(社福)東京都社会福祉協議会
コロナ禍で顕在化した地域課題への対応方策
掲載日:2023年2月21日
2023年2月号 NOW

 

あらまし

  • コロナ禍で、これまで把握されていなかった新たな地域課題が顕在化しています。これらの課題は複雑化、複合化しており、解決に向けては、地域住民や地域における多様な機関、関係者の連携が不可欠です。今号では、東社協が実施した「コロナ禍で顕在化した地域課題への区市町村社協の取組み状況アンケート調査」の結果から、コロナ禍で顕在化した地域課題とその解決に向けた取組みについてお伝えします。

 

東社協では、2022年9月に、都内の区市町村社協に対して標記調査を実施し、全62社協から回答を得ました。この調査は、21年度に実施した「重層的支援体制整備事業にかかわる取組みおよびコロナ禍における地域課題に関する状況 区市町村社協アンケート」の結果より明らかになった4つの地域課題①コロナ禍の日常生活の長期にわたる変化に伴う高齢者、障害者、子どもたちへの今後の影響、②これまでは把握されていなかったが、コロナ禍で顕在化した新たな地域課題、③地域活動の担い手と今後の活動のあり方への影響、④情報格差への対応のうち、②と③の課題について、現在の具体的な状況と主な取組みを把握し、共有することを目的に実施しました。

 

コロナ禍で顕在化した地域課題への対応方策
~コロナ禍で顕在化した地域課題への区市町村

社協の取組み状況アンケート結果報告書~

 

1 これまでは把握されていなかったが、コロナ禍で顕在化した新たな地域課題

〈外国籍の居住者に関する課題〉

生活福祉資金特例貸付の申請等を通して、地域に多くの外国籍住民がいることを把握しました。外国籍住民には、在留資格によって公的支援に限界がある上に、日本語の理解や、母国にない制度や支援のしくみの理解が難しく、「サービス利用や資源の活用につながりにくい」、「地域のコミュニティとのつながりが不足している」などの課題があります。また、そのために、特に外国にルーツを持つ子どもたちの学習面、生活面の課題が浮き彫りになりました。そこで、自治会・町会とつながりをつくる取組みなどが始まり、外国にルーツを持つ子に対しては、孤立の解消も視点においた学習支援も実施しています。

 

〈生活困窮者支援や生活福祉資金特例貸付を通じて把握した課題〉

生活困窮者支援や生活福祉資金特例貸付への相談の中には、経済的困窮以外の複合的な課題を抱えているケースも多く見られます。貸付だけでは生活の立て直しが困難な人や、相談や支援に自らたどり着けない人、支援を拒否する人もいて、食支援や貸付などの対処療法的な支援だけでは、根本的な解決につながらないことがあります。学生の生活困窮のように、潜在化していて把握が難しいケースもあり、さまざまな手段での支援が必要です。例えば、「フードパントリーと相談をセットで展開する」、「食支援の申込書に困りごとを記入する」などの工夫が見られます。自立相談支援機関や、生活福祉資金の担当と地域福祉コーディネーター等(CSWを含む)の連携も必要です。

 

〈子育て家庭や子ども・若者分野の課題〉

親族等からの手助けが求めにくくなったことや外出自粛の影響による生活様式の変化により、子育て家庭の孤立感や負担感は増しています。ひとり親家庭を中心に生活困窮の世帯も多く見られます。休校やオンライン授業、多くの行事や体験の機会の喪失などにより、不登校や他者と上手く関われない子どもも増えました。特に、小学校高学年から中高生など高年齢の子どもや、若者を対象にした居場所や相談窓口が不足しています。地域では、見守りも兼ねた食支援や大学生と地域の子どもがつながる学習支援など、孤立を防ぐ取組みが広がっています。

 

〈複合的な課題を抱える家庭に関する課題〉

コロナ禍による孤立や困窮が課題をより複雑にし、さらにサロンなどの対面で課題を発見する機会が減少したことで、顕在化した時には深刻になっているケースも増えています。また、複数の課題を抱えた世帯が支援を拒否することも多く、その対応に苦慮している様子も見られました。このような課題は、単一の機関で解決することは困難であり、関係機関の連携が必要です。地域福祉コーディネーター等がつなぎ役となったり、重層的支援体制整備事業の活用により、解決に向け、取り組み始めた地域もあります。

 

2 地域活動の担い手と今後の活動のあり方への影響

〈コロナ禍で停止した地域活動の再開に関する課題〉

コロナ禍で、多くの地域活動が従来どおりの方法では実施できなくなり、いまだに停止したままの活動もあります。停止期間の長期化で活動者のモチベーションが低下し、解散したり運営ノウハウが引き継がれないという課題も出てきました。新型コロナに関しては、考え方や意識に差があるため、再開については一番慎重な意見に合わせている様子もうかがえます。担い手側に再開の気持ちがあっても、活動場所の確保が難しい場合もあります。そこで、社協では活動者同士の情報交換やアンケートを通して、活動の工夫を共有したり、新しい層を地域活動に取り込む支援を実施しています。

 

〈地域活動への若手の参加や大学、企業等との連携に関する課題〉

コロナ禍前に学生と連携していた活動については、学校側の課外活動の制限や活動そのものの中止により、これまでの取組みが引き継がれず、地域と学生のつながりの再構築が必要になっています。もともと入れ替わりのある学生の活動は、継続性に課題がありましたが、コロナ禍で活動の存続がより困難になっています。企業との連携は食支援などを通じてすすんだ面もあります。これらに対して、地域活動と大学、企業をコーディネートし、それぞれの得意分野を活かしてもらえる活動を創出したり、企業同士、学生同士をつなげたりする取組みも見られました。

 

〈小中高生等の次世代育成や福祉教育に関する課題〉

小中高生のボランティアや福祉教育の機会が減少しています。座学は再開しても体験の場がなかったり、地域と連携することなく、教員が教えるケースが増えました。また、地域のお祭りなども中止となり、世代を超えた交流の機会も減っています。次世代教育や福祉教育については、以前から期間限定のイベントや単発のものが多く、継続性のある取組みへの展開が課題でしたが、コロナ禍を機にオンラインの活用や学校教育の変化に対応したプログラムを開発する取組みが見られました。

 


これらの顕在化した地域課題に対して、社協では、地域福祉コーディネーター等による取組みを中心に対応しています。しかし、多くの課題は複雑化、複合化しており、社協だけでの解決は困難です。各自治体で整備がすすめられている重層的支援体制整備事業や社会福祉法人のネットワークによる取組みを活用するなど、多様な主体と課題を共有し、連携・協働していくことが求められています。

取材先
名称
(社福)東京都社会福祉協議会
概要
(社福)東京都社会福祉協議会
https://www.tcsw.tvac.or.jp/
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