(社福)東京都社会福祉協議会
創立70年記念座談会~東社協10年の歩みとこれからの地域共生社会づくり
掲載日:2021年12月8日
2021年12月号 NOW

 

あらまし

  • 2021年、東社協は創立70年を迎えました。
  • 今回、長年にわたり社協・社会福祉法人・民生児童委員・市民活動推進のリーダーとして活躍されている方々による座談会を行いました。
  • それぞれの立場から、この10年の都内の社会福祉や災害支援等の歩みを振り返るとともに、社協・社会福祉法人(の地域ネットワーク)・民生児童委員(協議会)の「三者連携」を基盤としたこれからの東京における地域共生社会づくりと東社協への期待についてお話しいただきました。

 

出席者

東社協総合企画委員会委員長 市川一宏 氏(座長~ルーテル学院大学教授、学術顧問)

 

区市町村社協部会会長 柴山義光 氏(港区社会福祉協議会 会長)

 

社会福祉法人経営者協議会会長 品川卓正 氏(社会福祉法人村山苑 理事長)

 

東京都民生児童委員連合会会長 寺田晃弘 氏(豊島区民生委員児童委員協議会 会長)

 

東京ボランティア・市民活動センター所長 山崎美貴子 氏(神奈川県立保健福祉大学名誉教授)

 

 

 

市川 本日はよろしくお願いします。社協関係、社会福祉法人・施設関係、民生児童委員関係、ボランティア・市民活動関係、それぞれの代表や、この10年以上リーダーとして率先されてきた方々に集まっていただきました。

 

それぞれの領域・分野におけるこの10年

市川 まずは、各分野・領域におけるこの10年についてお話しいただきたいと思います。

 

地域共生社会づくりを推進

柴山 この10年は区市町村社協にとってそれぞれの地域でのネットワークを強化しながら、地域共生社会づくりをすすめてきた期間でした。

 

私が会長を務めている港区社協の取組みから振り返ると、力を入れてきたのは、権利擁護と小地域福祉活動です。小地域福祉活動では、地域でのサロンや見守り活動を推進してきました。特に社協は、対象や分野の垣根を越えて、地域住民のさまざまな困りごとに向き合うことが大切になります。令和3年4月からの改正社会福祉法では地域福祉の推進は「地域住民がお互いの人格と個性を尊重しながら参加し、共生する地域社会の実現をめざす」と位置付けられました。これは受け手と支え手というような固定した関係ではない、お互いの支え合いを大切にしていこうということです。港区社協でも平成27年に、法人理念を「みんなとともに『つながり支え合うまち』をつくるために私たちは行動します」と定めています。

 

また、この10年、都内社協は地域福祉コーディネーターの配置に取り組んできました。平成27年には、17社協のみの配置でしたが、令和3年4月には、全体の半数を超える37社協にまで増え、区市町村の中圏域ごとに配置されるようにもなってきています。

 

もう一つの動きは、新しいネットワークづくりです。平成28年の社会福祉法の改正により、社会福祉法人に「地域における公益的な取組み」の責務が位置付けられました。都内では、区市町村社協が事務局となって、地域の社会福祉法人のネットワークを作る取組みをすすめてきました。現在、準備中を含めて、51の地区でネットワーク化が進んでいます。港区社協でも、平成29年度に、区内29の法人による連絡会を立ち上げ、それぞれの法人が、地域に向けてできることを連絡会として発信しています。

 

東社協地域福祉推進委員会では、平成31年3月にそれぞれの地域でこの社会福祉法人のネットワーク、民生児童委員の活動、そして社協の「三者連携」を強化していくことを打ち出しています。社協と民生児童委員には長年に亘る連携があり、ここに社会福祉法人のネットワークが加わることで、新しい取り組みがすすむことが期待されています。ただ、今はそれぞれが取り組まなければならない課題を抱えています。連携することが目的ではなく、連携することでお互いにゆとりが持てる連携でなければ、なかなか進まないと思っています。

 

そして、区市町村社協はコロナ禍によって収入が減少した世帯を対象に生活福祉資金の特例貸付を実施してきました。その申請件数は令和3年8月末時点で都内全体で58万件を超え、各社協では職員総出の対応をしてきました。きわめて厳しい状況ではある一方で、これまで社協に訪れたことのなかった相談者も多く見られるようになりました。地域福祉コーディネーターの活動ともあいまって、新しい地域課題が改めて見えてきていると思われます。

 

社会福祉法の改正~社会福祉法人の使命と責務

品川 平成28年3月に社会福祉法が改正されました。社会福祉法人による「地域における公益的な取組みを実施する責務」は、社会福祉法人制度の維持・発展につながるこの法改正の、いわば本質的な項目と言えます。社会福祉法人の地域に対する働きかけは本来的な使命ですが、ここで改めて責務として規定されたのです。社会福祉法人だからこそできる、制度の狭間で生じる困難な福祉ニーズ等に積極的に対応するよう、社会福祉法人に対して奮起を促したものと受け止めています。

 

東京都社会福祉法人経営者協議会(以下、経営者協議会)は、法改正の意味を汲み取り、まず、会員法人を対象に、法改正の趣旨と内容等について理解を深めるため、研修会の開催に努めました。さらに、東京の社会福祉法人が、東京における地域の公益的・福祉的な課題へ対応するためには、具体的にどのような取組みと役割を果たすべきか、経営者協議会に設置される調査研究委員会等で検討を重ねました。その後、検討の場を東社協に移し、結果、東社協内に新たな地域公益活動のための協議会組織を創設して、事業に取り組むことにしました。経営者協議会はこれに全面的に協力しています。

 

東社協は、事業を①各社会福祉法人による取組み、②各地域(区市町村社協を中心とした)における取組み、③広域(東京都全域)における取組み、の「三層による取組み」とし、これを統括する組織として、東京都地域公益活動推進協議会(以下、推進協議会)を、平成28年に設立しました。現在、区市町村社協を中心としたネットワークは、51の地域に拡大し、広域による取組み「はたらくサポートとうきょう(中間的就労推進事業)」に参加する法人も年々増加しています。今後も経営者協議会は推進協議会と一体となって、全法人参加による地域公益活動の実現をめざし、社会福祉法人の存在意義を示していきたいと考えています。

 

地域の中で、複数の社会福祉法人が連携してさまざまな課題に対応することで、社会福祉法人の社会的評価や存在意義を高めることにもつながると思っています。

 

東京の民生児童委員が果たしてきた役割

寺田 この10年の出来事では、東日本大震災をはじめとする自然災害、平成29年民生委員制度創設百周年に関するさまざまな事業、コロナ禍における活動という3つの大きな出来事がありました。

 

民生児童委員は、人々の日常生活に寄り添って活動しており、10年の区切りで大きく変わるものではありません。地域の中で援助を必要とする人がいれば、どんな時でもできる範囲で相談支援を行います。社会的な出来事に個別に対応するというよりも、その対応は日頃の活動の延長線上にあるということです。それらをふまえ、敢えてこの10年の役割を問うならば、身近な相談相手として住民に寄り添う役割、各支援制度につなげる役割、制度では充分に対応できなかった、あるいは行なわれて来なかった支援の充実を図る役割があります。

 

また、これから大切にしていかなければならないのは、制度の狭間で困難を抱えている世帯を掘り起こし、地域の資源につなげていくということと、同時に地域で生活しているあらゆる人を巻き込みながら、いわば地域ぐるみで取り組むことです。そのためには、地域のつながりを大切にして、地域力を高めることが不可欠です。経済格差の拡大や分断の深まりにより、福祉問題が重層化し、民生児童委員活動の困難さや負担感も増しました。そうした状況の中で迎えた制度創設百周年でしたが、平成28年に東京版活動強化方策として、「仲間とつくる地域のつながり」をスローガンに、五つの柱を立てました。この方策を羅針盤とし、令和8年度までを期間として活動の充実を図っています。

 

取材先
名称
(社福)東京都社会福祉協議会
概要
(社福)東京都社会福祉協議会
https://www.tcsw.tvac.or.jp/
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