あらまし
- 知的障害や視覚障害、全身性障害など一人では外出が困難な方に対し、外出時の移動のサポートなどを行うのがガイドヘルパーです。大学在学中にガイドヘルパーを始め、現在はNPO法人風雷社中で働く定岡ありささんにお話を伺いました。
人のカラオケを聞くバイト…?
私は小さな頃からものづくりが好きで、大学時代は自転車屋でアルバイトをしていました。修理をするのは楽しかったのですが、接客は得意ではなかったです。中には待たされると怒り出すお客さんもいたので、苦痛に感じていました。
その頃、大学の友達から「この間、バイトで利用者さんとカラオケに行った」という話を聞いて、「人のカラオケを聞くアルバイト? 楽しそうでいいな~」と思ったことがガイドヘルパーに興味を持ったきっかけです。
社会福祉学科に在籍していましたが、当時は社会保障などの行政分野に関心があったため、ヘルパーのことはまったく知りませんでした。ネットで風雷社中にたどり着き、ヘルパーのアルバイトをすることになりました。卒業後はそのまま就職し、現在はヘルパーの求人や研修も担当しています。
平日は送迎、土日は外出が中心
ヘルパーを始めた当初は、一緒に歩くだけでも毎回とても緊張していました。私が通っていた学校には特別支援学級がなく、作業所なども町中になかったので、知的障害のある人と関わる機会がありませんでした。なので、一緒に過ごすこと自体が新鮮でした。
平日は小学生から60代くらいまでの方の送迎、土日は私と同年代の30歳前後の方と外出をしています。土日はお昼をはさんだ10時から15時までの利用が多く、本人の行きたいところに一緒に行きます。買い物をしたり、博物館に行ったり、公園でダラダラしたり、ずっと電車に揺られていたりなどさまざまです。利用者さんと一対一の活動なので、何かに追われることがなく、ゆったり過ごすことができて楽しいです。
世間は思っていたよりも優しい
電車内でどうしても声が出てしまう利用者さんがいます。注意されることもありますが、「楽しそうねぇ」と声をかけてくれる人もいます。高校生に急にわ―っと話しかけてしまっても、無視することなく返事をしてくれる人もいます。行きつけのファストフード店では、「いつものにする?」と聞いてくれる店員さんもいます。自分が想像していたより、世間は優しいんだなと思います。
また、言葉を発せない重度の人との関わりでは、思っていたよりも伝わるんだということが自分にとって発見でした。単語が分からなくても、「これかな? あれかな?」とこちらの意図を汲もうとしてくれるので、こういった形でコミュニケーションが取れるんだと感じました。
ヘルパーの世界にぜひ一度触れてほしい
学生時代に始めたヘルパーの仕事にはまり、あっという間に8年が経ちました。これまで障害福祉について知らなかった人にも、ぜひ一度、触れてほしい世界です。
この世界を知ると、例えば電車の中で一人でしゃべっている人を見かけた時の捉え方も変わってくると思います。「知らない」ことからくる怖さがなくなるというか、社会を見る目の解像度が上がるのではないかと思います。
そういった方が増えていけば、障害のある人の暮らしやすさも変わってくると信じています。
http://fuu-rai.org/