左から、中野区社会福祉協議会 地域活動推進課長 黒木俊一郎さん、
事務局次長 秋元健策さん、事務局長 上村晃一さん、
経営管理課長 小山奈美さん、あんしん生活支援課長 松本洋子さん
あらまし
- 中野区は令和4年度から重層的支援体制整備事業を実施しています。本事業の5つの事業のうち、中野区社協では、参加支援事業の「ひきこもり支援事業」と地域づくりに向けた「区民による公益的な活動(地域の居場所提供型)の運営支援および立ち上げ支援事業」の2事業を受託しています。
- 中野区社協は、平成16年から社協全体で地域担当制をとってきました。区内15地域をそれぞれ担当する職員が、地域住民や関係機関と連携して、地域の課題解決に取り組んでいます。地域担当として職員が地域で知られるようになり、社協の名前も知ってもらえるようになりました。そうした中で、社協に個別相談が寄せられるようになり、平成27年から「福祉何でも相談」を実施しています。
- 重層的支援体制整備事業としては、一部の事業のみを受託している中野区社協ですが、区に配置されているアウトリーチチームと連携して、これまで地域担当と「福祉何でも相談」を実施することで培ってきた地域との関係を活かし、複合化・複雑化した課題の解決に取り組んでいます。また、中野区内社会福祉法人等連絡会との協働事業も実施し、本事業の実施に必要な専門職とのつながりづくりにも力を入れています。
- これまでの実施に向けた経過や取組みの状況について、中野区福祉協議会事務局長の上村晃一さん、事務局次長の秋元健策さん、経営管理課長の小山奈美さん、あんしん生活支援課長の松本洋子さん、地域活動推進課長の黒木俊一郎さんの5人にお話をうかがいました。
- 〔ヒアリング日:令和4年7月1日〕
Ⅰ 中野区社協のこれまでの取組み
(1)地域担当制の実施
中野区社協では、平成16年から地域担当制を始めました。部署や担当業務を問わず、社協全体で15の区民活動センター圏域それぞれを担当する職員を決めて、地域に出向いて関係づくりに努めてきました。町会・自治会、民生児童委員協議会の圏域も同じ15地域です。社協内の部署を異動しても、担当地域はできるだけ変えないようにしているので、10数年同じ地域を担当している職員もいます。長く同じ地域を担当することで地域の人たちと顔なじみになり、地域から厚い信頼を得ています。地域担当のおかげで、中野区社協のことが地域で知られるようにもなりました。また、社協内の一体感も高まり、部署にかかわらず、全員が地域支援をするという意識をもって業務にあたっています。しかし、総務、生活福祉資金、権利擁護事業など、それぞれが担当している業務をこなしながら地域にも出向いているため、兼任の状態で負担は大きいです。15地域はすこやか福祉センター(保健所)単位の4つの圏域に分けられますが、その圏域ごとに地域担当職員をフォローする体制も整えてきました。これまでは、4圏域には担当課長のみの配置でしたが、今年度から、重層的支援体制整備事業受託による職員の増配置もあり、課長補佐も配置できるようになりました。
(2)福祉何でも相談
地域担当が地域に出向き、関係を築く中で、社協に個別の相談が寄せられるようになりました。地域担当は兼任の状態で地域支援を行っているため、個別の相談に対してアウトリーチしながら継続した対応をすることは難しく、個別支援を中心に行う担当が必要になりました。そこで、平成27年度から「福祉何でも相談」を地域活動推進課に設置することになりました。相談することのハードルを下げるために、窓口の名称を「福祉何でも」にしました。「福祉何でも相談」の担当者は、担当地域は持たず、地域からあがってきた様々な困りごとに個別に対応し、地域担当と連携してそれぞれ必要な支援へとつなげています。必要に応じて、アウトリーチも行います。中野区社協では、ここに専任の地域福祉コーディネーターを配置しています。区からの予算はつかなかったため、これまで、専任の職員は社協の福祉基金による独自財源で配置してきました。 さらに兼任の職員(地域活動推進課課長補佐)も配置し、現在、2名体制で相談を行っています。他にも、利用者への直接支援をする担当のあんしん生活支援課長、ほほえみサービス(有償家事援助サービス)事業の課長補佐も関わっています。
(3)中野区のアウトリーチチームとの連携
中野区は平成29年度より保健師、福祉職、事務職員などの行政職員がアウトリーチチームを構成して、15の区民活動センター圏域でアウトリーチ活動をしています。アウトリーチチームは、生活支援体制整備事業の3層コーディネーターでもあります。社協の地域担当は、区のアウトリーチチームと連携して、同行訪問、情報共有、会議への出席などを行っています。令和3年度に区の構造改革により、アウトリーチチームと社協が役割分担をする話が出たこともありましたが、それぞれの強み弱みを整理して、役割は重ねつつも強みを活かしながら、地域の課題解決に取り組んでいくことになりました。そのために、令和3年度は区と社協の定例会議を3回開催し、協力体制を築いてきました。
(4)中野区内社会福祉法人等連絡会
社協に寄せられた相談への対応に社会福祉法人の力を借りる取組みも始まっています。中野区内社会福祉法人等連絡会は、令和元年8月に立ち上がり、中野区社協が事務局を担っています。地域担当や「福祉何でも相談」の事業から見えてきた地域の課題を連絡会で共有し、社会福祉法人の力を活かして課題解決に向けた取組みを行っています。令和3年度は、コロナ禍の社協と連絡会の協働事業として、2種類のフードパントリーを実施しました。「中野つながるフードパントリー」は、民生委員や町会、自治会など地域住民を中心にして、15の区民活動センター圏域のうち5地域で実施され、社会福祉法人も荷物の運搬から就労相談まで、 様々な形で参加、協力しました。また、「相談支援型フードパントリー」も実施し、生活困窮者支援として食べ物を配るだけでなく、社会福祉法人が持つ専門性を活かし、困りごとへの相談も行いました。地域担当は、地域でフードパントリーの情報提供を行い、支援が必要な人との間をコーディネートしました。さらに「福祉何でも相談」に相談があったケースの就労体験として、社会福祉法人のお仕事情報を必要な人に情報提供し、実際にコーディネートもしています。中野区社協では、今後、就労体験の場づくりに取り組んでいく予定です。連絡会の社会福祉法人とつながることで、社協に寄せられた相談への対応の幅も広がりました。
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