(社福)熊本県社会福祉協議会 施設福祉課
種別協がきめ細かに被災状況を 把握拠点による「ハブ方式」で必要な支援
掲載日:2018年3月26日
ブックレット番号:6 事例番号:59
熊本県熊本市/平成29年3月現在

 

種別協ならではのきめ細かい被害状況の把握

県社協の種別協の集まりである社会福祉施設協議会連絡会の会員数は1,235会員。各種別協議会の把握や県の被災調査によると、被災数は434か所になります。

種別協議会ごとに被災状況は一覧に整理して更新を重ねてきています。例えば、以下のように具体的な状況を把握しています。

 

益城町 ○○保育園

・ 園舎は一部損壊しているが、職員、園児、保護者等、連絡がつく範囲

熊本市 ○○荘

・施設建物外壁にひび、駐車場が地割れ

・地盤沈下で擁壁にひび割れ

・建物がひずみ、サッシが歪んで割れて落下

・利用者70名中20名の居室がまだ危険のためホールで過ごす

・配管が漏水しているが、どこからもれているか特定不能

・ 職員75名中、半壊11軒・一部損壊36軒・自宅61・車中泊7、避難所3、その他9

熊本市 ○○学園

・窓ガラスは割れている。断水、建物ひび。

・ 2棟のうち1棟が全壊。残った1棟に避難している。けが人はいない。

・ 危機的状況。建物が使用できない状態、どこも地盤に亀裂。

御船町 ○○学園

・電気水道ストップしている。

・ 本館、地域交流センター、グループホームが崩壊しており、建替えが必要。

 

 

各種別協がとりまとめた県内施設の具体的な被災状況

 

県内の施設では地震により直接、利用者が亡くなることはありませんでしたが、菊陽町の知的障害者施設では職員1人が自宅で亡くなっています。

また、南阿蘇村では、熊本市とつながる幹線道路が崩落したため、種別協による支援活動も大分県側からのアプローチを余儀なくされました。震度7を記録した益城町の特別養護老人ホームには、近隣の被災した住民130人が避難してきました。児童養護施設では、子どもにPTSDの症状が表れて、お風呂に入るのが怖くなる子もみられました。障害者の授産施設では印刷機やクッキーの焼き窯が破損したものの、生産に関わる機材のため補助金の対象にならず、施設で再調達しなければならない例もあるほか、元請け会社が被災したため、授産活動の受注がなくなってしまう状況もありました。

 

そして、県社協には、被災した施設を応援しようとする企業からも相談があり、対応しています。例えば、被災した児童福祉施設に支援をしたいので、被災施設名を教えてほしいという要望が県庁に対してあったものの、県として施設名を回答することは難しい状況がありました。そこで、県庁から県社協に依頼があり、熊本県養護協議会として、被災施設の状況をまとめた情報を提供して、各施設への支援につなげました。

また、障害者の生産活動を再開することで支援をしたいという企業の社会貢献事業を担う団体からの申し出があり、県社協として調整を行いました。就労支援事業所の製造設備・機械の修繕と更新、および新たな販路の拡充に役立てていただくための支援金として、熊本県社会就労センター協議会が受取り、復興に使わせていただくことになりました。

支援をしてくださる方の思いに沿って役立てることができるようコーディネートすることも震災をふまえた社会福祉施設への支援として県社協の重要な役割となっています。

 

保育士会が「保育士村」を開設して子どもたちを支援

熊本県保育協議会保育士会は、益城町、西原村で、避難所生活を送っている子どもたちや親子が思いっきり遊べるため、遊びを提供する「保育士村」を避難所の一角に開設しました。県内から協力してくれる保育士を募り、絵本、折り紙、積木、ぬり絵、シャボン玉等を用意して、子どもたちが遊べる場をつくるとともに、保護者と会話して、不安な気持ちや悩みを共有するよう取組みました。勤務外の時間帯に協力する保育士、業務として派遣された保育士のほか、有給休暇をとって参加した保育士など、さまざまな形態での協力がありました。また、この取組みを支える資金として、「全国保育士会被災地支援スカンポ募金※」が活用されました。

これも保育士ならではの専門性を活かした災害時の地域への貢献の一つといえます。

 

※ 「全国保育士会被災地支援スカンポ募金」とは、災害により被災した地域の保育士会の運営を支援するとともに、子どもの育ちを支える保育士等の活動を支援することを目的に、これまでの「東日本大震災被災地保育士会支援募金(通称:スカンポ募金)」を変更したものです。

 

全国からの想いを適切に配分する役割も

地震後、各種別協議会では、全国の関係団体等から、被災施設や法人への直接支援を行う「義援金」や、被災地のさまざまな支援活動への資金提供を行う「支援金」をいただきました。地震後の物資の供給や職員の応援派遣等が一段落したのち、各協議会では、義援金・支援金の適切な配分について協議し、配分方法や金額を決定しました。

建物や設備等の被害額の見積額に応じた基準や、激甚被災施設と被災施設に分けた基準など、協議会によりさまざまです。例えば、熊本県社会就労センター協議会は、生産活動を行う種別ならではの、生産設備被害や車両被害の状況を基準に加えています。また、熊本県保育協議会は、私立保育園には義援金を配分することにしましたが、公立保育園の場合、各保育園で義援金として受け取ることが難しい状況がありました。そこで、保育協議会が各保育園の希望に基づき、絵本や玩具等を扱う保育関連業者から義援金額相当分の物品を購入し、各園が受け取れるよう調整を図っています。

いずれの協議会も全国から寄せられた関係者の思いに応え、それぞれの施設種別に応じた復興に活かせるよう工夫して配分を決定しています。

 

介護職員等応援派遣マッチング本部

熊本地震では、全社協と全国経営協の職員が熊本県社協に常駐する形で4月27日に全国からの介護職員等による応援派遣のマッチング本部が設置されました。全社協と全国経営協からのマッチング本部への職員派遣は6月末までで、それ以降、8月末までは熊本県社協がその業務を担いました。厚生労働省によりとりまとめた全国からの応援可能職員の名簿をもとに、福祉避難所または被災施設の人的支援をマッチングする取組みです。ここでは、経営協をはじめとする県内施設の被災状況の把握が人的支援の具体的なニーズとして活かされました。

各種別協議会等の組織がボランティアによる介護等職員の派遣を始めていたものもこのしくみの中に取り込んで実施しています。旅費は国と県が負担し、人件費は派遣元と派遣先の話し合いで決めるスキームとなっています。

 

 

 

 

 

  調整機関 対象施設 派遣職員数(人)  
1 全老健 介護老人保健施設 要望数

派遣職員数

602

562

2 全国老施協 特養

養護老人ホーム

要望数

派遣職員数

2,109

1,616

3 福岡県老施協 軽費老人ホーム 要望数

派遣職員数

1,055

978

4 小規模多機能連絡会

日本認知症GH協会

小規模多機能型事業所

グループホーム

要望数

派遣職員数

577

821

5 熊本県社協

マッチング本部

上記以外 要望数

派遣職員数

2,517

2,458

6 みなみ阿蘇福祉救護ボランティアネットワーク 高齢者関係施設 要望数

派遣職員数

459

489

7 介護福祉士会 高齢者関係施設 要望数

派遣職員数

14

14

    合 計 要望数

派遣職員数

7,333

6,938

 

 

取材先
名称
(社福)熊本県社会福祉協議会 施設福祉課
概要
(社福)熊本県社会福祉協議会
http://www.fukushi-kumamoto.or.jp/
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