(社福)中野区社会福祉協議会
全職員による地域担当の取組みと「福祉何でも相談」を活かして ひきこもり支援と地域の居場所応援窓口を実施 ―中野区社協における重層的支援体制整備事業の取組み
掲載日:2022年10月25日

(4)参加支援事業「ひきこもり支援事業」

ひきこもりの支援については、社協の「福祉何でも相談」に、これまでも家族、関係者、地域住民からの相談が多く寄せられていました。また、区でも社会的孤立をテーマにした調査を実施し、その結果からひきこもり相談窓口設置の必要性を感じているところでした。中野区地域包括ケア推進会議でも、検討部会の1つに「ひきこもり支援部会」を設け、ひきこもり支援を進めています。重層的支援体制整備事業の参加支援事業として「ひきこもり支援事業」を位置づけ、相談窓口の設置や情報発信、居場所づくり、アウトリーチを通じた伴走支援、家族会の支援、啓蒙啓発活動としての講演会の開催、ネットワークづくりなどが主な取組み内容になります。事業を受託した社協は、多機関協働事業の重層的支援会議にも参加し、プラン作成やプランに沿った支援を行うことになります。

 

社協が行ってきた「福祉何でも相談」を通じたひきこもり支援では、相談は必ずしもその窓口に直接入ってくるとは限りません。地域担当が地域でひきこもりの相談をされて何でも相談につないだり、何でも相談から地域担当を介してひきこもりの人を地域の居場所につなぐこともあります。例えば、社協が実施している「歳末たすけあい運動」の助成金配布時に、地域担当がひきこもりの相談を受けてきたこともありました。また、社協には、参加支援の居場所づくりやメニュー開発につながる様々な取組みがあります。ひきこもり支援の具体的な参加支援メニューを持っていることは社協の大きな強みです。社協のボランティアセンターでは、切手の整理をする「すたんぷクラブ」や地域のNPOの法人ホームページ更新の手伝いなど、ひきこもりの人が参加しやすい様々なメニューがあり、本人に合った活動ができるよう支援をしています。さらに、本人に適した居場所がない場合には、地域の中で本人に寄り添った居場所をつくる「ナカーノ・ナカーマの地域づくり」を行ってきました。

 

これまで、福祉何でも相談を担当する常勤職員(地域福祉コーディネーター)は、社協の独自財源で配置してきましたが、重層的支援体制整備事業の参加支援事業を受託したことで、区の委託費から人件費が出るようになりました。

 

ひきこもりの相談は、最初からその相談窓口に相談したいという家族等もいれば、「ちょっと困っている」ことを「福祉何でも相談」に相談してきて、実はひきこもりであったというケースもあります。これからは、両方の看板を掲げて相談に対応できるようになります。また、今は発見されてからの支援はできていますが、今後の課題は、相談につながらないケースへのアプローチだと考えています。

 

(5)地域づくりに向けた支援事業「区民による公益的な活動(地域の居場所提供型)の運営支援および立ち上げ支援事業」

中野区では、コロナ禍で地域活動が休止したり、停滞していることが課題になっています。そのため、重層的支援体制整備事業として、「地域の居場所を提供する公益的な活動」の現状を把握するとともに、コロナ禍で停滞した活動を再開し、または新たに始めていくための相談窓口を設置して、立ち上げ支援や運営支援を実施することになりました。中野区社協では、毎年、地域担当が約400か所の地域の居場所をヒアリングして、その内容を冊子として出すなど、地域活動の情報収集と提供を行ってきました。重層的支援体制整備事業では、社協が把握しているこれらの情報を区のアウトリーチチームと共有し、連携して地域づくりを行います。この事業に対しては、ボランティアセンターに常勤職員1名が増員となりました。社協事業の強化にもなり、社協にとってメリットは大きいと感じています。

 

 

 

 

(6)今後の展望

中野区社協で受託している重層的支援体制整備事業は5つのうち2つの事業だけですので、いかに区が直営で実施しているほかの事業と連携しながら実施していくのかが課題です。

 

中野区では、区のアウトリーチチームが中心になって地域で支援を行う体制が取られており、重層的支援体制整備事業もアウトリーチチームが多機関協働事業などの中核を担っています。しかし、受託した2事業や社協がこれまで地域で築いてきた関係性、つながりを通して、社協にもできることはたくさんあるはずです。参加支援や地域づくりは、社協の本来の力を発揮できる事業です。これまで力を入れて取り組んできた地域担当や「福祉何でも相談」による取組みや成果、地域の社会福祉法人とのつながりなどを見える化し、社協の持つ力をアピールする必要があります。

 

重層的支援体制整備事業の実施により、行政からの社協に対する認識は高まったと感じています。区のアウトリーチチームと社協は、アプローチの方法が違うだけで、目指しているところは同じです。今後、アウトリーチチームとのさらなる連携が重要になります。

 

取材先
名称
(社福)中野区社会福祉協議会
概要
(社福)中野区社会福祉協議会
https://www.nakanoshakyo.com/
タグ
関連特設ページ