(社福)東京都社会福祉協議会
創立70年記念座談会~東社協10年の歩みとこれからの地域共生社会づくり
掲載日:2021年12月8日
2021年12月号 NOW

東京らしい地域共生社会づくりと東社協への期待

市川 最後に、これからの地域共生社会づくりに向けたそれぞれの役割や課題、今後の取組みに向けた目標、そのための東社協の果たす役割は何なのかをお願いします。

 

コロナ禍のもとでの社協活動

柴山 コロナ禍で、地域を支える担い手の不足が課題となっています。地域活動の休止が長引き、長年にわたって地域のために活動してきた方々が、活動を続ける気力を失ってしまったり、感染対策をめぐる考え方の違いから担い手同士の関係性が悪くなってしまったり、という残念な話も聞きます。ボランティア体験などの体験型の活動が軒並み中止されています。それに伴って、小中学生のボランティアへの思いが減ってしまうことも心配です。

 

一方で、こうした時代だからこそ、改めて人や地域との関わりに関心を持つ若い人もいると思います。こうした層を積極的に地域の活動につなげていかなければならないでしょう。

 

またオンラインが進んで手軽で便利になる反面、オンラインは苦手という人も地域にはいます。新型コロナのワクチン接種のネット予約が難しい高齢者を地域の若い世代が手助けするという取組みがありました。さらに、地域福祉コーディネーターと社会福祉法人が連携して自宅療養者に食糧を届ける取組みを行う社協もありました。今後、地域の課題にタイムリーに反応して動くことがますます大切になると考えています。地域福祉コーディネーターの特徴は、積極的に地域に出向き、課題の解決を住民や関係機関と一緒に考えることです。社協に一人の地域福祉コーディネーターという体制では充分に地域に出ることは難しく、人数の増員が必要です。あわせて活動の成果を発信して、地域の人たちにその存在を知ってもらい、浸透することが、これからの社協の課題ではないかと思っています。

 

「三者連携」の意義と社協への期待

品川 東社協は、次期中期計画の検討の中で、社協、社会福祉法人、民生児童委員、この三者の連携を取り上げています。この間、社会福祉法人の「3層の取組み」による地域公益活動で区市町村社協との連携による各地域でのネットワーク化の取組みは進んでいます。これを活性化させて、さらに民生児童委員の方たちと共に「三者連携」による取組みを進めることには、大きな意義があると思います。

 

社協と社会福祉法人、社協と民生児童委員は、既にお互いに連携をしています。しかし、社会福祉法人と民生児童委員間では、個人情報保護が大きな壁となりほとんどつながりがありません。そこで、二者を知る社協、特に東社協が中心となって調整役を務め、行政に働き掛けたりすることで、三者が連携し機能するような体制づくりを構築していただきたいと思っています。

 

地域社会を構成するすべての人たちが共に手を携えて課題解決を図っていく社会へ

寺田 私たちに求められていることは、民生児童委員と同じような目線で地域を見てくれる存在を沢山作っていくことだろうと思っています。換言すれば、地域に福祉の目を広げる、または地域を耕すということになるでしょう。山崎所長が先ほど、ネットワークの重要性をおっしゃっていましたが、このネットワークを持っているということは社協の強みだと思います。そのことを活かすためには、民生児童委員としてさまざまな機関と連携し、住民の架け橋としての役割を確実に果たして行くことが重要になってくると考えています。

 

重層的支援体制整備事業が始まり、複雑化した生活課題を身近な地域で受け止めて解決することが期待されています。これを上手く使い、民生児童委員と社協が協働して拠点を作っていくことが必要ではないでしょうか。その拠点は非常時や災害時にも機能するのではないかと思います。

 

区市町村社協の組織には民児協の会長も入っています。その点をふまえて、東社協は区市町村レベルからボトムアップして行くような施策も大事だと思います。例えば、都民連の定例会議である毎月の常任協議員会でさまざまな情報を伝えることで地域に広がって行くことも期待できるでしょう。さらに、「三者連携」についても区市町村社協を中心に民生児童委員も社会福祉法人も加わっており、社協が要となっています。三者を強くするということは、区市町村社協の機能強化でもある視点を持つことも必要だと思います。

 

地域の力を育てる福祉教育の重要性

山崎 地域共生社会を創生する上では、地域の構成員であるすべての人が関係者ですが、「丸ごと」とか「全ての人が」といってもなかなか浸透しません。どこの地域にも、孤立している人や、さまざまな困窮にあえいでいる人、多問題を抱えて疲弊している人がいるはずです。まず、だれもが地域の人々の人としての尊厳ある暮らしやその人らしく生きることに関心を持つことを始めるために、TVACでは福祉教育や市民学習に取り組んでいます。例えば、子どもであれば、思いやりの心を育てる、年齢が上がったら地域を構成する一人としての実践力を高める、あるいは社会参加の考え方を一人ひとりの市民がしっかりと学ぶ、こういった機会を広げていけたらいいな、と考えています。

 

専門機関の支援力をアップすることだけでなく、福祉教育など参画型の教育を通して、身近な一人の困りごとから地域社会をどう捉えるのか、あるいは「他人事」ではなく、「我が事」として見つめ直していく、地域としての活動をみんなで支えていく、そのような考え方を育てていくことが必要ではないでしょうか。特に先ほど民生児童委員の活動の中で指摘されていた、潜在化している課題、または届かない支援、拒否をしている、まだ到達できない隙間になっている「支援希求力」が低下してしまった人々を発見していくのはやはり地域の力です。その地域の力を学びの中に活かして行くことが必要ではないかと考えています。

 

人と人のつながり方が難しい社会の中で、さらにコロナ禍がその困難を助長してしまっています。人と人とのつながり方が難しい社会をどう突破していくのか、このことに私たちは心して立ち向かわなければならないと念じます。

 

常に現場を正しく理解しどう支援するかを考える

市川 最後に私から、これからの地域共生社会づくりに向けて、東社協の役割や期待について述べさせていただきます。

 

新型コロナは災害です。ですから、現在の地域福祉にはいわゆる災害対応の視点が不可欠であることは言うまでもありません。このような時だからこそ、重要なポイントを3つ、もう一度あらためて確認したいと思います。

 

一番目は、「協働してきた実践をもう一度検証する」ということです。東社協は、市町村レベル、地域レベルで、現場はどうなっているのかを常に把握し、それに対してどうバックアップできるか、を迅速かつ柔軟にそして具体的に検討することが不可欠です。現場を正しく理解し「靴に足を合わせるのではなく、足に靴を合わせる」支援をする、ということです。区市町村やそれぞれの地域ケアを、どう東社協がバックアップできるか、を考えていくことが必要だと思います。

 

二番目は、「本来の活動の意味を問い直す」ことです。孤立をなくし、深刻化するさまざまな問題を食い止めるためには、どのような地域を作っていくのか、福祉のまちづくりという原点に立ち戻る必要があります。東社協は関係機関と共に、本来の活動の意味をもう一度描かなければ、寸断された社会においては、効果的な支援は成り立たないと思います。

 

三番目は、「それぞれの役割を問い直していく」ことです。今回、社協、社会福祉法人、民生児童委員、それぞれの立場からの話を伺いました。それぞれができること、求められていること、したいことを確認して、役割の協働を図って行かないといけません。

 

今、これまでの地域福祉活動が立ち行かなくなり、民生児童委員の方たちも苦労し、地域福祉の担い手のモチベーションを継続することが大変になっています。地域活動は危機的な状況です。今まで考えたモデルが通用するのか、また「三者連携」の実効性は担保できるのか、といったことを明確にしていくことが重要です。現場は今、どういう状況なのか、現場を正しく理解し支援することが常に求められている状況です。正念場になっていると思います。だからこそ「覚悟を決めて課題に真向かい、協働して解決のための行動を起こしていく」、そのような挑戦の一つひとつが束になって、明日のコミュニティを創生していくと確信しています。

本日はどうもありがとうございました。

 

(令和3年9月8日、リモートで実施)

 

取材先
名称
(社福)東京都社会福祉協議会
概要
(社福)東京都社会福祉協議会
https://www.tcsw.tvac.or.jp/
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