NPO法人監獄人権センター
元受刑者の言葉に耳を傾ける「刑務所ラジオ」のパーソナリティとして
掲載日:2022年8月17日
2022年8月号 くらし今ひと

塩田祐子さん

あらまし

  • FM87・4MHz「ラジオフチューズ」で、2022年4月から6回にわたって放送されたラジオ番組「刑務所ラジオ」のメイン・パーソナリティー塩田祐子さんにお話を伺いました。

 

10年近く会社勤めをしていました。もともとテレビやラジオが好きで、番組づくりに興味があったので、放送作家になる勉強をするために上京しました。専門学校に入学し、習作で放送台本を書くために情報収集していたとき、東京・葛飾区にある東京拘置所で死刑の執行をやっている事を知り、驚きました。大都市東京にそのような施設があることを知らなかったのです。

 

監獄人権センターでの活動

死刑制度の情報収集から始まり、拘置所や刑務所のことを調べているうちに監獄人権センターと出会いました。監獄人権センターは、刑務所、拘置所内での被拘禁者の人権問題に取り組んでいる団体です。私はこの団体の活動に、2009年からボランティアとして、14年からは職員として関わっています。

 

監獄人権センターで新しいプロジェクトを立ち上げる事になった時、私には一つアイデアがありました。それは、札幌市内のコミュニティFMが、札幌刑務所に服役する受刑者からの手紙と曲のリクエストで構成した刑務所内向けのラジオ番組をつくっていて、無料アプリ(リスラジ)を使えば獄外でも全国から無料で聴けることを知ってから、温めていたアイデアです。

 

支援団体でありがちなのが、イベントや報告会では支援者や専門家が前面に出て、当事者の人たちは「支援を受けた人」の一例として短いコメントを話すだけ、というスタイルです。

 

当事者の思いを、その人自身の言葉で聞きたい、という思いが常にありました。しかし、それと同時に、私達の活動は当事者(元受刑者)が顔や名前を出して発言する事が難しいという問題も抱えていました。

 

当事者の声を届ける「刑務所ラジオ」

ラジオは顔出しする必要がないので、当事者が安心して、正直な気持ちを話すことが出来るのではないかと考えました。刑務所を出所した人や受刑者の家族がマイクの前に座り、彼らの生の声を真ん中に置いたラジオ番組をつくってみたいと考えていました。そのことを提案して、新しいプロジェクトで「刑務所ラジオ」というラジオ番組をスタートさせることが決まりました。

 

22年4月、府中刑務所がある府中市のコミュニティ放送局「ラジオフチューズ」(東京府中FM)で、6月までの3か月間、第2・4月曜日に約30分間の番組がスタートしました。受刑者の社会復帰や支援のあり方を考える30分です。

 

出演する方たちは、マイクの前で話す訓練は受けていません。ですから、話し方も語彙も滑舌も間の取り方もその人独特のものです。それでも、番組ではその方の話を番組の中心において、合間に支援者の方たちやさまざまなゲストの方たちとやり取りをする構成にしています。司会進行は私が務めました。

 

社会復帰後の生活の不安、家族や知人・支援者との関係、仕事のこと、さまざまな生きづらさが生の声で伝わります。リスナーの皆さんには元受刑者に対する理解の促進や、共に暮らす街づくりに役立ってほしいと願って放送していました。

 

出所後の社会復帰を困難にしている要因

監獄人権センターの活動を通して、出所後の生活を再構築することの困難さを実感しています。出所後に戻る家がない人が大勢います。彼らは生活のすべてをつくり直さなくてはなりません。生活困窮者や障害がある人のための支援制度はいくつもありますが、その支援を受けるためには住所が必要です。出所後に戻る家がない人が、住居を決めることには多くの困難が伴います。住所がなかなか決まらないことで、不安になり、精神的に不安定になっていくこともあります。

 

こういった方たちも「住宅確保要配慮者」です。府中市をはじめ、各地域の居住支援協議会による住居確保のための支援活動に期待しています。

 

「刑務所ラジオ」は現在再放送中です。
7月~12月まで、毎月第2月曜日の夜10時から、「ラジオフチューズ」(東京府中FM)FM87.4MHzで放送中。
無料のコミュニティFMアプリ「リスラジ」でパソコン・スマートフォン・タブレットから、全国どこからでも聴くことができます。
取材先
名称
NPO法人監獄人権センター
概要
NPO法人監獄人権センター
https://prisonersrights.org/
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