精神障害当事者会ポルケ
ポルケフォーラム2021 2019年台風19号被害から考えるこれからの防災・減災
掲載日:2021年9月16日
2021年9月号 TOPICS

精神障害当事者会ポルケ

代表 山田悠平さん

 

あらまし

  • 令和3年7月31日(土)、大田区入新井集会室で、会場とオンラインをつないだハイブリッド形式にて「ポルケフォーラム2021 2019年台風19号被害から考えるこれからの防災・減災」が開催されました。
  • 精神障害当事者会ポルケ(以下、ポルケ)は、精神障害当事者により運営される団体で、平成28年に発足しました。大田区を拠点とし、当事者の交流の場や学びの場のほか、障害者権利条約など国際的な視点に立ちながら、地域社会との積極的な交流や働きかけを行っています。また「障害と防災」をテーマに学習活動にも取り組んでおり、障害者団体としての地域防災との向き合い方や今後のあり方などの検討も行っています。

 

大田区が取り組む「マイ・タイムライン講習会」

このフォーラムでは、まず初めに、大田区防災危機管理課係長の和田洋治さんから「マイ・タイムライン講習会」の実施結果等についての報告がありました。「マイ・タイムライン」とは、台風等の接近により風水害の恐れがあるなど、いざという時に避難に備えた行動を取ることができるよう、時系列に整理し、住民一人ひとりが作成する防災行動計画です。講習会では、河川情報の専門家が、気象災害の特徴や災害時に発信される情報収集の方法、避難時のポイント等を解説し、「マイ・タイムライン」の作成をサポートします。大田区では、令和元年度より区民向けに講習会を実施しています。ほかにも「水防災講演会」の実施や必要な災害情報が集約された「大田区防災アプリ」を作成するなど、普及啓発に力を入れています。

 

これからの防災・減災のあり方について

次に、ポルケ代表の山田悠平さんから『2019年台風19号被害から考えるこれからの防災・減災の在り方 報告書』についての報告がありました。この報告書は、令和元年に発生した台風19号の経験に基づき、今後の防災計画や障害者団体として今後取り組むべき行動についてまとめたものです。プロジェクトの実施にあたり、ポルケでは、日本障害フォーラムとの連携をはかりながら、マーシーリリーフ基金、真如苑市民防災減災活動公募助成を活用し、令和2年4月から、防災啓発活動団体や障害福祉関係者、学識経験者、熊本地震の被災・支援経験のある障害当事者の参画による実行委員会を開催してきました。報告では、大田区内の行政機関や福祉関係者、障害当事者へのインタビューやヒアリング、アンケート調査から見えてきた課題などが紹介されました。

 

台風19号発生当時の福祉避難所の利用について、山田さんは「利用者数は77名と非常に少なかったが、利用者数が少ないからニーズがないとは限らない。実施したインタビューでは『利用したくてもできなかった』といった声もあり、数字に表れていない部分についても気にかけることが大切」と言います。

 

また、服薬や医療的ケアが必要な精神障害者も地域には暮らしており、災害の規模によっては薬などが手に入らなくなることも想定され、その場合の対応についてもさまざまな立場からの検討が必要と指摘します。

 

さらに、防災会議等に障害当事者として参加して、このような経験を訴えていくことの大切さを強調するとともに、自分たちにできることを考える必要性についても触れました。「災害や防災について考えることは、心理的負担もある。『なるべく考えたくない』などの声があるので、マイ・タイムライン講習会のような楽しく防災について学べる機会があるのはありがたい」とし、「このような場に障害当事者も積極的に参加することで、障害理解のきっかけとなったり、地域とつながったりできるのではないか」と話します。

 

「災害時避難を考える」

続いて、NPO法人福祉コミュニティ大田の代表理事の浜洋子さんから、災害時避難について発言がありました。台風19号の際の大田区での状況が、当時の現場の写真を交えながら取り上げられました。災害への備えを事前にしっかりとしていたことでスムーズに避難ができた事例や、避難所の周知や認識が不十分で混乱が生じた事例などを紹介しました。あわせて、東日本大震災時の自身のボランティア経験などをふまえて「災害時に声をかけて助け合えるような、地域での関係性づくりが非常に大切」とし、「そのような関係性を、大田区をはじめ、都市部ではどのように築き上げていくのか考えていかなければいけない」と指摘します。

 

また、行政などの公的機関と民間団体や地域住民が連携し、並行して災害への備えをする必要があるといいます。「行政はハザードマップを作成するだけでなく、地域の危険度を把握するなどのリスク管理や、住民への広報や周知といった幅広い役割がある。そして、私たち住民にも、災害に関する情報収集、ハザードマップや避難場所・経路の確認をする役割がある」と話します。

 

まとめ

最後に、東京大学総合文化研究科・教養学部教養教育高度化機構特任准教授の井筒節さんによる国際的な防災の枠組みの観点からまとめがありました。平成27年に宮城県仙台市で行われた「第3回国連防災世界会議」で合意された「仙台防災枠組」では、初めて防災に障害者の視点が取り込まれ、障害者を防災の主要な担い手にする考え方が盛り込まれたことが紹介されました。

 

井筒さんは、特に「4つの優先行動(※)」について触れ、「平時から、知的障害者や精神障害者等からの視点で災害時のリスクを考える必要があり、災害リスクについて学ぶ場やプログラムを行う際には、その過程に障害当事者の方が入ることが大切」と言います。続けて「障害当事者の意見を取り入れることで、防災に限らず、より包括的な社会をつくっていくことができる」と話します。

 

そして「今回のフォーラムのような障害当事者や民間団体、行政が立場を超えて集まり、情報共有できる機会は非常に大切だが少ないので、貴重な時間だった」と締めくくりました。

 

(※)「4つの優先行動」…①災害リスクの理解、②災害リスクの管理のための災害リスクガバナンスの強化、③レジリエンスのための災害リスク軽減への投資、④効果的な対応のために災害準備の強化と回復・復旧・復興に向けた「より良い復興」

取材先
名称
精神障害当事者会ポルケ
概要
精神障害当事者会ポルケ
https://porque.tokyo/
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