(NPO)めぐろ子ども支援ネットワーク
子どもたちに必要なものは?区立児童相談所の意義と地域に求められる支援
掲載日:2022年4月8日
2022年4月号 TOPICS

令和4年3月5日(土)、標記をテーマに、NPO法人めぐろ子ども支援ネットワークによるフォーラムが開催されました。児童福祉司の経験も持つ明星大学教授の川松亮さんから、児童相談所(以下、児相)の役割と、地域に求められる子ども支援について講義が行われました。

 

地域の中の児童相談所

児相は、平成28年の児童福祉法改正により特別区にも設置可能となったことで、令和4年3月現在、都内14か所に設置されています。児相では、虐待だけでなく、養育困難、障害、非行、育てづらさなど18歳未満の子どもに関するさまざまな相談援助を行っています。中でも、子どもを守るための「一時保護機能」や「措置機能(在宅指導、里親委託、児童福祉施設入所措置等)」などの権限を持つことが特徴です。令和2年度、東京都では相談全体の50%近くが、虐待に関する相談といいます(※1)。

 

先行して設置された特別区児相には、児相と子ども家庭支援センターのワンストップ受理体制の整備や学校との連携強化など、それぞれに特色があります。川松さんは「区が有する子育て支援機能と児相による子どもの保護や法的対応、専門的ソーシャルワークを重ね合わせた相談対応が可能となるだろう」と期待を話します。一方、全国の児相が対応した虐待相談のうち、施設入所等に至る事例は2・6%であり、残りの約97%は在宅支援であるといいます(※2)。その状況もふまえ、「児相はあくまで地域の子どもを地域で育てるシステムの一つ。要保護児童対策地域協議会(以下、要対協)がネットワークとして成熟していなければ十分な支援体制は構築できない」と、地域の支援基盤の重要性を語ります。

 

のりしろを重ね合わせる支援

川松さんは虐待相談で関わる家族は、【図】のようにさまざまな状況が重なっていることが多いといいます。そのため「保護者の状況や家庭の生活そのものが安定するためのサポートを地域で行い、その上に子どもへの心理的なケアや保護者が適切な養育スキルを身につけ、親子関係を改善していくための支援を積み重ねる必要がある」と話します。ただし、それには時間がかかるため「問題が大きくなる前に発見し、早期に支援につなげることが最も大切」と強調します。

 

また、川松さんは、子育て困難の背景として社会的な孤立があることを指摘します。身近に頼れる人がいない家庭にとって、地域の社会資源は大きな役割を果たします。「間口が広く、隙間のニーズにも柔軟に対応できる民間団体があると、一時保護のような大きな事態になる前に支援する手立てが増える」と話します。

 

しかし、支援に拒否的、消極的な家庭も存在します。川松さんは「親自身の成育歴の不利やSOSを出して助けられた体験の乏しさが背景にあることも少なくない」と話し、「直截的な助言ではなく、まずは受けとめて状況の理解から始めることが必要。『人に頼って良い』ことを保護者に伝え、地域で家族機能を補完していけると良い」と、支援の姿勢を話します。さらに「信頼できる大人との出会いや情緒的なサポートは、子どもの健全な成長にとっても欠かせないものであり、将来における虐待の連鎖を止める要因ともなる」と、地域の大人全体で見守る重要性を語ります。

 

川松さんは、複合的な困難を抱える家庭を支援するためには、一つの機関では限界があり、地域の関係機関がチームとして動くことが不可欠といいます。「支援者が協働するためのネットワークである要対協は、関係機関や支援者が『自分たちはこの家庭に何ができるか』を考えていく場。つながりづらい家庭は、すでにつながりのある機関が一緒に窓口に行くなど、『のりしろ』を重ね合わせるように協働していくことが大切ではないか」と投げかけます。

 

【図】フォーラム資料から抜粋

 

(※1)東京都「東京都児童相談所のしおり2021年版」区児相(世田谷区、江戸川区、荒川区)は含まず。

(※2)厚生労働省「平成28年改正法からの動向」第27回社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会資料

取材先
名称
(NPO)めぐろ子ども支援ネットワーク
概要
(NPO)めぐろ子ども支援ネットワーク
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