東京都世田谷区/平成29年3月現在
社会福祉施設とともに取組む要配慮者支援
世田谷区では、協定を結んでいる施設が円滑に福祉避難所を開設・運営できるよう、平常時から検討会などを通して意見交換や訓練の実施などを行っています。また、独自の福祉避難所開設・運営のためのマニュアルを作成・配布し、協定先の各施設のマニュアル整備を支援するとともに、備蓄品や通信手段の確保にも取組んでいます。
災害時には、社会福祉施設にまず通常業務への復帰を優先的にすすめてもらい、その後福祉避難所として要配慮者の受入れをしてもらう流れを想定しています。福祉避難所協定施設へは「福祉避難所(高齢者施設/障害者施設)開設・運営手順(標準版)」を配布しています。
(1)高齢者福祉事業者との取組み
高齢者福祉施設では、配布されたマニュアルを参照し、各施設の実情に合わせて、現在7~8割の高齢者福祉施設がBCPを作成しています。
福祉避難所に指定されている高齢者福祉施設には、デジタルMCA無線を設置し、毎月訓練を行っているほか、アルファ米150食を配布しています。また、ライフラインが使用できない場合、近くの総合支所まで情報を持ち寄ることとしています。
(2)障害者福祉事業者との取組み
区と障害者福祉事業者では、「福祉避難所開設・運営手順」を毎年改訂し、図上訓練、講演会の実施などに取組んでいます。
障害福祉担当部障害者地域生活課の林隆則さんは、「世田谷区の福祉避難所となる障害者福祉施設は通所系の施設が多いことが特徴で、各施設の利用者数は増加傾向にある。そのため、3つの特別支援学校を含め、障害者福祉施設では日中の利用者支援だけでも精一杯で、災害時の要配慮者受入れに不安を抱える施設が少なくない」と話します。
また、現在BCPを作成している障害者福祉事業所は3割程度と、高齢者福祉施設と比較すると少なくなっています。そこで区では、職員一人ひとりの意識を高めるために施設における災害発生時の初動対応を含めたマニュアルを作成し、全体的な意識啓発をはかっています。
平成26年から27年にかけては、障害種別ごとの検討会を開催し、初動の動きからBCP作成に至るまでの議論を交わしました。
検討会の中では、通所施設が多い区の特徴から、「発災時間帯によっては職員参集が困難」といった課題があがっています。また、障害特性に合わせて、さまざまな視点から考える必要があること、当事者の方が慣れた場所や知っているところに避難することが望ましいが、区内は広く、地区によって施設の数や場所にばらつきがあることから、目的別に設置された福祉避難所をどこまで有効に使うことができるのか、移送手段や移送にかかわる人材をどのように確保するかが課題となっています。
(3)事業者とともに行う訓練
区と福祉避難所(高齢者施設)協定締結施設が共同で行った図上訓練、実動訓練では、「避難所開設の前に地域の方が施設に避難してきてしまったら…」など、具体的な場面を想定して取組みました。高齢福祉部高齢福祉課の大野和啓さんは「訓練を通して、施設の職員は非常に具体的な応対や、実際に遭遇したときに対処に困るような場面まで想定していることがわかり、日々利用者の方と直接接している中、危機感も強いと感じた」と話します。
この訓練の様子はDVDにまとめ、各施設に持ち帰って職員の意識向上のために利用してもらっています。
【災害に備えた要配慮者支援に関する訓練の例】
高齢者施設での実動訓練の様子(提供 世田谷区)
障害者施設を対象とした図上演習の様子(提供 世田谷区)
http://www.city.setagaya.lg.jp/