(社福)品川区社会福祉協議会品川ボランティアセンター、認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン
個人でも団体でも「ちょっとした会話ができる」リアルな関係づくりが大切 「防災まちあるき」(品川区)の取組み
掲載日:2022年10月26日
2022年10月号 連載

 

(写真右)品川ボランティアセンター 室長 岡田竜一さん
(写真左)ピースウィンズ・ジャパン 国内事業部次長 橋本笙子さん

 

あらまし

  • 今号では「つながりをつくる」という視点から、9月3日に東京都総合防災訓練の一環として品川区で行われた防災まちあるきの取組みを伝えます。

 

防災まちあるき実施の背景

東京ボランティア・市民活動センターでは、平時にさまざまな団体の連携・協働のネットワークづくりをすすめる「東京都災害ボランティアセンターアクションプラン推進会議」(※1)(以下、アクションプラン推進会議)を2014年に設置し、多様な取組みを行っています。東京都総合防災訓練にあわせ、17年からはプログラムの一つとして開催地域で防災まちあるきを企画、実施しています。

 

今年は都の訓練実施地域が品川区となったことから、区市町村社協の城南ブロック(品川区、目黒区、渋谷区、世田谷区、大田区)内の社協・ボランティアセンターやNPO、NGO、市民団体等約15の団体とアクションプラン推進会議が共同でプロジェクトチームを結成し、実施しました。

 

訓練開催区の品川区社会福祉協議会品川ボランティアセンターの岡田竜一さんとプロジェクトチームの一員である国内外で災害支援を行っている認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(以下、PWJ)の橋本笙子さんにお話を伺いました。

 

舞台となった品川区の概要

品川区の人口は約40万人です。区内には昔ながらの住宅密集地からオフィスビルや高層マンションが立ち並ぶ地域まで、多様です。災害時には区内を走る川を使って、船で物資搬送することも想定されています。

 

東京で大震災(震度6弱以上)が発生した場合、環状七号線の内側方向へ向かう車両は人命救助等のための車両を除き通行禁止となります。その内側にある品川区は、支援の手が届くのが遅くなることが予想されています。そのため品川ボランティアセンターでは、災害支援団体を講師として招き、年に1回災害ボランティア講座を開催するなど、地域での助け合いの意識を醸成しています。

 

防災まちあるきの概要と工夫

今回の防災まちあるきは、武蔵小山駅周辺で行われました。指定避難所や神社、福祉避難所となる特別養護老人ホームなどを通常15~20分のところを90分かけてまわるコースです。北コースと南コースを設定し、参加者は各コース10人ずつに分かれて参加しました。コロナ禍でもあるため、防災まちあるきに参加する人数を絞りました。代わりにZoomを活用し、スタジオでプロジェクトメンバーによる被害想定や防災•減災情報の紹介と防災まちあるきの様子の中継を行いました。当日は運営スタッフを含め、全体で76人の参加がありました。

 

防災まちあるきの参加者は、品川区の住民をはじめ、ベビーカーを押して参加した親子、聴覚障害者、外国人など多様な方でした。「プロジェクトチームに参加する団体と日頃つながりがある城南地域の住民や災害時に要配慮者となり得る人を中心に声をかけた」と岡田さんは話します。

 

当日、スタッフはコースをまわる中で、参加者に地域の強みを紹介するようにしました。「課題ばかり見つかると嫌な気持ちになる。せっかくマンホールトイレや炊き出しができるベンチなどがあるのに、地域住民が知らなければ宝の持ち腐れとなってしまう。新たな気づきが得られるようにした」と橋本さんは話します。実際、参加者からは「こんなところに消火栓があったんだ」など、新しい発見や気づきの声が多く聞かれました。

 

参加団体のつながりづくり

これまで城南ブロック内のボランティアセンターでは、年2回会議を行っていました。しかし、情報交換のみで合同イベントの企画等を行うまでには至っていませんでした。

 

岡田さんは「今回、東京都総合防災訓練が品川区で行われ、アクションプラン推進会議からも防災まちあるきの提案があり、『顔の見える関係づくり』を目的に実施した」と話します。橋本さんは「PWJは渋谷区に東京事務所がありながら首都圏の地域とのつながりがこれまで薄かった。現在、組織として地域防災に力を入れており、今回参加した」と経緯を話します。

 

今回の防災まちあるきの企画の打ち合わせを通してはもちろん、毎月の打ち合わせの会場を持ち回りにする等、参加団体が協力し合いました。その結果、互いの強みや人となりが見えてきました。「ボランティアセンター以外の社協職員に参加してもらったことで、社協内部で発災時の連携の意識づけができた」、「PWJを関係団体に知ってもらうことができた」といった効果もありました。

 

一方で、つながりづくりを難しくしている状況もあります。例えば、コロナ禍でオンラインを活用せざるを得ない状況や、プライバシーや個人情報保護を重視する点です。これに対し、橋本さんは「例えば、平時から防災まちあるきを行うことで『この団体はこういう強みがある』ことが分かる。リアルにコミュニケーションを取ることで本当の意味での関係づくりができる。防災のためだけではない関係づくりが大切」と言います。

 

防災まちあるきを行うまで品川ボランティアセンターとPWJは接点がありませんでした。しかし、今回顔の見える関係になったことで、防災ボランティア講座を合同で行う企画が新たに立ち上がりました。

 

また、参加できなかった青年会議所から防災まちあるきの別途開催を希望する声があり、区内の別地区での実施も検討しています。岡田さんは「ボランティアセンターや災害ごみ等の対応が隣接する区で異なる『区境』の問題も予想される。それをなくすためにも区内だけでなく、区をまたいだ連携も行っていきたい」と展望を語ります。

 

 

オンライン配信のスタジオの様子

 

防災まちあるきの様子

 

取材先
名称
(社福)品川区社会福祉協議会品川ボランティアセンター、認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン
概要
(社福)品川区社会福祉協議会品川ボランティアセンター
https://shinashakyo.jp/volunteer/index.html
認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン
https://peace-winds.org/


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