(社福)東京都共同募金会、(社福)福生市社会福祉協議会生活介護事業所れんげ園、(社福)ベテスダ奉仕女母の家婦人保護施設いずみ寮
コロナ禍での課題にも対応 ~地域福祉活動や 福祉施設を支える共同募金
掲載日:2021年10月22日
2021年10月号 NOW

 

あらまし

  • 10月1日から75回目の赤い羽根共同募金運動が始まります。多くの方の善意を地域に活かす民間の取組みとして昭和22年に始まった共同募金は、子どもや障害者、高齢者をはじめ、その時代の社会的な課題に応じたさまざまな福祉活動を応援してきました。東京では、赤い羽根共同募金は主に福祉施設へ、地域歳末たすけあいは主に地域福祉活動へ活用されています。
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  • 今号では、コロナ禍における共同募金の新たな取組みや施設への配分の活用事例を紹介し、共同募金運動の意義について考えます。

 

「地域で集めて地域で使う」循環をめざして~(社福)東京都共同募金会〜

共同募金運動の募金実績額は全国的に漸減傾向にあります。東京都の令和2年度の募金実績額は約10億3千500万円で、前年比4・5%減でした。一般募金では、地区募金が25%減、街頭募金(職域含む)は35%減、法人募金は6・5%増となっており(図)、マスクや消毒液等の物品寄付を含む直納寄付金が270%を超える増でした。

 

 

前年度の状況について東京都共同募金会事業部長の近江信孝さんは「新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、ご寄付者や募金活動ご協力者をはじめ皆様の安全、健康を第一として、自粛や募金活動時の衛生的配慮をお願いするなど制限の多い中での共同募金運動となった」と振り返ります。

 

コロナ禍における新たな取組み

新型コロナの影響が長期化する中、全国の共同募金会が連携し、地域の福祉活動を支援する全国キャンペーンなどの新たな取組みを始めています。これらは共同募金運動で得たノウハウを活かして、新型コロナで顕在化した課題に即座に対応する取組みとしてすすめられています。

 

令和2年3月から6月には中央共同募金会が中心となり寄付を呼びかけ、「臨時休校中の子どもと家族を支えよう 緊急支援」として子ども食堂や学習支援など、孤立防止につながる取組みへの助成事業を実施しました。同年5月からは都道府県共同募金会が「赤い羽根 子どもと家族の緊急支援 全国キャンペーン」を開始し、新型コロナの影響を受けるさまざまな福祉活動に対して助成を行っています。

 

また、令和2年度は共同募金の配分においても例年にない対応を行いました。それは、配分決定後のコロナ禍の影響による事業変更を特例的に認めたことです。コロナ禍で計画通りに活動ができない状況と、今手当が必要な課題への対応ができるよう考慮したものでした。

 

近江さんは「新型コロナという緊急的な課題に対し、地域の方の意見が集まる配分推薦委員会のしくみを通じて、柔軟かつ機動的に対応できたことの意義は大変大きい。使いみちの柔軟化と全国キャンペーンは、共同募金会のコロナ禍における特徴的な取組みだった」と話します。

 

「つながりをたやさない」社会をつくる

令和3年度の共同募金運動の共通テーマは「つながりをたやさない社会づくり」です。現在、ワクチン接種やマスクの着用、三密を避けるなどの感染症対策はすすんでいますが、新型コロナの影響はまだまだ先が見通せない状況です。

 

近江さんは「地域の福祉課題は社会状況の変化に遅れて外に現れてくる。コロナ禍をきっかけに、社会的な孤立や貧困、居場所や行き場を失うことでの不安や精神的不調、高齢者のフレイル(※)など、さまざまな課題が足元ですすみ、深刻化しているのでは」と懸念しています。また「地域には新たな福祉課題にいち早く気づき、模索しながら、つながりをたやさない活動に取り組んでいる人たちがいる。共同募金はそうした草の根的な活動の価値を社会に発信していくとともに、それらの団体に対しては共同募金が活用できる可能性があることも伝えていかなければならない」と話します。

 

そして「共同募金は、地域に必要性や使途を知らせ、お寄せいただいた寄付金を地域のために役立てる循環が原点となる。今はクラウドファンディングなども広がり、寄付先が多様化しているが、地域の福祉課題への支援先として『困った時はお互い様』から始まった共同募金にご協力をお願いしたい」と幅広い募金運動への参加を呼びかけています。

 

(※)加齢により心身のはたらきが低下してきた状態。予防には、栄養や身体活動、社会参加が有効とされる。

 

東京都共同募金会
事業部長
近江信孝さん

 

活動に不可欠な空調設備の新調~(社福)福生市社会福祉協議会 生活介護事業所れんげ園~

れんげ園では、空調設備の新調に配分金が活用されました。施設が建ってから30年が経ち、令和2年には空調設備が一斉に壊れてしまいました。

 

れんげ園の利用者の中には、心疾患を持つ方や、暑さ寒さを自分から発信できない方もいます。ストレスから利用者の自傷や他害につながったり、通所してきた利用者が熱中症になっていた時にも、すぐに涼めなかったり、さまざまな困りごとが起きていました。課長代理の遠藤潤子さんは「早急に環境を整えなければいけなかったが、法人の資金で賄える金額ではなく、資金調達に困っていた」と当時を振り返ります。

 

そこで「数年前、東京都共同募金会から福祉車両の助成を受けたことがあり、今回も相談してみようとなった。丁寧に話を聞いてもらう中で、全国キャンペーンに申請することができ、配分金を受けて、令和3年4月に館内の空調設備を整えることが叶った」と話します。

 

以前は、館内の密集を避け、利用者の通所日を分散していましたが、今は換気を行いながらでも室温を適温に維持することができ、全員が一堂に通える環境になりました。遠藤さんは「利用者の『涼しい!』という反応はもちろん、利用者の顔色や汗の状態を見ても、快適に過ごせていると実感する。利用者の家族にとっても、安心な環境が整えられたと思う」と話します。

 

遠藤さんは「これまで街頭募金にも参加していたが、実際に配分を受け、共同募金運動の意義を改めて感じた。これからもれんげ園を含めみんなで集めた募金が必要なところや困っているところにつながり、役立ってほしい」と共同募金運動の輪の広がりを期待します。

 

れんげ園 課長代理
遠藤潤子さん

 

行き場のない女性の安心と安全を守る~(社福)ベテスダ奉仕女母の家 婦人保護施設いずみ寮~

いずみ寮では、施設入口門扉の電気錠整備に配分金が活用されました。DV被害者をはじめ保護が必要な女性が利用しているため、その安全と安心を守ることが重要です。近年、施設周辺の都市化により人通りが増え、施設のインターホンを執拗に鳴らすいたずらや不審者が建物内をのぞきこむことがあり、防犯設備の必要性が高くなっていました。

 

施設長の横田千代子さんは「人感センサーの導入検討や民間警備会社の契約、警察への巡回依頼といったさまざまな手立てを講じてきたが、利用者の安心が脅かされることが度々あった。事件を未然に防ぐための策として電気錠の導入をしたいと考えた」と切迫した状況を振り返ります。

 

令和3年5月に電気錠を設置してからは、利用者、職員の安心感も大きくなったといいます。

 

横田さんは「新型コロナによる影響で、DV被害を受けて入所する方も増えている。これまで居場所や行き場がなかった方たちにとって、自分らしくいられる住環境はとても大切。しかし、公的な予算だけでは予備費はほとんど捻出できない。小規模法人は今回のような防犯設備の増強への経費や施設の修繕費を積み立てることも厳しいため、民間の助成金に頼らざるを得ない」と厳しい状況を明かします。

 

これまでにも、ある日突然傾いてしまった浴槽の修繕費や利用者の喫煙室の設置費用、女性支援活動に必要な資金等さまざまな場面で共同募金運動の配分金が役立っています。

 

横田さんは「婦人保護施設は社会の理解と評価を得にくいが、活動の意義を理解していただき、共同募金運動に支えてもらっている。皆さんの善意が困難な状況にいる女性たちにも伝わっている」と話します。「今後も施設のバザーでの募金運動等を通じて、少しでも恩を返していきたい」と共同募金運動への感謝をこめた思いを話します。

 

いずみ寮施設長
横田千代子さん

取材先
名称
(社福)東京都共同募金会、(社福)福生市社会福祉協議会生活介護事業所れんげ園、(社福)ベテスダ奉仕女母の家婦人保護施設いずみ寮
概要
(社福)東京都共同募金会
https://www.tokyo-akaihane.or.jp/

(社福)福生市社会福祉協議会 生活介護事業所れんげ園
https://fussashakyo.or.jp/service/disabiled/lifecare/#lifecare_renge

(社福)ベテスダ奉仕女母の家 婦人保護施設いずみ寮
https://www.bethesda-dmh.org/shisetsu/
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