武蔵野市国際交流協会スタッフの皆さん
中央が事務局長の竹内さん
公益財団法人 武蔵野市国際交流協会・・・1989年設立。さまざまな文化、習慣を持った人々が互いに尊重し、共生していく多文化共生社会の実現に向けて、外国人は支援を受ける存在だけではなく、共に活動をすすめる担い手、パートナーとして認識し、幅広い活動に取り組む。
国際交流協会は地域に暮らす外国人と日本人の交流の促進を目的として、都内の22区市に設置されています(2022年2月現在)。
武蔵野市では平和問題懇談会の提言に基づき、1989年、市民主体の武蔵野市国際交流協会(以下、協会)が設立されました。武蔵野市民と世界の人々との幅広い交流促進をめざし、国際平和に寄与する開かれたまちづくりを目的としています。
「活動を共にする仲間」として
協会は会員制度を設けており、約1000人が登録しています。そのうち外国人会員は約600人です。
協会では、日本語教室、防災事業、多文化の紹介イベントの開催、ボランティア活動の推進など、多岐にわたる約40の事業に取り組んでいます。そのうち複数の事業で、設立当時の「市民主体」の理念のもと、会員となっているボランティアが自主的に企画や運営を行っています。「活動を共にする仲間、パートナー」として、外国人会員もそれら事業に主体的に携わっています。
事務局長の竹内邦憲さんは「他の国際交流協会に比べると、私たちの事業数は多いと思う。それもあり、本会の事業に参加してくれた外国人には、その事業にだけ参加してもらうのではなく、他の事業や地域のイベント等に関わってもらえるように積極的に促すことを心がけている」と話します。例えば日本語教室に来た外国人に料理が得意な方がいれば、料理教室の講師となってもらうこともあります。「『支援されるだけでなく、何かできることがあるはずだ』という視点を職員、ボランティアとも持っている。つながりをつくっていく仕掛けづくりをするのが私たちの特色の一つ」と話します。
コロナ禍で「相談」と「通訳派遣依頼」が増加
協会で行う事業の一つに「多言語相談・情報提供窓口」があります。外国人本人や支援団体等から相談を受け、内容により、協会が実施する専門家相談や通訳派遣、関係団体等の支援につなげています。
新型コロナ感染拡大後は、特に相談件数が増えました。2019年度は相談件数が330件だったのに対し、2020年度は356件でした。
本人からの相談は「今生活に困っている」「本国に帰りたいが帰れない」「仕事がなくなってしまった」など、多岐にわたります。中には在留資格や婚姻関係の解消などの専門的な相談や、市外、都外に住む外国人からの相談もあります。「このような相談があった際は、その人に最も適した地域や相談機関を紹介することが私たちの役割。弁護士などの専門家や相談機関等のつなぎ先を必ず紹介するようにしている」と竹内さんは話します。
専門家に相談している様子
通訳派遣については、近年、都内全域の児童相談所からの依頼が多くなっています。協会では、自前で養成した語学ボランティアと呼んでいる通訳者を派遣しています。2020年の緊急事態宣言期間は派遣中止としたため、2020年度は2019年度と比べ派遣件数自体は減少しています。しかし実際には依頼は多く寄せられていて、2021年度はさらに急増している状況です。
語学ボランティア研修(市民社協について)の様子
事業の周知にも力を入れています。市役所の担当課を通じて、通訳派遣や翻訳ができることを市役所内に改めて周知しています。市役所としても、ワクチン接種や子育て等の相談、多言語対応に苦慮しており、市役所への派遣件数も増えています。ほかにも保育園や児童相談施設等の福祉施設からも派遣依頼があります。
社会福祉協議会との連携
コロナ禍で経済活動が滞り、生活に困窮する人が増加したことから、2020年3月より全国の社会福祉協議会で新型コロナの影響を受けた方への生活福祉資金特例貸付が始まりました。協会でも外国人住民の申請の手助けのため、武蔵野市民社会福祉協議会(以下、市民社協)と連携して対応しました。
また、協会と市民社協は、それぞれ市と災害時の支援に関する協定を結んでいました。そのため、年1回の災害ボランティアセンター運営訓練で関わるなどのつながりを持っていました。また、ボランティアの募集や希望者からの問い合わせに関して協会とボランティアセンター武蔵野は連絡を取りあってきました。今回これまでのつながりを活かし、連携に至りました。
協会では、言葉遣いが難しい重要事項説明書などの申請書類をやさしい日本語に訳して、市民社協に提供しました。また、特例貸付の申請件数が急増し、市民社協の窓口がパンク寸前だった2020年5月頃には、通訳支援を必要とする申請者の相談受付の手伝いも行いました。
これらの経緯もあり、現在協会は、市民社協との連携に一層力を入れて取り組んでいます。具体的な取組みとして、2020年の語学ボランティアの研修で市民社協に講師を依頼しました。市民社協、語学ボランティアとも互いの存在をより知るため、「市民社協の事業・活動」をテーマとして実施しました。
「現在もそうだが、これから先、外国人も子育てなど何らかの福祉のサポートが必要になる人が増えるはず。そのため、市民社協と何か一緒にできないか、協力できないかということを、ボランティアに考えてもらうことを狙いとして研修を行った」と竹内さんは言います。
また、協会のチラシを作成して市民社協にも置いてもらうことで、協会に相談できることを広め、協会の認知度をさらに高めようと取り組んでいます。
「支援する」「支援される」という垣根をなくしたい
竹内さんは多文化共生の今後について「外国人は決して支援されるだけの人ではない。どうしても教える存在と思ってしまいがちだが、ボランティアを含め『逆に私たちが教えてもらうんだ』という意識を心掛けて活動している。その考え方は福祉と通じるものがあるはず」と話します。続けて「日本人も外国人に『支援されている』という視点を持っても良いと思う」と話します。協会の日本語教室には、市内の特別養護老人ホームで働く外国人も参加しており、その施設でお世話になっている日本人もいるからです。
「外国人は言葉の壁を越えられれば、もっと日本で活躍できると思う。『支援している』『支援されている』では、お互いに垣根ができてしまう。協会の活動を通してそのような垣根をなくしていきたい」と語ります。
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