NPO法人すみだ多文化共生交流会
お互いを知り、助け合えるコミュニティづくりをめざして
掲載日:2022年7月21日
2022年7月号 連載

事務局長の刈谷仁路志さん

事務局長の刈谷仁路志さん

 

住民の声をきっかけに団体を設立

墨田区の人口は、2022年4月1日現在、約27万7000人。そのうちの4.3%にあたる1万2000人弱が外国籍住民です。中国や韓国、フィリピンを中心に、出身国は90か国以上にわたるといいます。

 

すみだ多文化共生交流会(SMC)は、地域活動や文化交流を通じて、国籍や年齢、性別などを超えてお互いが学び合い、助け合える地域コミュニティづくりをめざして、20年8月に任意団体として発足しました。墨田区では、以前から日本語教室は開かれていましたが、当時は多文化交流活動や、そのネットワーク構築に取り組む組織はなかったそうです。

 

SMC事務局長の刈谷仁路志さんは、18年から墨田区の街や人の魅力を発信するタウン誌「すみだノート」の発行に携わっています。刈谷さんは「取材を通して区内のさまざまな人とつながっていく中で、外国人の方から『多文化交流する場がほしい』という声があった。自分は門外漢だったが、タウン誌の作成で培った人脈を活かして、地域活動をしている方や日本語教室を開催している方などに声をかけたり、話を聞いたりしながら、団体づくりに取り組み始めた」とSMC設立の経緯を説明します。そして「話を聞く中で、かつて多文化交流に取り組んでいた団体があったことを知ったが、その当時関わっていた方から『以前の活動のやり方を踏襲する必要はない』というアドバイスを受け、動きやすくなった」と振り返ります。22年3月に法人化した現在は、地域団体のほか、教育・福祉関係者、弁護士、行政書士、区内在勤の外国出身者など、約20名のメンバーで運営しています。

 

発足後は、活動が本格化する前に新型コロナの感染拡大の影響を受け、思うように活動できない時期が長く続きました。全体で集まることもなかなかできませんでしたが、21年度には区の事業助成金を活用し、外国籍住民をはじめとする区民や地域活動をしている方などが気軽に集まれる「多文化交流カフェ」のほか、墨田区在住の外国人を対象とする「暮らしのアンケート」や「暮らしの動画」の作成、SNSの強化等、実態把握や情報発信に取り組むなど、少しずつ活動を広げています。

 

多文化交流カフェで地域をつなぐ

多文化交流カフェは、さまざまな形で開催しています。参加者が自由に集まるサロン形式や、全国通訳案内士による浅草~墨田のまちあるきツアー、イベントなどへの出張相談、あるいは全体交流会などです。

 

21年9月には、墨田区東部の立花地区・文化地区を中心として、高齢者や子育て世帯、外国人などの孤立化防止・見守り強化活動を行う「One SUMIDA Project」が主催するイベントで、フィリピン出身の理事と一緒に「多文化暮らしの相談所」という相談ブースを出展しました。同プロジェクトは、社会福祉協議会や高齢者支援総合センター(地域包括支援センター)、児童館、大学、子育て支援団体など地域に関わる有志による取組みで、SMCも立ち上げ時から関わっています。

 

こうしたつながりから具体的な相談支援につながった事例もあります。ある時、児童館の館長から「日本語が話せない女性が生活に困っているようだ」という相談がありました。女性はフィリピン出身のシングルマザーで、コロナ禍で収入が減り、生活が困窮していたそうです。本人は日本語で状況を説明できないため、SMCの同郷の理事が女性の話を聞き、社協や区役所に同行するなどして福祉サービスの利用につながりました。

刈谷さんは、地域には相談を必要としながらも孤立している外国人がいるのではないかと見ています。同郷の人たちで集住している場合はそのコミュニティで助け合えることもできますが、そうでない場合やコミュニティが小さい場合は相談する相手がいなかったり、何をどこに相談すれば良いか分からないといったことが考えられます。当然、言葉の問題もあります。

 

SMCでは今後、多文化交流カフェをさらに身近な場所で開催し、気軽にコミュニケーションを取りながら、ちょっとした困りごとを話せる「街角相談室」といった形にしていくことも考えています。刈谷さんは「専門的な相談を受けて、直接解決するようなことはできないが、当事者を適切な相談窓口につなぐパイプ役のようなことができればと思っている。仕事をリタイアした人や、外国人と関わった経験を活かしたい人、また地域と関わりを持ちたい外国人もいるので、そういった方々を巻き込んでいきたい」と言います。さらに、「多文化交流に興味を持っていても、何をしたらいいのかが分からない人が多いのでは。多文化交流カフェが参加へのハードルを下げる一歩になったら」と話します。

 

近所付き合いの距離感を大切にネットワークをつくる

今後の活動について刈谷さんは、「外国人の高齢者も増えているので、多文化の中に多世代も入ってきているという認識。墨田区は人と人の距離が近いと感じている。日常的なちょっとしたあいさつや、何かあったら一声かけるといったことが、暮らしやすさにもつながってくる。そういった近所付き合いのベースになっているものを大切にしていきたい」と話します。

 

そして、「暮らしに根ざした相談などの部分と、イベントによる多文化交流や魅力発信などの楽しい部分のバランスを取って活動していきたい。それを通じて、区内のさまざまな活動に横串を通していきたい」と展望を語ります。

多文化交流下町1dayツアーの様子

多文化交流下町1dayツアーの様子

「暮らしの動画」では、出身地の料理なども紹介

「暮らしの動画」では、出身地の料理なども紹介

 

多文化交流カフェのチラシ

多文化交流カフェのチラシ

多文化交流カフェ全体会の様子 多文化交流カフェ全体会の様子
2021年9月に実施した多文化交流カフェ全体会の様子。活動紹介や情報交換などを行った

 

大学生との交流 防災館で
大学生との交流や防災の取組みへの参加など、さまざまな機会を活かして活動をすすめている

 

取材先
名称
NPO法人すみだ多文化共生交流会
概要
NPO法人すみだ多文化共生交流会
https://www.smc-npo.jp/
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