杉並区保健福祉部
都市部での「在宅避難」を原則とするしくみづくり
掲載日:2017年12月19日
ブックレット番号:6 事例番号:65
東京都杉並区/平成29年3月現在

要配慮者台帳・個別避難支援プランの作成

(1)たすけあいネットワークの登録者台帳の作成

たすけあいネットワークでは、登録を希望した方の「地域のたすけあいネットワーク(地域の手)登録申込書」に基づいて区が登録者台帳を作成します。

登録者台帳は、民生児童委員、警察署、消防署、消防団、震災救援所運営連絡会に配布され、6か月ごとに更新しています。平常時には、震災救援所運営連絡会での避難支援計画づくりや民生児童委員による災害時に必要な情報となる個別避難支援プランの作成等に活用されます。また、災害時には、登録者の安否確認、避難生活支援に利用されます。

民生児童委員が登録者宅を個別訪問して作成した個別避難支援プランの内容は、登録者台帳にも反映され、平常時・災害時における支援の一層の充実が図られます。

現時点での登録者は約9,400人で、うち7,000人については個別避難支援プラン策定済みです。

 

 

(2)民生児童委員・ケアマネジャー等による個別の避難支援プランの作成

登録者台帳をもとに、民生児童委員や民生児童委員から依頼を受けたケアマネジャー等が登録者を個別訪問し、災害時において必要となる情報の調査(個別避難支援プランの作成)を行います。平成27年度から、プラン作成のための個別訪問を民生児童委員だけでなく、ケアマネジャー、障害者相談支援専門員も作成できるしくみへと制度を変更しました。

杉並区保健福祉部管理課地域福祉推進担当係長の宮城敦さんは、「一昨年まで、民生児童委員が登録者宅を個別訪問し、個別避難支援プランを作成していたが、プラン作成数が伸び悩んでいた。現在は、民生児童委員に加えケアマネジャー等が個別に聞き取りを行って、作成している。そもそもこの制度は、民生児童委員の理解があって成り立っている。プラン作成開始当初は、民生児童委員の理解を得ることにかなり苦労したと聞いている」と語ってくれました。

聞き取り調査では、登録者台帳の紙面上からはうかがい知ることができない、登録者の世帯状況、日常生活の様子や身体状況、情報の伝達方法や移動の際の注意点等気づいたことなどの情報を把握し、それらを反映させてプランを作成します。作成されたプランは登録者へ配布される「救急情報キット」に入れて、登録者宅の冷蔵庫へ保管します。

「冷蔵庫としたのは、どの家庭にもあり頑丈で壊れにくいから。冷蔵庫の中から、必要な支援内容や医療等の情報が入手でき、迅速な支援と対応が行えるようになっている」と管理課地域福祉係の坂本達実さんは話します。

現在、登録者のプラン作成率は8割弱ですが、区としては100%に近づけていくよう取組んでいます。

 

左)杉並区保健福祉部管理課地域福祉推進担当係長 宮城敦さん

右)杉並区保健福祉部管理課地域福祉係 坂本達実さん

 

 

◆プラン作成対象者

○新規対象者 ○区内で転居された方 ○プラン未作成の方

○すでに作成されている方の更新(1年に1回目安)

※ 民生児童委員の訪問が難しい場合など、登録者担当のケアマネジャー、障害者相談支援専門員がいれば、作成の代行を依頼できる。また、地域包括支援センター(20か所)、障害者地域相談支援センター(3か所)に訪問の同行を依頼することもできる。

 

震災救援所の取組み

震災によって被災した住民の救援・救護を行う必要があるときは、その拠点として震災救援所(区立小・中学校等65か所)を開設します。

杉並区では、在宅避難を原則とすることで、震災救援所へ避難する対象者を「在宅での避難生活が困難な方」としています。

 

(1)震災救援所

杉並区は、「震災救援所」と「避難所」の2種類を杉並区地域防災計画で位置づけています。

「震災救援所」は、区内で震度5強以上の揺れを観測した場合、区立の全小・中学校等に開設され、情報収集、救援物資配給、避難・救援等の拠点となります。震災救援所となる区立小・中学校等は65か所あります。

「避難所」は、風水害の場所や規模により開設します。杉並区に「大雨洪水警報」が発表された場合、区内5か所に避難所を開設します。(平成29年度より2か所)

震災救援所が開設されると、運営管理本部が立ちあがります。その構成メンバーとして、区の係長が所長として1人、救援所近くに住む区職員が初動職員として4人、各救援所に割り当てられた職員が所員として3人、地域の町会・自治会の会長等、学校長・副校長が参集することになっています。他に運営のボランティアとして民生児童委員、町会、PTAの方に協力を依頼します。

震災救援所内は4つの部「救護・支援部」「施設管理部」「庶務情報部」「物資配給部」が構成され、その4つの部ごとに震災救援所の活動マニュアルが整備されています。

①救護・支援部活動マニュアル

②施設管理部活動マニュアル

③庶務情報部マニュアル

④物資配給部マニュアル(炊き出し等)

これらに加え、安否確認活動を迅速かつ的確に行うため、①地域のたすけあいネットワーク登録者台帳②安否確認チェックシート③登録者の居住地をプロットした地図を整備しています。

 

(2)震災救援所運営連絡会

民生児童委員等によって個別避難支援プランが作成されると、その内容が登録者台帳に反映され、決められた配布先に提供されます。

その配布先となる「震災救援所運営連絡会(以下、連絡会)」は、町会・自治会、民生児童委員、地域関係団体、学校関係者、杉並区職員等で構成され、「庶務・情報部」「救護・支援部」「物資等配給部」「施設管理部」の4部に分かれて活動しています。

特に「救護・支援部」では登録者台帳の内容をふまえ、避難支援体制と安否確認活動等について検討し、それらをマニュアル化した「避難支援計画」を策定しています。

避難支援計画には、発災時の安否確認の手順、救助・搬送の手順等について連絡会で検討を行った結果が反映されており、発災時にはこの計画を目安として行動することになります。

連絡会では、年に1回震災救援所訓練を実施しており、地域の方を交えながら安否確認訓練や救援所への搬送訓練等を行い、作成した避難支援計画が有効なものとなるよう取組んでいます。

また、連絡会が円滑に安否確認活動を実施できるよう、登録者台帳に加え、安否確認チェックシート、登録者の居住地がプロットされた地図を震災救援所に保管しています。

登録者台帳等は登録者の生活や状況が記載された個人情報のため、台帳を取り扱う連絡会に対しては、個人情報の取扱いや情報漏えいの防止について、区と杉並区社会福祉協議会が協力して研修を行っています。

(3)第二次救援所

高齢者や障害者等の要配慮者のうち、震災救援所での生活が極めて困難な方については、震災救援所の判断で、「第二次救援所」へ移送することとなります。

「第二次救援所」は区内に7か所ある「地域区民センター」に開設することにしています。

第二次旧援助では、専門的な介護や医療行為等の支援は行われませんが、多くの部屋や個室、「誰でもトイレ」(多目的トイレ)があり、自力か、家族の支援があれば避難生活を送ることができる要配慮者に適しています。

 

(4)福祉救援所

さらに、特別な支援や介護を必要とする方のために、区内の社会福祉施設・事業所等を「福祉救援所」として19か所指定しています。(入所施設:12か所、通所施設:7か所、うち民間が14か所)

ただし、入所できる人数が限られることや、事業所の職員が施設近隣に居住していないことが多く、発災時にすぐに参集できる人材が不足することが懸念されます。

 

 

取材先
名称
杉並区保健福祉部
概要
杉並区
http://www.city.suginami.tokyo.jp
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