(NPO)アデイアベバ・エチオピア協会
言葉が違うとしてもみんな同じ地域で暮らす住民
掲載日:2022年5月11日
2022年5月号 連載

 理事 アベベ・サレシラシェ・アマレさん

 

NPO法人アデイアベバ・エチオピア協会 (以下、協会)…東京都葛飾区で在日エチオピア人の生活や就労に関する支援事業のほか、日本とエチオピアの文化交流事業を行っている団体。2009年から活動を開始し、2010年にNPO法人化。理事長のウォールデマリアム・アベベ・ザウガさんをはじめ、エチオピア人や日本人の5名の理事がスタッフとして関わっている。

 

東京都在住のエチオピア人は、2022年1月1日時点で、185人。そのうち102人が葛飾区に住んでいます(※)。NPO法人アデイアベバ・エチオピア協会(以下、協会)で理事を務めるアベベ・サレシラシェ・アマレさんは、1996年に留学生として来日しました。

 

事業の内容

協会は、主に5つの事業を行っています。一つ目は、在日エチオピア人のネットワークづくり事業です。日本全国にいる在日エチオピア人のネットワークを形成し、災害時の避難場所や、仕事の情報など、さまざまな情報を届けています。ほかにも、自転車のルールが改定された時には、アムハラ語に翻訳をしてFacebookで拡散しました。アベベ・サレシラシェさんは「投稿してみると『変わっていたなんて知らなかった』と反応があった」と言います。

 

二つ目は、在日エチオピア人の人権・生活・就労支援事業です。家を探したり、病院に同行して通訳をしたり、食料や生活用品に困っている人への支援をしたりしています。協会だけのサポートにとどまらず、他団体につなぐこともあります。

 

あわせて、毎週日曜日に協会の事務所で日本語支援も実施しており、5名程度が参加しています。エチオピアから来た中学生には、学校だけでは日本語支援が十分ではなかったので、協会でもサポートをしたことがあります。その子は高校の入学試験に無事合格し、春から高校生になりました。他団体とも連携しており、他区で活動をしている団体につないだ学生は、そこで日本語を学び、専門学校に進学することができました。アベベ・サレシラシェさんは「分からなかった日本語がだんだんと分かるようになって、さまざまな道にすすんでいる姿を見ると、活動をやっていて良かったと思える」と話します。

 

三つ目は、エチオピアと日本の文化・スポーツ交流事業です。新型コロナが流行してからは実施できていませんが、毎年3回、交流会を開催していました。エチオピアの正月である9月と、日本の正月の1月、そして5月に、エチオピアの料理をつくったり、ダンスやコーヒーセレモニーなどを披露したりしていました。当初はエチオピア人だけだったのが、最近は参加者の約6割が日本人で、多い時には100人ほどが参加することもありました。

 

地域のお祭りやイベントにも参加したり、大学のイベントでエチオピアの歌やショーを披露したりしたこともあります。事務所がある葛飾区四ツ木の町内会にも所属しています。地域の盆踊りに参加し、その際にはエチオピアの歌で盆踊りをしました。

 

アベベ・サレシラシェさんは「このような交流の場があることで、多くの日本人とつながっているという気持ちを持つことができている。この地域の日本人住民の皆さんは、ここに住んでいるエチオピア人のことを知ってくれているので、地域の一員として生活ができている」と、交流事業の大切さを話します。また、さまざまな団体とつながることもでき、「現在は新型コロナの影響でほとんどのイベントが中止となっているが、これからも地域住民やボランティアの方、他団体とつながり続けられたら良いと思っている」と言います。

 

四つ目は、エチオピア本国の人権・貧困層支援事業で、エチオピアの子どもたちに、鉛筆や、修理した車いすを送っています。衛生面や教育面での支援をより手厚くできるよう、計画しています。

 

五つ目は、日本とエチオピアの企業紹介事業で、今後取組みを強化していく予定です。

 

活動の中で感じること

この活動をしていて良かったと感じるのは、「日本で暮らすエチオピア人が誰にも相談できないことを、私たちを信頼して相談してくれること。もっと頑張っていこうという活動のエネルギーになっている」と、アベベ・サレシラシェさんは言います。

 

一方で、協会のスタッフは普段は別の仕事をしているため、迅速なサポートができないことがあります。アベベ・サレシラシェさんは「『どうしてすぐに助けてくれないのか』と思われることもある。常にスタッフが事務所にいるわけではないので、大変なこともあるが、できる限り仕事の休みなどを調整して対応していきたいと思っている」と、活動への思いを話します。

 

お互いに歩み寄る

協会が文化・スポーツ交流事業に取り組む一番の目的は、「日本の社会でエチオピア人が日本人と一緒に暮らしていくため」です。アベベ・サレシラシェさんは「私たちのような団体を『エチオピアコミュニティ』と表現されることもあるが、そうは思っていない。コミュニティと固定することなく、日本人住民と同じ地域社会に住んでいるという気持ちでいる」と言います。続けて「コミュニティという固定された場所だけでは、暮らしている国の言葉や文化を学ぶことができず、普段の生活でさまざまな問題が増えてしまう。実際に、私自身も葛飾区のお祭りやイベントに参加して、多くのことを学んだ」と話します。

 

外国人が家を借りる時、「外国人」という理由で断られることがまだあるといいます。アベベ・サレシラシェさんは「契約についてや、入居後に守るべきルールなどをそもそも理解できないのではなく、言葉のせいで分からないだけかもしれない。気を付けてほしいことについてのブックレットを英語や多言語で作成するなど、少しの工夫と労力で解決できることもあると思う」と指摘します。続けて「そのようなブックレットがすでにあるとしたら、実際に外国人と接する現場で活用してもらえるようになってほしい」と言います。

 

また、「日本語支援を行っている団体はたくさんあるが、難民申請中の人などを対象にした支援は少ないように感じている。申請中の彼らは仕事に就けず、空いている時間が多い。そのような彼らに対して日本語支援をすることができれば、申請が通った後の生活がよりスムーズになるのではないか」と、アベベ・サレシラシェさんは言います。

 

「お互いに理解しようとする」「一緒に暮らしていく」には言葉の問題はつきものです。しかし、アベベ・サレシラシェさんは「『言葉の壁』と言われがちだが、私は『言葉のカーテン』だと思っている。壁ではないので、オープンにすることができる。言葉がすべて分からなくても、それぞれの国の料理や文化、スポーツを通じて交流し続けることで、分かり合えるようになる。そのような舞台をつくれるよう、これからも活動を続けていきたい」と、今後の意気込みを話します。

 

 

 交流会で出したエチオピアの伝統料理

 

  地域のお祭りに参加した時の様子

 

 

 

 

                                                                           

取材先
名称
(NPO)アデイアベバ・エチオピア協会
概要
(NPO)アデイアベバ・エチオピア協会
https://adeyabebaethiopia.webs.com/?msclkid=f47d1aa4d0cb11ec9ed44db36c70e3bc
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