(社福)江東区社会福祉協議会江東ボランティア・センター、NPO法人東京ユニバーサルデザイン・コミュニケーターズ
災害時の支援をイメージしながら地域住民が 話し合える場をつくる「連携ワークショップ」(江東区)の取組み
掲載日:2022年11月25日
2022年11月号 連載

(左)江東ボランティア・センター 成海隆博さん
(右)NPO法人東京ユニバーサルデザイン・コミュニケーターズ 諏訪正晃さん

 

あらまし

  • 今号では「課題解決」という視点から、「災害時における要配慮者支援(災害ボランティア活動)について」をテーマに行われた「連携ワークショップ」の取組みをお伝えします。

 

共につくりあげた連携ワークショップ

東京都災害ボランティアセンターアクションプラン推進会議では、大規模災害に備えた取組みとして、さまざまな団体同士の相互理解の促進や、災害時に発生する課題に対しての勉強会などを行う「連携ワークショップ」を実施しています。2021年度は、都域のプログラムだけではなく、江東ボランティア・センターと協働で「地域プログラム」を、会場とオンラインのハイブリッド形式で開催しました。

 

江東ボランティア・センターの成海隆博さんは「今回テーマにした要配慮者支援は、何かの機会に取り上げたいと以前から思っていた。地元で活動している団体と一緒にやりたいと考えた」と言います。協力を呼びかけられたNPO法人東京ユニバーサルデザイン・コミュニケーターズ(以下、TUDC)は、車椅子使用者や視覚障害者、聴覚障害者などが集まり、ユニバーサルデザインの普及・啓発や研究を行う団体です。代表理事の諏訪正晃さんは「当初は、お互いに探り探りの雰囲気だったが、ワークショップの企画段階から一緒につくり上げることができたのは貴重な経験で、面白かった」と振り返ります。

 

ワークショップに向けては、3か月ほど前から話し合いを重ね、その過程で多くの気づきがありました。諏訪さんは「我々のような身体や聴覚、視覚等の障害特性から要配慮者とされるような人でも、避難所に集まる情報のとりまとめや物資の在庫管理など、災害によって困っている『健常者』をサポートする側になれると気づくことができた。『要配慮者』とは誰のことを指すのか考えさせられた」と言います。成海さんも「災害時には、誰もが強みを持っていると改めて気づかされた。また、障害を持っている方々にもそれぞれ強みと弱みがあり、複合的な視点を持つ必要性を実感した」と話します。

 

「クロスロード」で多様な意見に触れ、受け入れる

ワークショップ当日の参加者は、江東国際交流協会や朗読の会、江東ボランティア・センターが行う災害ボランティア入門講座の受講生など、40人でした。諏訪さんをはじめ、TUDCのメンバーもファシリテーターを務め、複数のグループに分かれ、クロスロードを行いました。

 

クロスロードとは、ゲーム形式の防災教育プログラムで、カードに書かれた災害時に判断を迫られる事例について、自分がどのような対応をするか回答するものです。これを参考にして、事前に諏訪さんらが、災害時に障害者が直面する困難な状況を想定したお題をつくり、参加者が意見交換し合えるようにしました。例えば「在宅避難している視覚障害者が『炊き出しがほしい』と避難所を訪ねてきたら?」などのお題を設定しました。

 

成海さんは「クロスロードのお題は既存のものを使うこともできたが、お題から手づくりをした。それを題材に、地域の方々と同じテーブルで一緒に考えることができて良かった」と言います。諏訪さんは「障害者自身が考えたお題ではあるが、場面設定が専門的になりすぎないよう試行錯誤が必要で、お題をつくる側も非常に勉強になった」と話します。

 

今回のワークショップでは「みんなで考える」ことに重きを置きました。

 

諏訪さんは、皆で考え、障害者を解説者にしなかったワークショップの効果について「障害当事者がその場にいると、参加者は『どんな手助けをしてほしいのか』と、つい答えを本人に聞きたくなる。聞いたものを『知識』として持ち帰ることはできるが、そこで思考は完結してしまうし、持ち帰った『知識』は、災害時にお互いが必要とすることのすべてではない。参加者にとって『例えば、こんな災害が起こり、自分の近くにはきっとこんな人がいて……』と、具体的に考えてみる機会になったのではないか」と話します。成海さんも「災害時はその場にいる全員が対等であり、相手を勝手に解釈しないことが大切だと考えている。今回がその練習の場になれば良いという気持ちがあった」と、思いを語ります。

 

対話を通して、誤解なくお互いを知る

成海さんは「今回は身体や聴覚、視覚障害に焦点を当てたが、今後は知的障害や精神障害者、高齢者、外国籍住民などにワークショップの企画から参加してもらうなど、徐々に広げていきたい。皆が同じ立場で話し合いができる場づくりに努めたい」と、今後について話します。

 

諏訪さんは「平時でも災害時でも、一人ひとりが対話をし、誤解なくお互いを知ることができるようになると良い。そうして、まちづくりなどあらゆる場面においても、それぞれが納得できるものにたどり着くことが可能になるのではないかと考えている」と話します。

 

ファシリテーターを務める当日の諏訪さんの様子

 

会場で進行を行う成海さんの様子

取材先
名称
(社福)江東区社会福祉協議会江東ボランティア・センター、NPO法人東京ユニバーサルデザイン・コミュニケーターズ
概要
(社福)江東区社会福祉協議会江東ボランティア・センター
https://koto-shakyo.or.jp/volunteerc/index.html
NPO法人東京ユニバーサルデザイン・コミュニケーターズ
https://www.facebook.com/TokyoUDCom/
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