(社福)八王子市社会福祉協議会
八王子市社協における重層的支援体制整備事業の取組み―包括的相談支援を担う各拠点CSWを増員するとともに、 社協本体の支えあい推進課に多機関協働担当CSWを専従配置 ―
掲載日:2022年5月19日

Ⅲ 重層的支援体制整備事業の実施状況

 

(1)補助事業から委託事業に変化

令和3年度に重層的支援体制整備事業が始まったことによる変化の一つは、地域福祉推進拠点が令和2年度までは「補助事業」であったのが、「委託事業」に変わった点です。拠点に制度の裏付けができ、今後は市として設置していくことが期待されます。また、市の委託事業であることによって、他の相談支援機関との連携がしやすくなりました。

 

八王子市の場合は、委託契約の仕様書もマニュアルで整理した事業内容までが記載されており、委託事業になったことで細かく制約されることはありませんでした。実績報告も現在のところ、国の様式に基づく報告のみでそれ以上に細かい報告は求められていません。従来からの取組みの流れを尊重した委託の内容となっています。

また、事業の実施に伴い、行政の各所管課や関係機関、市民に同事業を実施する社協の認知度が上がりました。

 

(2)多機関協働事業は、まずは本人同意がまだない「支援会議」によるケースから

相談・支援機関の多くは、すでにこれまではどこにもつなげられていないケースを何らか有しています。ケアマネジャーもそういったケースを抱えているはずです。事業の開始にあたり、関係機関に事業の概要を説明しましたが、まずは様子見で、いきなり多くのケースが殺到することはありませんでした。

 

令和3年9月現在の半年間で、多機関協働事業で取り扱ったケースは6ケースです。そのうちの2ケースで守秘義務のかかる「支援会議」として開かれました。ひきこもりの状態にある方への支援、高齢福祉と障害福祉にまたがるケースです。他の4ケースは、各支援機関と個別に調整を実施しています。6ケースの内訳は、拠点CSWから寄せられたケースが4件、地域包括支援センターから寄せられたケースが2件で、いずれも本人同意が得られない段階のケースです。ケースの傾向としては、本人の家族や支援者からの相談が多く、ゴミの問題から訪問すると世帯全員にそれぞれの課題があったケースなどとなっています。出席した関係機関はそれぞれのケースで10名程度。連携した機関は地域包括支援センター、自立相談支援機関、民生児童委員、障害福祉施設・事業所、障害福祉課、保健所、病院、若者サポートセンター、子ども家庭支援センター、ゴミ減量課などとなっています。

 

社協としても、これまでは個人情報の取り扱いが可能な会議体を開く方法がありませんでしたが、市が主催する支援会議を活用することで、必要な情報を把握することができるようになりました。支援会議があることで、支援を拒否している要支援者へのアウトリーチを実施する前に、関係機関から必要となる情報を得ておくことができようになります。また、関係形成後の支援方針をあらかじめ関係機関と確認しておけるメリットもあります。

 

今後、各機関にとって、自らが実施する事業の対象外の課題を含む困難ケースを抱え込まずに調整を依頼することができるようになってくると考えられます。また、各支援機関が包括的に相談を受けとめる意識を高めることで、要支援者の早期発見につながることが期待できます。

 

(3)アウトリーチのノウハウを高め、ソーシャルワークを地道に展開していく

相談を受け付けた各機関がそれぞれの専門性に依ったアセスメントでは見えてこなかったアプローチが多機関協働の視点では出てくることもあると考えられます。まずは、これまでは各機関で支援が前にすすまなかったケースを支援会議に出すことで、多機関協働の必要性が少しずつ実感されることが期待されます。一方で、CSWのスキルとして、「課題を認識していない」「支援を必要としない(=支援拒否)」要支援者に対するアウトリーチのノウハウを高めていく必要があります。また、早期発見や対応のためには、潜在的な要支援者の新規掘り起こしも必要になってくると考えられます。

 

現在、CSW定例会を月に2回開催して情報共有に努めるとともに、外部研修に参加してもらうなど人材育成にも力を入れています。大学教授に研修アドバイザーとなってもらい、CSWの1年間の取組みの個別面談もお願いしていますが、さらなるスキルの向上が必要です。やはり、ソーシャルワークを地道に展開していくスキルが最も重要と思われます。

また、市内には分野ごとの福祉施設・事業所のネットワークができあがっていますが、分野を超えたネットワークを拠点ごとのエリアに作っていくことも今後の課題の一つです。

 

(4)参加支援の場と住民理解で生きづらさを許容できる地域づくりに向けて

重層的支援体制整備事業に取り組み始めることと合わせて生活支援コーディネーターを社協から高齢者あんしん相談センターへと移しましたが、今後、社協のCSWとしてどのような地域づくりを展開していくかが問われます。高齢者や子育て世帯に限らない、特に学齢期から65歳未満の層における居場所が十分にありません。例えば、農福連携を視野にした世代・対象を限定しない居場所づくりもすすめ、参加支援のメニューをオーダーメイドで作り上げていく取組みがめざしたい地域づくりになります。

 

生きづらさを許容できる地域づくりには、やはり住民理解を高めていくことが必要です。地域共生社会の主体である住民とともに、これまでの地域福祉推進拠点における取組みが重層的支援体制整備事業を通じて発展していくことが期待されます。

 

【この記事に関するお問い合わせ】

東京都社会福祉協議会
地域福祉部/地域福祉担当
TEL. 03-3268-7186

 

 

 

 

 

 

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名称
(社福)八王子市社会福祉協議会
概要
(社福)八王子市社会福祉協議会
https://www.8-shakyo.or.jp/
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