターの太田美津子さんは「支援初回の5月24日には、予約が取りづらい状況を見越し、パソコン8台、10人体制で対応した」と言います。予約が殺到したことで区のネットでの予約枠は早々に終了し、支援方法をコールセンターへの電話代行に切り替えました。電話回線も混雑が続きましたが、当日は夕方までに35人の相談を受け、うち、接種券を持参した14人分の予約を取り付けました。

 

以降も区の予約開始日にあわせ、社協全体で支援を継続しています。4か所の会場で延べ7回開催し、135人の相談を受け、うち、その場での予約を希望した38人全員の予約を行いました(7月12日時点)。

 

「スポット仲蓮根」での取組み

板橋区では、地域包括ケアシステム(「板橋区版AIP」※)推進のため、生活支援体制整備事業により社協に配置された生活支援コーディネーター(区全域および中圏域担当)が中心となり、区内全18地区で、地域課題やその解決につながる活動を話し合う「支え合い会議(第2層協議体)」を推進しています。会議で選ばれた住民等が、各地区の生活支援コーディネーターを担っていることが特徴です。会議を通じ、「支え合いスポット」と呼ぶ、支え合いのしくみや活動、住民拠点の創出もすすめています。

 

蓮根地区では、平成30年3月から「蓮根AIPささえあい協議会」を開催しています。地区内のすべての町会自治会や民生児童委員、老人クラブに加え、介護事業所、行政、おとしより相談センター(地域包括支援センター)、社協等の28人のメンバーが月1回、話し合いを重ねています。地域の見守り活動を続ける中で、気軽に相談を受け、交流できる拠点をつくりたいと、蓮根中央商店街の中にあり、蓮根仲町会が持つ仲蓮根会館を会場に、「スポット仲蓮根」の立上げを準備していました。

 

コロナ禍において、メンバーはそれぞれの立場で住民の不安の声を聴いていました。区民児協蓮根地区会長の遠藤栄子さんは「地区内に接種可能な医院等が複数あり、自身で予約した方も多くいたが、予約方法が分からない方も一定数おり、かかりつけ医や社協につないだ」と言います。また、同副会長の道下恵美子さんは「耳が聞こえず、電話もオンライン予約もできない方の支援を行った」と言います。蓮根中央商店会会長の吉澤健さんも「日本語が読めない外国籍の方の相談を受け、近くの医院に直接連れていき、予約につなげた」と言います。

 

こうした状況を受け、「スポット仲蓮根」の初めての活動として、6月14日にワクチン予約支援を行うことを決めました。区町会連合会蓮根支部長で蓮根仲町会長の渡邉武さんは「町会だけでは十分に実態把握をすることは難しかったと思う。関係機関が連携し、目の前にいる方の、今まさに困っていることを地域で受け止める場や活動が必要だと実感した」と語ります。

 

実施にあたっては掲示板や回覧板で周知し、民生児童委員の協力でチラシ配布を行ったほか、商店街の放送で広報するなどしました。当日は、近隣や遠方から訪れた50人の相談を受け、うち接種券を持っていた6人を予約につなげました。また2回目は7月7日に七夕のイベントを兼ねて実施し、相談者3人を予約につなげました。

 

この取組みを受け、蓮根AIPささえあい協議会相談役で蓮根東町会相談役の工藤一夫さんは「地域拠点が持つ力は大きい。スポット仲蓮根での取組みを参考に、社協等の力を借りて広く展開したい」と展望を語ります。

 

区社協では、今後も地域の各機関や団体との連携で、ワクチン接種予約のサポートを継続する意向です。

 

区福祉部長の椹木(さわらぎ)恭子さんは「体制を整備しているが、申込みが殺到して予約が取りづらい状況を申し訳なく思っている。地域の方々が連携し、集中して予約を支援する取組みは効果的で、感謝している」と言います。また「区民の希望者への接種は、10月中の完了をめざして取り組んでいる。今後も、民生児童委員、社協、地域とも連携して対応していきたい」と語ります。

 

「スポット仲蓮根」に関わる皆さん

(7月7日の取材当日は、七夕イベントも兼ね、多くの親子連れも訪れる中で、「なんでも相談所」を開催していました。)

 

※「板橋区版AIP」:「AIP」は「Aging in Place」の略で、「年を重ねても安心して住み慣れたまち(地域)に住み続けること」の意味。板橋区では国の施策に区独自の視点を加え、「板橋区版AIP」を掲げて地域包括ケアシステム構築を推進。

取材先
名称
板橋区、板橋区民生児童委員協議会、(社福)板橋区社会福祉協議会、蓮根AIPささえあい協議会、板橋区町会連合会蓮根支部
概要
板橋区
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/

(社福)板橋区社会福祉協議会
http://www.itabashishakyo.jp/

板橋区民生児童委員協議会

蓮根AIPささえあい協議会

板橋区町会連合会蓮根支部
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